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ジャック・イン・アストラル〜ガラクタと魔術師〜  作者: 羊倉ふと
2章

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21/41

20 決着

 部屋の中は壊滅的な状態になっていた。フュリアスの能力と同時に発生した爆風により、あらゆるものが引き裂かれ、焦げ付いた煉瓦と木箱の破片がそこら中に散らばっていた。その部屋の中だけが、まるで戦場のような有様だった。

 フュリアスたちが入ってきたのとは反対側のドアが開き、キティとルシェが部屋に入った。

 キティは室内を見回して唖然となり、眉をひそめながらルシェの方を向いた。


「何が……起きたの……?」

「粉塵爆発だよ」

「フンジン?」


 ふう、ルシェは安心したように息を吐いた。少し不安だったけど上手くいった、とでも言いたげな様子だった。


「空気と混ざり合った細かい粉末……粒子に火がついて、一気に燃え広がることで起こる爆発だよ。もちろん、闇雲にバラまくだけじゃダメで──」


 ルシェ先生がなんだかよくわからない説明を始めた。長そうだし何を言っているのかわからないので、キティは聞き流すことにした。シティの連中はやっぱり説明好きだ。

 事の顛末はこうだ。

 瓦礫の竜巻で追い詰められたフュリアスの一撃で床の下に落下した後、キティとルシェは通路へ逃げ込んだ。だが、いずれはまた追いつかれることが予想された。〈ハイブ〉で逃げていた時も、なぜか追跡されていたからだ。どうやらこちらを探知できるルーンを持っていたらしい。だから、撃退する方法を考える必要があった。

 逃げながら、この空間が小麦粉の倉庫として使われているとわかった。レインとの世間話に出てきた、


『王城時代の施設が秘密の小麦粉倉庫として使われている』


 というやつだ。

 そしてルシェが提案したものが先の『フンジンバクハツ作戦』というわけだ。キティには何ひとつ理解できなかったが、小麦粉をばらまいてフュリアスに火をつけさせれば勝てる、とのことだった。そんなことがあり得るのか? と思ったが、ルシェ曰く、


『ルーンを操ってうまく混合させる』


 とのことだった。意味不明だった。

 それにしても、ここまでの威力があるとは『フンジンバクハツ』。小麦粉を撒いたらすぐ部屋を出るように、と言われていたが、なるほど確かに一歩間違えばこちらもやられていた。


「それで、あいつらは?」

「多分あれかな?」


 ルシェが部屋の奥を指さした。瓦礫が小山のようになっている箇所がある。また飛び出してこないよな? と警戒しながら、小山を崩してみた。見覚えのある刻印装と、それの持ち主である二人組が埋もれている。

 キティは驚愕した。中にいたフュリアスとイコライザーは生きていた。瓦礫に埋もれて気を失った状態で、かすかに呼吸をしている。二人とも顔に痣や火傷があるが、流血している様子も致命傷もなさそうだ。


「はあ? 何で生きて──」

「刻印装を使ったんだ」


 ルシェが部屋の中央を見た。爆発が起きた時、フュリアスたちが立っていた辺りだ。その辺りの床は特に酷く破壊されていた。


「きっと爆発の瞬間、フュリアスが床を破壊して瓦礫を作った。それで、今度はイコライザーがワイヤーを使って瓦礫を集めて盾を作ったんだ……と思う」

「で、壁まで吹っ飛ばされたと」

「そう。衝撃はそれなりにあったはずだけど、こうして生きてる」

「そんな連携が本当に?」

「信じられないけど、実際に二人はこうして生きているから、としか言えない。特別製の刻印装を持っているし、かなり優秀な傭兵だったんじゃないかな。この二人」


 そんな二人を倒したのだ。やるじゃないか、私。キティは微笑んだ。やっと、緊張が解ける。ルシェもだいぶ落ち着いているようだ。


「それで、キティ。この二人はどうするの?」

「完全に気を失ってるけど、この状態で手にかけるのはなんか気が引けるな……」


 そういうわけでルシェと相談して、フュリアスたちは拘束することにした。ルシェが防壁系ルーンを掌握し、二人の刻印装を制御、イコライザーのワイヤーを使ってグルグル巻きに縛り上げることにした。背中合わせになって仲良く座り込んでいる状態だ。


「これで起きてもしばらくは動けないでしょ」

「キティ、こっち」


 ルシェが呼んだ。爆心地の辺りにいて、下を見ている。キティもそこを見てみると、妙な所があった。瓦礫の隙間から空気の流れを感じる。

 それを見て、キティは目を丸くして呟いた。


「まだあるのか」


 倉庫の下は空洞になっていた。

 どうやらフュリアスとイコライザーを拘束した部屋の下にはさらに空間があるようだった。また床をぶっ壊すわけにはいかないので、キティとルシェは今いる階層を探索した。そして、下に続く隠し通路を発見した。もし下に空間があることを知らなかったら見逃していただろう。

 隠し通路を下っていくと、広い空間に出た。かなりの湿気だった。明かりが無いため、真っ暗だ。倉庫の壁にあった発光系ルーンを持ってきて照らした。

 そこはトンネルだった。どこまでも続いているかのように見える。壁や床には埃や泥がへばり付いていて、まるで洞窟の中のようだったが、よく見るとその下には煉瓦が並べられていた。人工的に作られた通路、ということだ。つまり──


「地下通路だ」


 国王が作らせていたという秘密の抜け道は実在した。もし〈ハイブ〉が王城から伸びる樹の幹だとしたら、さしずめ〈地下通路〉はその根であろう。キティはそんなことを思ったが、シティのインテリっぽい気がして言うのを止めた。

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