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クラスにS級美少女がいるけど、A級美少女と仲良くなった話  作者: 砂糖流


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84話 違和感

 映画館を出て、人の邪魔にならない所で、杏菜さんが訊いてくる。


「今日って、二人で来たの?」


「うん」


 美波が答える。


 杏菜さんはそれに、当たり前かのように、「ホント二人とも仲良いねー」と返す。


 杏菜さんは純粋だから、俺たちの関係に何の違和感も抱かない。


 俺と美波を、仲の良いただのクラスメイトだと思っているのだろう。


 でも、もう一人の女の子は違う。彼女に関しては俺たちの関係性を知っている。


 だから、休日に俺たちが二人で映画を見ていたとしても、杏菜さん同様、違和感を抱かない。


 違和感を抱かない中身の内容としては全くの別物だけど。


 そんなふうに、二人を見ながら思考を巡らせていると、そのもう一人の女の子からの視線を察知する。


 唯奈さんはなぜか、二人の会話には混ざらず、こちらをじっと見つめていた。


 もしかして何か話したいことでもあるのだろうか? それとも体調が悪いとか?


「唯奈さん。どうかしたの?」


「…………」


 気になって話しかけてみるが、唯奈さんは無言のまま視線を下げる。


「大丈夫?」


「……大丈夫じゃない」


「えぇ……」


 そう言われて更に心配するが、どうしても体調が悪いようには見えなかった。


 一体何が――


「じゃあ私たちそろそろ行くね」


 考えているところで、美波と話し終わった杏菜さんが言いながら唯奈さんの手を引く。


「じゃあね。アサくん」


「う、うん。また学校で」


 結局、唯奈さんとはほとんど喋れずにお別れすることとなった。


「じゃあ、私たちも行こっか」


「うん」


 そうして俺たちは、杏菜さんたちが行った反対方向へ、歩き出した。


 この後の予定は事前に決めていた。映画後の定番場所。近くの喫茶店だ。


 喫茶店に到着して、俺はカフェオレ。美波はホットコーヒーを注文した。


 コーヒーの苦味と、ミルクの甘味で口を満たしてから、俺は考える。


 さっきの唯奈さんの反応が不可解だ。


 確かにいつも通りと言えばいつも通りなのだが、少しだけ違和感があった。


 表情? 雰囲気? それとも――


「樹、樹」


 そこで前に座っている美波の声が耳に入り込んでくる。


「えっ。ど、どうしたの?」


「……」


 聞き返すが、返事はない。


「私を差し置いて、何考えてたの?」


「えっと、それは」


 ここは正直に話すしかないようだ。前方からの圧が凄まじい。


「実はさ――」


 そうして俺は、今日感じた唯奈さんの違和感について美波に全て話した。


「ってことがあってさ」


 話終わったあとの美波の反応はというと、


「ふ〜ん。彼女とのデート中にほかの女の子のこと考えるなんていい度胸してんね」


 頬を膨らませた怒り顔だった。


 だが、美波の言う通りだ。二人っきりの時に他人のことを考えられたら、悲しくもなる。


「ごめん」


「この後、ゲーセンに付き合ってくれたら許したげる」


 逆にそれでいいのかと思うが、美波がそれでいいなら、と俺は快く了承した。


「でも確かに、私も今日の唯奈ちゃんはちょっと違和感あったかも。なんて言うか、機嫌が悪かった……?」


 美波から見ても今日の唯奈さんは平常ではなかったらしい。


「もしかして……」


 美波がボソッと呟く。


「何か分かった?」


「いや……やっぱ勘違いかも」


「そっか」


 でも、とりあえず分かってもらえたようで良かった。



 その後は、今日観た映画の話で盛り上がり、喫茶店を出てから約束していたゲームセンターでいつもの格ゲーをやり、今日も今日とて勝利で終わった。


 ◇◇◇


 美波と夕方頃に解散して、家へ帰り、お風呂に入って、ご飯を食べてからいつものゲームに勤しむ。


 今日のフレンド欄は静かで、自分以外は全員オフラインだった。


 きっと美波は疲れているのだろう。だからゲームに誘うようなことはしたくない。


 つまりは必然的に一人ということになる。


 パンパンになったインベントリを整理しながら、今日何をするかを考える。


 久しぶりに素材集めをするか、それともレベル上げをするか。


 どうしようか。悩んでいるところで、


 ――ヴー。


 机のスマホが振動する。


 その通知は、ゲーム関連のものではなく、ましてや美波からのメッセージでもなかった。


 スマホには、【唯奈】という名前と共にあるメッセージが映し出されていた。


『あそこに来てほしい』


 それは、前触れなどもなく、ただその一文だけが綴られていた。


 あそこに来てほしい……あそこ……。


 初めはどこのことを言っているのか分からなかったが、数十秒考えたら、答えはすぐに出た。


 11月の冬、唯奈さんが泣いていたあの公園だ。


 唯奈さんはきっと悩みがある時はあの公園に行くんだろう。


 それに他に思い当たる場所がない。


 だが、今の時刻は10時を過ぎている。既に外は真っ暗だ。


 果たして本当にいるんだろうか。いや、もし本当に俺のことを待っていたら――


 考えるよりも先に俺は家を後にしていた。

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