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クラスにS級美少女がいるけど、A級美少女と仲良くなった話  作者: 砂糖流


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81話 美波家 2

 三人でゲームを始めてから数十分が経った。


 俺と美波、そしてお義父さんの三人で格ゲー。それを後ろから見守るお義母さん。


 数試合で俺は気がついた。


 美波の言った通り、お義父さんの格ゲーの腕前は常軌を逸したものだった。


 そのため、俺と美波は一勝もできず手も足も出なかった。


 美波の上達が異常に早かったのはこれが原因だったらしい。


 美波のお義父さんは幾度となく見たことのない自己流のコンボを繰り出す。


 その対処法を知らない俺はまるで勝ち目がなかった。


 だが、お義父さんはそれだけの強さを持ち合わせているのに、煽る、という行動は一切見せなかった。


 これが大人の余裕というやつか。俺たちとは違って礼儀がちゃんとしている。


 そんなふうに感心しながら隣へ目をやると、悔しがる美波の姿と……真顔で力強くガッツポーズするお義父さんの姿。


 どうやら勝てて嬉しいという気持ちは少なからず存在するようだ。


 ここまでの実力だから負けたくないと思うのは至極当然の考えだろう。


「ちょっと、父さん。本気出しすぎ」


 どうやら美波の言い方的に、いつもは本気を出していないようだ。ある程度の手加減は日々しているのに、どうして今日は本気を出して、ガッツポーズまで決め込んでいるのか。


 その理由は俺がいるからだろう。


「……」


 今のところお義父さんの声はまだ一度も聞けていない。


「だって……」


 そう思っていると、弱々しいお義父さんの声が聞こえてくる。


「だって、なに?」


 その美波の圧に、お義父さんはボソボソと何かを呟く。


 だが、声量が小さすぎて何を言っているのかは分からない。


 それでも大体の検討はつく。


 きっとお義父さんは俺を――


「負けたくなかったから」


 美波の彼氏とは認めていない。


「ふ〜ん。そういうことね。ちなみに私たちもうしたから」


 だが、美波はお義父さんの不安を煽るように、含みのある言い方をする。


「したって、美波! 一体何をしたんだ!」


 今日一デカイお義父さんの声。


「教えなーい」


「教えろ! 言え! 一体何をしたんだ!」


「お父さ〜ん。そんなんしたことと言えば1つしかないでしょ〜」


 お義母さんが更に畳み掛けるように不安を煽る。


 だけどまだ俺たちはキス以上のことはしていないので、()()に該当はしないだろうけど、お義父さんは焦って更に不安になる。


 二人がお義父さんをからかい、お義父さんはそれに騙され、困惑する。


 そんな仲睦まじい三人を見て、俺は心が温かくなると同時に、羨ましいと思った。


「どうしたの? 樹」


 三人を傍から見ていると、美波から声をかけられる。


「いや、何もない。それよりも家族と仲良いんだな」


「うん。まぁ、仲が良いかって聞かれたら良い方かな」


 当たり前だ。


 俺の家で美波と共に眠ってしまって、帰りが遅くなった時も、美波のお義父さんは物凄い心配をしていた。


 それだけ美波が愛されている証拠だ。


 だからこそ、お義父さんは俺のことを認めてはくれない。まだ得体の知れない人間だから。


 お義父さんを認めさせるために今やるべきことは1つしかない。


「お義父さん……」


 三人が仲良く談笑している中、俺は覚悟を決めて口を開く。


 「お前にお義父さんと呼ばれる筋合いはない」という言葉を聞きながらも、窮することなく言葉を紡ぐ。


「もしも、格ゲーでお父様に勝てたら……俺を認めてはくれないでしょうか」


「いいだろう」


 俺の言葉にお義父さんは間髪入れずに答える。


 それを聞いている美波は困惑の表情を浮かべ、お義母さんは驚愕しながらも状況を理解する。


「勝てたらの話だけどな……というかお父様もやめなさい」


 そんなお父上の言葉と共に、1対1の真剣勝負が始まる。


 いつも愛用しているキャラクターを選択すると、3、2、1、の合図で試合が開始される。


 試合が始まった瞬間に、素早くボタンを押して、攻撃を打ち込む。


 だが、その動きは読まれており、カウンターを受けてしまう。


 その1つの動作で分かる。


 お義父さんは一切手加減せず、先程よりも本気度が伝わる。


 俺も負けじと攻撃を受け流しながら、カウンターを決めていった。


 そのまま、接戦でお互い体力を削り合っていき、数分後には勝敗が決まった。


 試合の結果は――


「どんまい。樹」


「うん」


 お義父さんの体力が4分の1ほど残って、俺の負けに終わった。


 悔しいけど負けは負けだ。


 俺は認めさせることができなかった……けど。


「お義父さん。認める認めない、関係なしにもう1戦お願いできますでしょうか」


「いいだろう」


 「後、お義父さんはやめなさい」と言いつつも、俺の対戦に付き合ってくれた。



 何度も何度も俺は負けた。それでもお義父さんは一言も文句を言わずに付き合ってくれた。


 3戦。5戦。8戦。10戦。15戦。


 そして18戦目。


 俺はようやくお義父さんから1本を勝ち取ることができた。


 試合に何度も付き合ってくれたお義父さんにお礼を言って、もう外も暗いからと、俺は帰ろうとした、のだが、


 「せっかくなら泊まっていきなさい」とお義母さんに言われ、更に美波からも「泊まれ」と、命令口調で言われたので、今日は泊まることになった。


 だが、お義父さんはなんとも言えない表情で黙りこくっていた。


 それを見て俺は申し訳なく思ったのだった。


 ちなみにどうして美波が命令口調で『泊まれ』と言ってきたのかというと、俺がお義父さんとずっとゲームをしていたから、自分との時間がなくてご不満だったかららしい。


 俺は深く反省した。

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