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クラスにS級美少女がいるけど、A級美少女と仲良くなった話  作者: 砂糖流


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66話 素っ気ない意味

 次の日の学校。


 朝、昨日と同様に俺以外の五人が教室へと入ってくる。


「おはよー! アサくん」

「よう、浅野」


「おは、樹」


「うん、おはよう」


 杏菜さん、佐藤くん、美波と挨拶を交わす。そしてその後ろには当然……


「――ってことがあってさー!」


 田島くんがいつものように唯奈さんに話しかけていた。


 唯奈さんの反応は、


「話しかけないで……」


 いつものような反応を見せた。


 そんな唯奈さんを見て俺は安堵を覚える。


 つまりは昨日の悩みは解決…………そう思い込んだのだが、


「おは……アッサー……」


 唯奈さんはそれだけ言うと、自分の席の方へ歩いていった。


 なんだろう……心なしか俺への対応が素っ気ない気がする。気のせいの可能性はあるが……。


 すると、次は田島くんが話しかけてくる。


「おい、浅野。白鳥さんどうしたんだよ」


 どうやら田島くんも唯奈さんの異変に気づいたらしい。


「今日の白鳥さん、すげぇ上機嫌じゃねぇーか!」


 そう思っていたのだが、田島くんが気づいたのは俺の考えていた方の異変ではないらしい。いい意味での異変。


「あんな白鳥さん初めて見たよ」


「へ、へぇ〜」


 唯奈さんの素っ気ない態度はどうやら俺しか気づいていないようだ。

 それとも……俺にだけ素っ気ない態度を取っているのか?


 そう考えるが、理由がこれっぽっちも思い浮かばない。


「田島くんは今日唯奈さんから何か言われた?」


「さっきは『話しかけないで』って言われたけど……朝会った時は小さい声で『おはよう』って言われたんだよ」


 まだ信じられないと言わんばかりの表情で田島くんが言う。


「それでそっから嬉しくなって何度も連絡先聞いたんだけど結局教えてもらえなかった」


「そ、そうなんだ……」


 一歩前進、一歩後退と言ったところだろうか。


 田島くんの話を聞いたところ、どうやら今日の唯奈さんは機嫌がいいらしい。


 それでもやはり、唯奈さんの俺へに対する態度の原因は分からなかった。



 結局その後も何も分からずに時間が過ぎていった。


 途中、気のせいかもと思ったのだが、俺が唯奈さんに話しかけても全て素っ気ない反応をされた。


 もしかして知らないうちに唯奈さんが嫌がることをしてしまったのだろうか。


 少し不安に思いながら、休み時間を過ごしていると、


『アッサー』

『今日の放課後時間ある?』


 噂の唯奈さんからそんなメッセージが飛んでくる。


『放課後は暇だけど』


『そっか』

『なら、放課後体育館裏に集合で』


 集合で、って……なんか勝手に予定を組まれてしまった。


 放課後、特に予定はなかったのでいいのだが……やはり不安だ。


 放課後に体育館裏なんて……一体何を言われるのだろうか。

 もしかして素っ気ない態度が関係しているのだろうか。



 その後、頭を回し、色々と思考したのだが、結局なにも分からないまま、あっという間に放課後になった。


 不安が募る中、約束を投げ捨てるわけにもいかないので、恐る恐る体育館裏へ向かうと、いつもの無表情な唯奈さんが待っていた。


「ごめん、唯奈さん。待った?」


「待ってない……多分2分ぐらい……」


「そっか」


「うん……」


「「…………」」


 少し気まずい空気が流れる。


「え、えっと、それでどうしてここに?」


「ねぇ、アッサー」


 俺の問いかけには答えず、唯奈さんが名前を呼ぶ。


「ど、どうしたの?」


 真剣な唯奈さんに俺は少し圧倒される。


 一体何を言われるのか……そんな呑気なことを考えた、次の瞬間――唯奈さんの綺麗な銀髪が揺れて、


「――好き」


 いつもより力強い声で、そんな言葉を口にした。


 一瞬、自分の耳を疑った。


 だが、唯奈さんの口からは確かに……好き――その言葉が発せられた。


「えっと、それは…………」


「うん……もちろん一人の男性として……」


 あまりにもハッキリと言うから、思わず辟易してしまう。


「そう、だったんだ……」


 正直あまり実感が湧かない。

 驚きよりも困惑の方が勝っていた。


 何せ、俺はかつて唯奈さんから嫌われていた存在。


 確かに最近は仲良くなっていたけど、ただそれだけだと思っていた。


 今まで杏菜さんにしか興味を持たない彼女だからこそ、友人との距離感が分からない。


 そう思っていたのだが……今の唯奈さんの表情を見るに本気らしい。


「唯奈さん……俺はっ――」


 俺が口を開いた瞬間、


「大丈夫。返事はいらない」


 唯奈さんが被せるように言った。


「私はアッサーが好き……でもアッサーは違う……だから返事はいらない。ただ気持ちを伝えたかっただけだから……私はアッサー――浅野樹くんが好き」


 唯奈さんは気持ちを吐き出すようにもう一度言う。


 気持ちは凄く嬉しい。

 当たり前だ。俺みたいなボッチを好きと言ってくれて嬉しくないわけがない。


 でも、それでも俺は唯奈さんの気持ちに応えることはできない。


 唯奈さんは返事はいらないと言っているが……一体俺はどっちの選択肢を取ればいいのか……こんなの初めての経験なので分かるはずがない。


「今日はそれだけ伝えたかったから……」


 それを聞いて、俺はようやく今日の唯奈さんがどうして素っ気なかったのかを理解する。


 今日の朝からずっと気持ちを伝えることを計画していたんだ。


 それがどれだけ怖いことなのか、どれだけ勇気がいることなのかは計り知れない。


 だからこそ、その気持ちに応えないと――そう思うと同時に、『返事はいらない』と言われているのに、返事するのは如何なものか……。


 俺は完全に困惑していた。


 優柔不断でそうこう考えてるうちに、


「じゃあ私はこれで……最後にもう一回……私はアッサーが好き…………じゃあね。そういうことだから……」


 唯奈さんは最後にもう一度同じ言葉を言って、早足で去っていった。


 そんな彼女の背中を眺めながら、俺は呆然とするしかなかった。

最後までお読み頂きありがとうございます。


平日・午後12時投稿。

休日・午前7時投稿。


投稿はこの時間帯になると思います。


少しでも「面白い!」と感じましたら、ブックマークと★★★★★、よろしくお願いします!

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こいつ息を吐くように2人きりになるな 彼女に連絡はどうした
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