6話 外でのゲーム
金曜日の放課後。
今日は金曜日の週終わりということで、教室の生徒達の浮かれている騒々しい声が耳に入ってくる。
放課後どこに行くか、休日何をするか等々。
確かに浮かれる気持ちは分かるが、俺の場合、平日でも休日でもやることが変わらないので、特に気分が高揚することもない。
だが、今日は二日ぶりに広瀬との予定が入っている。
なので後はいつも通り即帰宅して自室でRPGを目いっぱい――
――ヴー。
そこでスマホが震えた。
見る前から誰だかはおおよそ予想がつく。
『ねえ』
今教室でスマホをいじっている女の子。広瀬だ。
『どしたん』
『何そのいかにも、話聞こか、って連続して言ってきそうな答え方』
『話聞こか?』
『うわ』
『さすがに百年の恋も冷めるわ』
『恋が冷めたから慰めてやってるんだろうが』
『それよりなんだよ』
『えっとさ』
『実はね』
『今日なんだけど』
『焦らすな』
『はよ本題言え』
『ちっ』
『今日はゲームじゃなくて外で遊ばない?』
『えっ?』
『いや、それより今メッセージで舌打ちした?』
『投げキッスだよ♡』
『はいはい、それでどうしてまた?』
『私のキスをサラッと流すな』
それから広瀬の話を聞いてみたところ、広瀬も皆と同じく浮かれているようで外で遊びたかったとのこと。
美少女三人組で行かないのか、と疑問に思ったが、今日は俺との先約が入っていたから『浅野と行くか』という思考になったらしい。
『いや、まあ話は分かったけど』
『いつも急すぎるって』
『じゃあ行かないの?』
広瀬はきっと浮かれた気持ちを友人と共有したかったが、俺との予定が入っていたため、断るのは悪いと思って俺を誘ってくれたのだろう。
それなら俺も空気を読んで断らない、ただそれだけの話。
『行く』
ということで広瀬は一度帰る素振りを見せてから、俺と外で再会することに。
少し学校から離れた場所でしっかり対策したおかげか周りにわが校の制服は広瀬以外見当たらない。
「よっ」
「おう」
まだ四月下旬で少し肌寒い時季ということもあって、広瀬は制服の上から軽いジャージを羽織っている。
「それで一体どこへ?」
「そんなの決まってんじゃん。あそこしかないっしょ」
というわけで、何も知らされないまま目的地までついて行ったのだが――
「結局ゲームじゃん……」
目的地はまさかのゲーセンだった。
「これなら家でも外でも変わらないような」
「でも、オンラインとオフラインじゃ全くの別物じゃない?」
「いや、知らないけど」
何といってもゲーセンにMMORPGはないわけで……。
「まあ、ここじゃなんだし、とりあえず中入ろっか」
とりあえず二人で中へ入ることに。
中へ入ると、ゲーセン特有の匂いと騒然が一瞬にして感じてきた。
久しぶりに来た気がする。
いや、友達と来るのは初めてか……。
「まあ、友達とゲーセンと言えばクレーンゲームだよな……ってことでまずはあれを――」
「バカ……」
「えっ?」
「浅野バカすぎ」
「えっ、何で今、俺貶されてんの」
「ゲーセン=クレーンゲームって考えがボッチ丸出し」
「えっ? そうなの。ってかボッチ言うな」
「ああ、ごめん。つい」
「ついって……」
「でも本当のことじゃん」
「まだ言うか、てめぇ――って、それじゃあ何やるんだよ?」
「う~ん、クレーンゲームしたい」
「貴様……俺にボッチ言いたいだけだろ」
いつも通りの茶番会話をして、クレーンゲームのコーナーへと向かう。
まさか外でもこんな会話をするとは思わなかった。
「あっ、私これやりたい」
そう言って広瀬が目をつけたのは、可愛い女子高生が好きそうなぬいぐるみ……ではなくチョコ棒が沢山入ったお菓子の台だった。
「ま、まあいいんじゃない?」
「ってことで、はい――」
そう言うとなぜか広瀬にお金を差し出される。
「えっと……これは?」
「特別にやらせてあげる」
「どうもありがとう?」
「どういたしまして」
ということで、困惑状態のまま、何かを企んでいる表情をした広瀬からお金を受け取り台に入れる。
音が鳴り、機械が動き出す。
(こういうの初めてだから少し緊張するな……)
横ボタンを押して、景品とまっすぐ揃うように焦点を定める。
一瞬、隣を見ると広瀬は興味津々に見ていた。
気を取り直して、そこから前進ボタンを押して、景品と重なるように合わせると、アームが下りていく。
「お? なんか取れそうじゃない?」
俺が少しの期待を抱くと、隣にいる広瀬は人差し指を立てて、
「チッチッチッ――甘いよ浅野」
「あっ、落ちた……」
結果は一瞬持ち上がったが、アームの弱さ故にすぐさま落ちていった。
「まあ見てな」
広瀬は同じ台にお金を入れて、俺と同じようにボタンを押してアームを動かす。
アームが景品の真上まで来ると下がっていくが、少しだけズレてしまっている。
「ズレてるよ」
「黙って見てな」
「はい……」
結果は失敗……と思っていたのだが、ズレていることによりいい感じに景品がアームに挟まって、成功。
景品を取り出すと、広瀬は俺にドヤ顔で見せてくる。
そんな表情を見た瞬間どうしてさっき広瀬が企み顔をしていたのか即座に理解する。
なるほどな……コイツ俺を煽るために初め、お金を渡し、恥をかかせて、ドヤる、という策略を練ったのだろう。
「舐めた真似をしてくれるじゃないか」
「何のことー?」
くっそ、コイツ……この後絶対にギャフンと言わせてやる。
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