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クラスにS級美少女がいるけど、A級美少女と仲良くなった話  作者: 砂糖流


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5話 初めての対面

 それから二日後の学校。


 あの後、広瀬はRPGで俺が加入しているギルドへの参加を果たし、ギルドの人たちは快く広瀬を歓迎してくれた。

 いい人たちが多いな、とつくづく思い知った。


「おはよ、浅野くん」

「おはよ、伊藤くん」


 それでも、相変わらず学校内での俺は伊藤くんと朝の挨拶を交わす以外では、誰とも話すことはないボッチである。


 だが、一週間前と比べて明らかに変わったことが一つだけある。

 それは、広瀬と目が合う回数が増えたことだ。


 今の教室にはまだ広瀬の姿は見当たらないが、広瀬は俺を事あるごとに『ボッチ』とバカにしてくる節があるので、もしかすると一人でいる俺を気にかけてくれているのかもしれない。


 でも広瀬は空気を読んで、俺に話しかけてくることはない。それが今の俺たちの関係性なのだ。


 そう思っていたのだが。


 朝、廊下側の最前列の自席でスマホをいじっていると、登校してきた広瀬が通り過ぎる際、俺だけに聞こえるよう小声で、


「おはよ」


「……え」


 突然のことに困惑するが、広瀬は何事もなかったかのように、その後一切俺に目もくれず自分の席へと向かっていった。


 初めてリアルで広瀬に声をかけられた。

 一体どういうつもりなんだ?


「浅野くん、どうかしたの?」

「ん? ああ、ネットでちょっと驚くことがあってね」


 俺の様子に異変を感じた、伊藤くんに誤魔化しながら急いで広瀬にメッセージを送る。


『一体どういう心境の変化で?』


『何が?』


 嫌でも誤魔化すつもりなのか。それなら無理やりにでも聞き出すまで。


『おはよう』


『うん。おはよう』


『今日二度目の挨拶だな』


『そだね。あっ』


『白状しやがったな』

『って、よく見たらメッセージだから普通送る時に気づくだろ』


『えへ』

『バレた』


『それでどうしてあんなことを?』


『ただの挨拶だよ? 礼儀でしょ』


『いや、それは分かるけど』


『なのに浅野からの返事は「え」の一言だった』

『己、礼儀がなっとらんぞ』


『それに関してはごめん』

『急だったからびっくりして』


『うん、知ってる』

『どんな反応するのかなって思って挨拶してみた』


『してみたって……』

『というか、初めてのリアル会話がからかうためって』

『どうなんだよ?』


『別にいいでしょ』

『初めてなんてそんなもんでいい』


『そういうものですか』


『そういうもんです』


 そんな感じでやり取りを終えて、広瀬の方に目をやってみると、またしても広瀬は何食わぬ顔で友達の二人と会話していた。


 一体あいつ何者なんだよ。

 実は、空気を読んでいるのは俺だけで、広瀬は裏で何か企んでいるんじゃないのか?


 と、意味不明な疑心暗鬼に陥った俺であった。


 その後の授業中、広瀬が気になって仕方なかったが、結局放課後まで特に音沙汰はなかった。


 ◇◇◇


「えー、ユイちゃん、今日は一緒に帰れないの?」


 放課後の教室内で美少女三人組の話し声が聞こえてくる。


「うん……今日は専属の送迎が来る日だから……」


 自己紹介後に分かったことなのだが、白鳥さんは三人での会話からして相当裕福な家庭だと分かる。

 たまにこうして会話で垣間見える裕福さに教室内を驚かせている。


 更にそこに容姿も整っているおかげで、転入してまだほぼ二週間という短い期間で、一瞬にして男子達から目をつけられ【S級美少女】の称号を付けられた。


 まあ、それを本人たちは知る由も(以下略)。


 それのせいで今となっては、早乙女さん、白鳥さん、そして広瀬。

 男子達から美少女三人組と呼ばれるようになった。


 そして今日も俺はその中の一人、広瀬とゲームの約束をしている。


「美波は今日予定なんだよね?」

「うん、ごめんね」


「最近……増えてきてる……」


「うん、ちょっと外せない用事があるから」

「むぅー、分かった」


 外せない用事……まあでも最近ようやくRPGが慣れてきた頃だし、大事な用事と言えば大事なのだが。


 言うても、帰ってからすぐにやるというわけでもない。


 放課後ゆっくり帰るぐらいの時間はあると思うし、早乙女さんと一緒に帰ってあげるぐらいならいいと思うのだが。


 さすがはRPGマニアと言ったところか。

 即座に帰宅してプレイしたいということだろう。それに関しては嬉しい限りだ。


「その代わり校門前までは三人で行こ?」

「それぐらいなら大丈夫だよ」


「うん……校門前までなら……」


 さてと、俺もさっさと荷物をまとめて帰るとしよう。


 そう思いながらも自席で帰り支度をしていると、美少女三人組が談笑しながら俺の席の方へと歩いてきて目もくれずに前を通り過ぎて行ったのだが――


 広瀬が廊下を出る間際にまたしても俺だけに聞こえるよう、


「コンビニで待ってる」


 小声で囁かれた。


「美波なんか言った?」

「ん? なんも言ってないよ」

「そっか」


 これは一体どういうつもりなんだ?



 俺は何も理解できないまま、とりあえず言われた通り学校近くのコンビニへ向かうことに。


 本当に広瀬はいるのだろうか?

 そもそも会って何をするのだろうか?

 会っているところを他の生徒に見られたら?


 色々な思考を巡らせながらも気づけばコンビニ前へと到着していた。



「よっ」


 そこには、鞄を地面に置いてスマホをいじりながら駐車場の柵にもたれかかっている広瀬の姿があった。


 スカート丈が少し短いせいか、広瀬の長い美脚に目がいってしまうがすぐさまに逸らし、口を開く。


「それでどうしてこんな所に呼び出したんだよ」


「うーん、まあ、なんとなく?」


「いや、なんとなくって……」


「まあ、ちゃんとした理由を述べるのであれば、朝の挨拶でもっとリアルでも話した方がいいのかなって思った。それに休み時間、浅野が寂しそうにウチらのこと見てたから」


「いや、寂しくねーよ」


「見てたことは否定しないんだ?」


「ま、まあ……広瀬たち目立ってるし」


「それは確かに」


「そこは否定しろよ」


 ここへ来る前、まともに広瀬と対面するのは初めてというのもあって少し緊張していたが、そんな心配は不要だった。

 広瀬はリアルでも変わらず広瀬だった。


「それじゃ帰ろっか」


 鞄を手に持って背を向ける広瀬。俺はそんな広瀬を呼び止める。


「ちょっと待って」


「まだ何か?」


「俺たちが一緒に帰るのまずくない? ほら、他の生徒とかに見られたりでもしたら」


「あー確かに。それならさ、こういうのはどう?」



 それで広瀬が思いついた作戦とは――


 俺は広瀬の10メートルほど後ろを歩いて、


『どうしてこうなるんだよ!』


 いつもみたいに広瀬にメッセージを飛ばす。


『これなら他の生徒に見つかっても大丈夫でしょ?』


『確かにそうだけど』

『これならいつもと変わんないじゃん』


『変わりたいの?』


『いや』

『別に』

『これでいい』


『そう』


『でもさすがに』

『歩きスマホは危ない』


『それはそうかも』


 俺たちはリアルで関わっても結局いつもと変わらずネットでやり取りをするのだった。

最後までお読み頂きありがとうございます。


平日・午後12時投稿。

休日・午前7時投稿。


投稿はこの時間帯になると思います。


少しでも「面白い!」と感じましたら、ブックマークと★★★★★、よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
一緒に帰るのって他人の視線気になるかなぁ 自分は結構色々な女の子と帰ったりしてた ボッチ気味ではあったけど、クラス以外にクラブという外の世界があり、さしてクラスの中に友人を作らなきゃっていう意識は無か…
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