3話 出会い 2
『浅野くんだよね?』
その連絡は【みなみ】という名前からのメッセージだった。
【みなみ】と聞くと今思い浮かぶ人なんて一人しかいない。
広瀬美波。
『えっと、広瀬さん?』
『正解』
俺が返信すると即座に返信がきた。
どうやら、俺が思い浮かべているみなみで間違いないようだ。
一体どうやって追加したのだろう、と一瞬戸惑うが、多分グループLINEから追加したのだろう。
豆田先生が生徒と仲良くなりたい、ということでクラスLINEが作成されたのだ。もちろん生徒は問答無用で全員強制参加。
でもどうして俺を追加したのか。
『えっと、俺に何か用かな?』
『別に友達追加に理由なんていらないと私は思う』
『はあ』
『それ文字だけならため息にしか見えないよ』
『ごめん、そんなつもりはなかった』
『ちょっとした相槌のつもり』
『知ってる』
『うん』
『ただクラスLINEにいたから追加したってだけ』
『そういうものですか』
『そういうもんです』
『えっと』
『本当に用はないの?』
『あるよ』
いや、あるのかよ。
さっきのやり取りは何だったんだよ。もしかして広瀬さんは学校のめんどい役割を俺に任せようとでもしてるのだろうか。
『浅野くんってRPG好きだよね?』
そう思っていたのだが、まさかの内容に驚いた。
俺の自己紹介を真面目に聞いていた人がいることが何よりの驚き。
『好きだけど』
『自己紹介覚えてたんだ?』
『うん』
『トップバッターで目立ってたからね』
『ああ』
『なるほど』
つまり、要約すると悪目立ちで覚えていたということ。
『それでさ』
『何のRPGしてるの?』
『えっと――』
その後、彼女と。いや、広瀬さんと俺は色々やり取りをして、彼女もRPGマニアということが分かった。
同じゲームをやっていたわけではないが、MMORPGが好きだった彼女は自己紹介で俺のことが気になり、こうやって連絡をしてきたとのこと。
そして彼女はRPGのゲーム仲間が欲しいとのことで、俺がやっているゲームを教えながら一緒にやることに。
俺たちはスマホで通話を繋ぎながら、
「それじゃあひとまず、キャラクリして武器を選んでいこっか」
『うん、分かった』
スマホ越しでの広瀬さんの声は学校での声と違っていて、少し緩やかな気がする。
学校外のプライベート時間だからということも相まってるのかもしれないが。
『一応できたけど、次はどうすればいい?』
「んーと、それじゃあフレンドになろうか」
ということで広瀬さんとフレンドになったわけだが――
「minamiって……本名……」
『えっ、ダメだった? 私ゲームの名前はいつもこれなんだけど』
「いや、別にいいとは思うけど今時珍しいなって」
『変えた方がいい?』
「いや、大丈夫。次はチュートリアルにいこっか。後ろで見とくからあそこのオオカミを――」
『おっけ、任せて』
そう言うと広瀬さんは慣れた手つきでオオカミの方へとトコトコ歩いていく。
さすがはRPGマニアと言ったところだろうか。これなら俺の教えなんてなくてもすぐ上達していきそうだ。
それにしても、こうして人と通話しながらゲームをするのは初めてだ。
MMORPGということもあってメッセージでやり取りしながらということはよくあるが、通話をしながらはあまり聞いたことがない。
しかも相手はまさかの学校の女子生徒……そこから更に【A級美少女】と噂されている人気女子。
ついさっきの俺にこのことを伝えても信じないと思う。
でもなぜだろう。通話だからか不思議と緊張はしない。
いや、これは通話とかの問題じゃないのかもしれない。広瀬美波……彼女は俺と同類。
同じ空気読みだから無駄に緊張しないのかも――
『ちょっ、やばいっ! 浅野くん助けて! 死ぬ!』
オオカミと現在戦闘中であろう、広瀬さんの声がいきなり部屋中に響く。
「えっ!? まだチュートリアルだよね!?」
『やばいやばいやばい!』
この子、本当にRPGが好きなのか?
その後わかったことだが、残念なことに彼女はゲームのセンスが皆無だった。
これからも教えることはたくさん増えていきそうだ。
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