5.ハンターギルド
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――――しばらくして。
「待たせたな、ルカ」
ルカがギルドの窓際に設置されているカウンター席に腰掛け待ってい
ると、手をヒラヒラと軽く振りながらハイリスが一人の男性を連れてやってきた。
「こっちはここのギルドマスターのベルタ。昔一緒にパーティを組んでやってたこともある俺の古馴染みだ」
「初めまして勇者様。ルカだったか? よろしく、俺はベルタだ。ここのギルドマスターをやっている」
「初めまして、よろしくお願いします」
ルカは差し出された手を握り返す。ゴツゴツとした長年武器を振るってきたであろう戦士の手をしていた。
ハイリスと同じくらいの身長だが体格が筋肉質で筋骨隆々としている。古馴染みということなので、歳も六十は超えていると思われるが衰えている様子は見えない。
「堅苦しくしなくていい。こいつとは、こいつがじいさんの教会を継ぐまでの間、他に二、三人と一緒にパーティ組んで、魔物討伐と称して色んな場所を旅した仲だ。ところでルカ、ギルドに登録してないんだってな、これから世界を旅するなら登録していけ。どこの地域でも魔物や魔獣の情報はギルドに集まるようになっているからな。ついでに討伐したら報酬も出るし」
「はい、僕も街に来たら登録するつもりでした」
「よし、それじゃこっちに来い」
ベルタに連れられ一番端の空いていた受付で用紙に記入する。
「なに、体したことは無い。名前と住所、自分が死んだときに誰かに伝えてほしいかどうか、必須事項はそんなところだ」
用紙に書かれた記入項目を指でなぞりながらベルタが話す。
「裏面は主に使用している武器、戦闘経験の有無、受けるようと思っている依頼の種類、討伐系、採取系とかな、予定で丸付けてくれ。まあ、アンケートみたいなものだ。あと登録料で小銀貨一枚がかかる」
「住所どうしましょう? これからしばらく定住することはないと思うのですが」
「あ~~、これはな、住んでる場所の近くのギルドに所属して仕事を受けるのが一般的だから。俺たちも昔はやってたが、根無し草で旅をしながら行く先々のギルドで依頼を受けるってのは珍しいんだよ。まあ気にせず実家の場所を書いとけ」
この世界で行商人など一部を除き、一般人が旅をしながら生計を立てることは少ない。
ハンターギルドという組織としては、国境を超えて魔物などの情報を共有する仕組みになっているが、所属しているハンターは近くに住んでいる者がほとんどで入れ替わりは少ない。
「分かりました。あと、この死亡したときの連絡先というのは?」
「ハンターの仕事も色々で危険な仕事もあるからな、万が一死んじまった場合、希望があれば家族に伝えるようにしている。登録が終わったら認識タグ発行されて、所属ギルドと名前が書いてあるから、万が一のときも身につけていれば身元が分かるって仕組みだ」
「なるほど……」
「|タグだけで帰ってくるんじゃねえぞ!《死ぬんじゃねえぞ!》」
そう言ってベルタはルカの背中を雑に叩いた。
そのせいで若干最後にペン先がぶれたが、ルカは記入終え用紙をベルタに渡した。
ざっと記入事項に目を通すと、用紙から目を上げて言った。
「明日にはタグ出来てるからまた来いよ。一応偽造対策とかで直ぐにできないんだわ」
注文するところまではベルタも知っているが、どうやって作られているのかまでは知らないようだ。
これで終わりかと、ルカがペンをペン立てに戻していると、唐突にベルタがルカの肩を掴んだ。
「あとはそうだな、ちょっと付き合え。せっかくだから勇者に選ばれたヤツの強さを知りたい、実技試験だ!」
「おいおい、相変わらず脳筋だな~~」
黙ってルカの後ろから登録手続きを見ていたハイリスが苦笑いする。
「大抵の戦士はお前より弱いぞ。勇者様もまだ神託を受けただけの兄ちゃんだ」
「ハッハッハッ、構わん構わん。一生に一度もない機会だ!」
「……ルカすまんがこの脳筋に付き合ってやってくれ」
ハイリスはややあきれ顔で頭をかいている。
「いいですよ。あまり対人戦は鍛錬以外でやったことないので、強い人と腕試しできるのはワクワクします」
「じゃあ裏手に訓練場があるからそっちでやろう」
ベルタが厳つい顔に笑みを浮かべ、ギルドの裏口から訓練場にルカたちを伴い歩いて行く。
●○●○●
――――ギルド、訓練場。
ギルドの裏手には訓練場がある。床は土で壁は無く、雨除けに屋根のみ付いている。
ギルドの建物に近い方では、素手や剣、槍など飛ばさない武器を使用した訓練場所があり、少し離れたところには弓や魔法など遠距離攻撃用に頑丈な土壁と的がある。
この日は催されていなかったようだが、訓練場ではギルド主催で初心者向けに戦いの基礎を幾らかの料金で教えてもらえる講習会もある。また、ギルドの会議室の方では薬草の見分け方といった座学も存在する。
ベルタは貸し出ししている練習用の武器から二本木剣を持ってきた。
一本は特大サイズの木剣だ。
「ちと軽いんだがこれでいいか?」
二本のうち通常サイズの木剣をルカに手渡した。
木剣の刀身には何度も打ち合わされてできた沢山の傷が付いている。
受け取り軽く振って確かめる。
「はい、大丈夫です。……ベルタさんはその大剣ですか?」
「んっ? ああ、普通の木剣だとな、軽いし細いしでしっくりこないんだわ。作ってもらったはいいが、誰も使っている様子が無いから、ほぼ俺専用になってる」
そう言いながら、木剣には見えないような大剣を軽々と振っている。
ブン、ブンと低い風切り音がする。
「よし、始めようか」
「行きます!」
ルカは砦村に居たときは、専ら動物や魔獣を狩るのが専門だったため、対人戦は鍛えてもらった父親や、幼なじみの友人との訓練でしか経験が無い。
獣と人では戦い方は大きく異なる。獣は牙や爪、俊敏な動きに警戒をしなければならないが、対人戦では武器の動かし方やフェイントなど駆け引きが重要となる。
とりあえずルカは訓練の定石に則り、軽く打ち合うところから始めた。 が、相手はルカの何倍もの力があるパワーファイターである。初撃を真っ向から受けたルカは踏鞴を踏んでしまい、手の痺れに顔をしかめながらすぐさま二撃目からは受け流すことに注力する。二撃目、三撃目をなんとか受け流し一旦距離を取る。
(真っ向勝負じゃだめだ、獣を相手するときみたいにフットワークを使って攻めないと……)
そこから攻め方を変え、どうしても動きが大きくなる大剣の攻撃後の隙を狙って、足下や左右から攻撃を加える。
模擬戦開始から五分を過ぎ、ルカの息が上がってきたころ。
「うむ、こんなものかな。終わりにしよう」
ベルタは強い振りでルカを吹き飛ばし、距離を取ると満足げに剣を下げた。
「はぁはぁ、ありがとうございました」
ルカは練習場の床に無造作に座り込んだ。
「お疲れさん、ほれ」
離れて見ていたハイリスが水を入れたコップをベルタとルカに渡す。
「お前さんから見てルカはどうだった?」
ハイリスがベルタに水を向ける。
「そうだな……ハンターギルドとしては将来有望な若者が入ってきたって評価なんだが……勇者としてはどうなんだ? 魔王と戦うんだろ? 俺の方が強いぞ?」
「いや、お前の方が強いのは当たり前だから。過去の資料を見る限り、勇者ってのは勇者にしか使えない神の力が使えるから勇者みたいなんだよ。その魔法が魔族に特化したものらしくてな、百数十年前の先代勇者は一度に魔物を五十も百も斬ったとか言い伝えが残ってる」
「ほぅ、それは凄いな。さすがに俺でも一度に五十は剣の長さが足りん」
五十を斬ること自体は否定せず、ベルタは関心したように髭を撫でる。
「ルカ、落ち着いたか? ベルタも満足したみたいだし宿に帰るぞー」
「はい……疲れました」
「じゃあまた明日、認識タグ取りにこいよ」
満足げに大剣を片手に手を振るベルタに別れを告げ、二人は宿に戻った。
【ざっくり設定集】貨幣価値
大金貨=10小金貨=100大銀貨=1000小銀貨
小金貨=10大銀貨=50小銀貨
大銀貨=5小銀貨=50大銅貨=500小銅貨
小銀貨=10大銅貨=100小銅貨
大銅貨=10小銅貨
金貨:
大金貨:100万円くらい
小金貨:10万円くらい
銀貨:
大銀貨:1万円くらい
小銀貨:2000円くらい 2枚=宿1泊
銅貨:
大銅貨:200円くらい 2枚=1食程度
小銅貨:20円くらい