8.
本編8話です。
着替えた先輩は、あの日見た学ラン姿だった。胸はある。
なんで学ランを着ているんだろうか。学ランの学校って、女子の制服はセーラーのイメージがあるけど。男女共に学ランで、ズボンとスカートは個人で選択できるとか?他校の制服に興味なんてなかったし、詳しくは知らないけど。
「あ!自己紹介してなかったね!すっかり忘れていたよ。」
「そういえば。学校がどこ高かも知りません」
「私は竜胆葵、演劇部の2年生。高校は森丘第一高校だ。」
どこだっけ。とにかく姉と同じ高校に通うことしか考えてなかったから、進学先決めるときに高校を調べるなんてしてなかったし。どこにどんな高校があるのか、未だによく分からない。
「私は向田日葵。1年生です」
「日葵ちゃんって呼んでいい?」
「いいですよ。私も、先輩のこと葵ちゃんって呼びます」
「、おいおい、私先輩だよー?」
「冗談ですよ。竜胆さんって呼びます。苗字格好いいので」
「あはは、やっぱりそう思う?」
雑談をしながら向かっている場所は、一駅先にあるカラオケ。音源で話が聞こえにくくなるし、高校生でも手が届くお手軽な個室だ。
「それで?どこから知りたい?日葵ちゃんはどこまで知ってるのかな」
「まったく、ですよ。逆に竜胆さんは、私の姉については知ってますか」
「一応知り合いではあったよ。少し話したことがある程度だけど。君のお姉さん、演劇部の先輩と仲が良かったから。」
色々と聞きだしたいことはあるが、助けてくれたとはいえ、竜胆さんを信用していいのだろうか。竜胆さんが刺客第二号だった時、私には対抗手段が何一つない。もしものために、まず比較的安全なものからいこう。
「その先輩って、どなたですか」
「演劇部の部長。だから、君に接触してきた生徒じゃないよ」
「…、そうですか」
竜胆さんが嘘をついていなければ、姉のことを知っていると言った先輩は嘘を言っていたわけだ。他に聞けることは何だろうか。
「じゃあ、あの人はどうして、私に接触してきたんですか」
竜胆さんは一瞬ためらうような顔をして、顔を寄せて言った。
「たぶん、日葵ちゃんがお姉さんのことを覚えていたからだよ」
「それは何となくわかります。知り合いどころか、親も姉のことを忘れていましたから。私が聞きたいのはもっと別のことです」
「…きっと、後戻りはできないよ」
「構いません」
知りたいことはたくさんある。あの先輩もどきは、あの魔法少女や竜胆さんは何者なのか。なぜみんな姉のことを忘れたのか。
姉が何に巻き込まれているのか。
知らないと何もできない。私はこのまま突き進んでいいのか、未知の脅威に怯えて暮らせばいいのか。
どちらにせよ、姉を忘れて生きることはしたくない。
「そうだよね。君が一番気になるのはお姉さんのことだろう。それを説明する前に少し長い前置きが必要なんだけど、お付き合い願えるかな?」
「もちろん。後で姉のことを教えてくださるのなら」
竜胆さんは深いため息をついた後、ゆっくりと話しはじめた。
5月になりましたね。
次回に続きます。たぶん長くなりますので、お楽しみに。
次回は6月の投稿となります。それではさようなら。