3.ちらり
本編3話です。
悶々と考えたって、時間は経っていく。
手掛かりがないまま、学校の日になってしまった。
学校の手掛かりは望めそうにない。事件があったのは校外だし、聞き込みといってもできることは少ない。でも、できることはやっておかないと。
万が一学校に関係者がいたらまずいので、浅いことしか聞けないことが悔やまれる。
とりあえず3年生はあらかた聞いた。姉と同じクラスは特に。
後は部活と委員会だろうか。入りたての1年生では、先生に聞くのは難しい。
幸いにも、今日は新入生歓迎会の日。部活の見学を強制される上に、複数の友人と連れたっていけば不自然ではない。
行く候補は決まっている。姉のいたテニス部、姉の友人がいるダンス部と演劇部。
そこに、友達の行きたいというサッカー部が加わった。
本当は陸上部に入りたかった。
でも、こんな状況じゃ、部活動を楽しむ気持ちにはなれなかった。
予想していたように、大した情報は得られなかった。
まずサッカー部に行き、テニス部、ダンス部と見て回ったが、姉の友人は姉を覚えていなかったし、部室にも姉の私物などの痕跡はなかった。
あとは、演劇部のみ。もし、ここでも手掛かりが見つからなかったら。
部室の前に立って、悶々と考える。
「ひーまりっ!もう、入っちゃうよ?」
「あ、ちょっと!」
我慢が出来なくなった友達が私を押しのけ、ドアを勢いよく開ける。
「やあ、こんにちは!見学かな?」
「あ、こ、こんにちは!」
かっこいいね!え、演劇部?入っちゃおうかな!
友達ののんきな小声を無視して、部室を見回す。
姉の友人は確か、髪の長い人だったと思うけど。この様子だと、いなさそうだ。
ふと、既視感を覚えるものを見つけた。
「あ、気になる?」
入口から話しかける声を聞いた。さっきとは違う、髪の長い先輩だ。
この人だったっけ、お姉ちゃんの友人って。
友達はさっきのかっこいい先輩に夢中で、こちらを見ていない。よし。
「あの、」
「妹ちゃんでしょ?覚えてるよ」
「!お姉ちゃんのこと、覚えてるんですかっ」
「あ、こら。ほかの人に聞こえちゃうでしょ。」
「あ、すみません…」
やっと見つけた私と同じ人に、つい舞い上がってしまった。
こんな時だからこそ、冷静にならなければならない。
考えろ。この状況での最悪を。
…、この人が嘘をついている場合?いや、覚えていること自体に何か意味があったら…?
、この人が、敵だったら?
「妹ちゃん?」
「あ、その、この後時間ありますか?」
本当に味方の可能性だってある。でも、もしこの人が敵だったら、こちらに危害を加える意思がある可能性が少しでもあるなら。
あの男は、白昼堂々人を襲うような異常者だった。警戒しておかないと。
「部活終わりならいいよ。どこ集合にする?」
「いいんですか?」
「今日ぐらいいいでしょ。」
お茶目にウインクをする先輩。
あれ、本当に覚えているだけの人だったりするのかな。
「葵ー?今日早く帰っていいー?」
「今日は早く帰れるからダメでーす。」
「他校のヤツに聞くな私に聞け!!」
あのかっこいい先輩は他校の人だったらしい。部長らしき人が怒っている。
随分溶け込んでいたし、意外だな。
「じゃあ、放課後玄関集合ね。」
「はい!」
続きます。しかし今年はこれで最後です。ありがとうございました。
今後とも「さびっさび!」をよろしくお願いします。