2.しょうめい
本編2話かつ、前回の続きです。
ぴかり。
突然の光に、思わず目を閉じる。
目を開けると姉の姿はなく、騒ぎ立っていた野次馬や通行人も倒れている。
大男は血を吐いて倒れている。この短い間に、一体何があったのか。
視界の端に、揺れるものがかすった気がして振り返る。
視界に入ったであろう、黒く、長い髪。毛先は赤く染まっており、しかし血に濡れたわけではないであろう鮮やかな赤。
白い生地に赤いリボン。絵にかいたような、魔法少女。
暗い色の魔法のステッキを握りしめ、彼女はそこにいた。
かわいらしい衣装に似合わぬ冷たい瞳は、すぐによそを向いて、そびえたつビル群に飛び込んでいった。
「あ、待って!」
急いで追いかける。
状況を説明してもらうため。なぜそこにいたのか。
聞きたいことは山ほどあったけれど、一番に思いつくのは姉のこと。
彼女が助けてくれたのか、あの大男の仲間が連れて行ったのか。それだけでも、はっきりさせたかった。
小さな体はどんどん小さくなり、すぐに見失ってしまった。
途方に暮れ、どうすべきかわからなくなった私は、とりあえず警察に通報することにした。
結論を言うと、姉は見つからなかった。
到着した警察は、大男を連れて行ったが、姉を探してはくれなかった。
あの場に残っていた血は全部あの大男のもので、姉の血は混ざっていなかったと。
あの場にいた人たちも、姉が最初からいなかったかのような証言をしていた。
おかしい。
あのあとすぐに帰された私は、すぐに両親に言った。
でも、二人は首をかしげて言った。
私に兄弟はいない、と。
おかしい。何かがおかしい。
姉の部屋には、何もなかった。
学校で姉の教室を訪ねても、そんな名前の人はいないと言われた。
姉を覚えている人がいない。
故意的ないじめでも、悪質なドッキリでもない。
何かが、おかしい。
あの魔法少女の格好をした彼女は、本当に姉を助けてくれたのか。
おかしいと感じていても、はっきり口にすることも、具体的な解決策が浮かぶわけでもない。
ポケットから、あのとき拾った指輪を取り出す。
彼女が落としていった、黄色い宝石のついた指輪。残った手掛かりはこれだけ。
帰すことも、ちゃんとした手掛かりにもならない。
どうすることもできないまま、時間だけが過ぎていく。
途方もない喪失感の中、眠気のままに意識が遠のいていく。
手の中で、指輪がきらりと光った気がした。
次は12月に更新します。12月分の投稿で今年の更新は終わりです。来年までお楽しみに。