表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/19

17.

本編17話です。前回の続きです。

白む視界に、紫と赤。

振り上げられた箒を受け止めたのは、黒く禍々しい枝。いや、魔法のステッキだった。枝のように分かれた先端には、真っ赤な宝石が2,3粒くくられている。


「知り合い?」


赤い魔法少女は、ステッキを構えながら振り返った。

幼い、でもしっかりした声。答えようとしたけれど、喉が張り付いたように声が出ない。顎が震えて、声が出なかった。

何も答えられない私を見て時間の無駄だと気づいたのか、彼女は向き直ってもう一度ステッキを振った。


光の粒がいくつも飛んで、ぶつかる。少なくとも私が入っていけるような隙はない。砕け散った礫の欠片は街灯の光を受けてきらきらと輝き、宙に溶けていく。縦横無尽に飛ぶ箒と、礫を生み出すたびに振られるステッキ。

魔法少女同士の戦いは、人間同士の戦いだ。機械と戦うよりも難しいし、下手をしたら殺してしまうかもしれない。普通は怖くて踏み込めない境界線。でも目の前では、殺し合うような勢いの攻防が繰り広げられている。


大きな音がしてはっとした。そうだ。お姉ちゃんをようやく見つけたんだ。聞きたいことも話したいこともたくさんあるんだ。この際、なんで魔法少女になっているかなんて関係ない。無事が確認できたんだから、あとは一緒に帰るだけ。

胸いっぱいに空気を吸い込んで、全部吐き出す。自分が一番得意な方法で、お姉ちゃんを連れ帰る。


「お姉ちゃんっ!!」


変わらず突っ立っているお姉ちゃんに対して、ドロップキックの要領で突進する。

お姉ちゃんは私に甘い。これを最後にやったのは小学生の時だっけ。今やったって、「しょうがないなあ」って言って帰ってきてくれるはずだ。

もっとも、あの頃の体重なんてたかが知れていたし、今やって受け止めきれるかなんて分からない。でも、人に元気に攻撃をしているくらいなんだから、このくらい激しい方がちょうどいいだろう。

ようやくお姉ちゃんはこちらを振り返って、突進している私を見た。


「おおきくなったね、ひまちゃん」


踏み込んだ足は、片手で受け止められてしまった。変身しているとはいえ、こんなに力強くなっているなんて。そのまま足を振り回され、遠くに投げ飛ばされる。

箒を操っていたからてっきり魔法系の能力だと思っていたけど、変身すれば一律で力が強くなるものなのだろうか。


内臓が持っていかれるような強い遠心力が、ぐんとかかる。何とか態勢を整えて着地しようとしていると、箒が目の前に迫ってきた。空中で体をひねって回避しようとするが、少しだけ脇腹をかすめてしまった。後ろにある木がえぐれるのが見えて、痛む場所を抑えながら、当たらなくてよかったと思った。


「知り合いだったの」


いつの間にか隣に退避していた赤い魔法少女は、肩で息をしながら睨んでくる。むっとして睨み帰すと、拗ねたようにそっぽを向いてしまった。その間にも攻撃の手は止めていないようで、大きな雪の結晶がお姉ちゃんの周りを飛び回り、箒を回避しながら礫を降らせている。それでも箒によって少しづつ減らされてしまっていた。


「…ツバキ」

「え?」

「僕はツバキ。あなたは?」

「私は、」


言おうとして、不意に嫌な風を感じた。同時に後ろに飛ぶと、立っていた場所に勢いよく箒が突き刺さった。


「さっき!あの紫の人が『ヒナ』って呼んでたけど、あなたの名前であってる!?」

「え、あ、うん!」

「じゃあヒナ!単刀直入に言うけど、僕たちであの人に勝つのは無理だ!」


結晶が壊れる激しい音の中、箒の猛攻を避けながら必死に声を上げて話す。呼ばれた名前は違うけど、訂正する余裕なんてない。


「機械は壊れているから、僕たちの仕事はもう終わってる!あとは撤退するだけだ!」

「でも、お姉ちゃんが!」


反論しようと隣を見た途端、赤い魔法少女、いやツバキが視界から消えた。

ついに避けきれずに腹から攻撃を食らって、生垣の向こうまで吹き飛ばされた。それに気を取られた一瞬で、私も足をすくわれて転んでしまう。擦りむいた膝がじくじく痛む。それよりも、吹き飛ばされた彼女の安否が心配だ。


「ツバキちゃん!」


生垣に埋まってうなだれている彼女は、一見すると大きな怪我はしていないように見えた。肌には固い枝で擦れてできた小さな傷がたくさん刻まれている。血は出ていないみたいだけど、ゆすってもピクリとも動かない。

口に手をかざすと温かい風を感じる。生きてはいるようだった。目の前で人が死ぬところは見たくないし、お姉ちゃんが人を殺すところも見たくなかったから。


彼女の腕をもって、何とか持ち上げる。年下の小柄な女の子でも、特段鍛えているわけではない私には重く感じた。


お姉ちゃんは何も言わない。ただ、薄く微笑んでいるだけ。追いかけるでもなく、じっと私たちの背中に視線を感じていた。

3月になりましたね。

次回は4月の投稿となります。それではさようなら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ