表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/19

16.

本編十六話です。

チュートリアルを終えて一週間。

機械とエンカウントは、次第に増えている。


レーダー代わりの指輪はところかまわず鳴った。

登下校の道でも、学校の近くの空き地でも、休日の外出先でも。暇な休日はともかく、学校がある日は止めてほしい。成績に響くし、高校だから最悪卒業できないかもしれない。もちろん姉は大事だが、姉を見つけたときに自分の周囲がボロボロだったら?と考えるとぞっとする。今週はたまたま授業には被らなかったが、これからも同じとは限らない。


「葵さん!」

「いくよ!せえ、ッの!」


人間、よくあることは慣れてしまうもので。

戦うたび、何かを殴ることへの抵抗や嫌悪感が薄れ、麻痺していく。

およそ人には見えないものもいたけれど、機械のほとんどは人の形をしていて、殴ったときの感触は同じ。金属にぶつかったときのような痛みもなく。シリコンでできた人形を床に叩きつけたときのような、直接もってないのに、物の衝撃が手に伝わってくるような感覚。直接の感触がないのに、手に残る不快感。最初の時ほどのショックは受けなくなったけれど。

殴ったり蹴ったりするのも、壊すのも慣れはしないけど、それでも一歩、近づいている気がしている。


「ふう、今日は少なかったね」

「なんだか、動かないやつがいた気もします」

「いたね。最近おかしなことが多いなあ」


基本的には葵さんと一緒に駆り出される。

彼女の凄まじい勢いの拳は、慣れてみると頼もしい。強いという信頼もあるし、なにより早く終わる。親しい気でいると心持ちも楽になった。


「前まではなかったんだ。指輪の精度が鈍るなんてさ」

「誤作動とかですか?」

「かもね。意外にも仲間割れの跡だったりして」

「壊れても反応するんですね」


「仕組みの問題かな。指輪は感知したから鳴っているだけで、基本的に魔法少女の破壊でないと止まらないんだよ」


戦いながらの雑談も、多少慣れた今だからできる。あっという間に機械たちは動かなくなって、その日は解散になった。

静かな道では、どうしたって余計なことを考えてしまう。姉のこと、これからのこと。

一時心の余裕を感じていても、一人になれば悶々と考えてしまう。一人ではない時間を思って、服の上から指輪を握りしめた。




その日は、珍しく一人で現場に向かった。

葵さんは部活の練習でいない。人と歩くことに慣れ切っていた私は、用事が出来て少しだけほっとしていた。こんなことに安心する日が来るなんて。


向かった場所は、寂れた公園。

遊具は大きいが整備されている様子はなく、草木は生えっぱなしで、遊具は目に見えて錆びている。時間帯もあってか人っ子一人いない。そして、片隅には積み上がった機械。暗闇の中で腕や足が転がっているのは流石に怖い。ホラー映画を見た後に暗闇が怖くなるような、たぶん今日は夢見が悪いだろう。

これが、葵さんが言っていたおかしなことだろうか。指輪は静かになったけど、一応警戒のために変身しておこう。


戦うことには慣れたが、変身にはいまいち慣れない。全身の細胞の表面が入れ替わるような肌の泡立つ妙な感覚が、いつまでも慣れない。左手にはめた指輪も、何かを強制的に誓わされているような気分だ。


変身を終えて、ぎゅっと拳を握りしめる。すると、指輪に付いた大ぶりの宝石が辺りを照らし始めた。

機械が動いていないか、慎重に観察する。光の先には、バラバラ死体のようになった機械たちと、まだ自立している一体。いや、あれは…。


「魔法少女…?」


そこにいたのは、紫の衣装を身にまとった魔法少女。手に持っている箒の柄には大粒の宝石がついている。あれが彼女の武器なのだろう。電灯の光りを受け、機械に流れる蛍光色のオイルが箒から滴っているのが見えた。


「あの!この機械ってあなたが、」


視界が、急にぼやけた。一歩がやけに遠い。

自分の体が、自分の体が無くなったような。力が入らずに膝をつく。ピントが制御できない。彼女は、彼女は大丈夫か?機械の攻撃か、もしくは。


そう思ってようやく顔を上げた。瞳孔が、私の意思に反してきゅっと縮むのを感じた。

記憶の中でぼやけたていた姉が、より鮮明に笑ってそこに立っている。






「ごめんね」

2月になりましたね。

次回は3月の投稿となります。それではさようなら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ