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計画完遂しましたわ






「すごい。騎士様がたくさん!あっちの騎士様の制服も、こっちの騎士様の制服も素敵。それに動きも。みんなほんとに格好いい」


 フランセン公爵家の騎士団が犯人の拠点である邸を占拠、被害者を保護し男達を捕縛してから暫くして王立の騎士団も到着し、両団協力のもと邸の捜索が始まった。


 その様子を、アニタは目を輝かせて見ている。


「強くて仕事も出来る男性は、格好いいですものねえ」


 ゆったりとソファに腰かけたコルネリアが、嫌味を込めてデニスに言うも彼にはまったく通じない。


「そうだな。男の俺の目から見てもかっこいいもんな」


「はあ」


「なんだよ?」


「わたくしは今『女性の背に隠れるような方は論外』と申し上げたのですわ」


「あ」


 遠回しに言っても通じない、とコルネリアはずばりその言葉を口にした。


「まあ。いいですけれど」


 無事だったので何も言うまい、とコルネリアが諦め締め括れば、またもデニスが余計なことを言う。


「なら言うなよ」


「っ。言いたくなるほどひどかったのですもの。殿方があのような姿を晒すの、初めて見ましたし」


 言われたら言い返す。


 大人しく引き下がる可愛い性格などしていない、と自分を分析するコルネリアは、即座に言い返してデニスを撃沈させた。


 その間にも騎士団の捜索は粛々と進み、数々の証拠の品が押収されていく。


「犯罪を生業とされている人達だったそうですわ。万が一、自分達が捕まった時には依頼主も捕縛されるよう、細かに用意してあったそうです」


 口頭だけで実行犯とされるところだったデニスと違い、メレマ伯爵本人との契約書類が見つかった、と騎士から報告を受けたコルネリアは、そう言ってデニスを見た。


「へえ」


「先ほどの会話でも、公爵令嬢をかどわかしたら極刑、と言っていましたから、どの程度の犯罪でどの程度の刑罰となるか、熟知もしているのでしょう」


 コルネリアの話を聞き、相変わらずよく分かっていない様子ながら、デニスの顔が青くなる。


「公爵令嬢をかどわかしたら極刑」


「漸くですか。現状がどうあれ、貴方がメレマ伯爵家のナイフを持ってわたくしを脅し、連れ去ろうとした事実は変わりません。ですが、貴方は妹さんを人質に取られており、わたくしはその救出に協力した。これもまた事実です。なので、騎士団の尋問の際にはそこは明確にお伝えください」


「俺も騎士団の尋問を受けるのか!?」


「ご自分のしたことをお忘れで?」


 デニスが持つ、布を巻いた状態のナイフをぺちぺち叩いてコルネリアが言えば、驚き身を乗り出していたデニスが、ぐぅと唸った。


「それに、そのナイフは証拠のひとつにもなりますので、きちんと提示してください。メレマ伯爵は盗まれた物だと難癖を付けてくるでしょうが、他の証拠との紐づけもあるので大丈夫です」


「俺、犯罪者なのか」


 がっくりと肩を落とすデニスを、コルネリアは不思議そうな目で見る。


「その覚悟で、わたくしを襲撃したのでしょう?」


「いいや。あんたを連れて行くだけだから、何の罪にもならないと思ってた」


「・・・・・」


 余りにも気楽な調子で言われ、コルネリアは一時言葉を失った。


「なんだよ?」


「いいですか? 馬車を襲撃するというのは立派な犯罪行為です。ナイフで人を脅すのもまた然り。よおおおく、覚えておおきなさいませ」


「あ、ああ」


 呆れを通り越し、鬼気迫る表情で言ったコルネリアにデニスが怯みながら頷き、コルネリアはこほんと気持ちを整える。


「貴方の方は、被害者であるわたくしがその境遇に同情し協力することとした、というわたくしの証言も加えれば罪も軽減されるかと思うのですが、問題は誘拐犯三人組さんです。彼等もあずかり知らない所でわたくし達が出現したのが事実だとしても、王立の騎士団から見れば、わたくし達はまとめて監禁されていた状況です。つまり、誘拐犯三人組さんの罪が重くなってしまう可能性が高い」


「ええと。よく分かんねえんだけど、あいつらはやったこと以上の罪になっちまうかも、ってこと?俺とあんた、っていうか、あんたがここに居たから」


 首を傾げつつ言うデニスに、コルネリアが頷いた。


「その通りです。ですがそれは誤りなので、フランセン騎士団が予め彼等に交渉しました。メレマ伯爵が黒幕だと示す証拠をすべて王立の騎士団へ提示し、メレマ伯爵から指示された内容を詳らかにすること。そうすれば、フランセン公爵家として情状酌量を求める、と」


「ふうん。でも、ここへ来た本当の方法は・・・・・」


 あのへんてこりんな道を使ったじゃないか、と言いかけたデニスはそれ以上の言葉が紡げず口を噤む。


「それは絶対に言葉に出来ない、文として伝えることも出来ない、と言いましたよね?先ほど妹さんにも同様の術をかけさせていただきましたので、わたくし達が突然現れた時の状況を彼女も詳しく説明することは出来ません」


「周到だな」


「この程度、当たり前です。ですので、貴方がここへ来た経緯を聞かれた際には、フランセン騎士団に協力してもらった、としてください。わたくしも、父に協力を仰いで騎士団を動かしてもらった、と説明しますから。まあ、その辺りは事実ですしね」


「なんかすげえ・・って、あれ?じゃあさ、あいつらの契約書とかの証拠?出させなくても、あいつらの罪が増えることはねえんじゃねえの?」


「そうかもしれませんが、証拠はとても大事ですので」


 やられっぱなしは性に合いませんの、と貴族令嬢の微笑みを浮かべたコルネリアは凍り付くような表情でありながらもとても美しく、デニスはどこか遠い世界の存在であるかのような畏怖を抱きつつ、その麗容に圧倒されていた。





ありがとうございました(^^♪


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