第五話 一方その頃
第一王子視点の番外編です。
「僕と結婚してください」
「いやです」
膝をついて結婚を申し込むペドッロの手を、その女性は振り払った。
「な、なぜです」
「あなたちょっと前まで別な女性と婚約してましたよね、友達から聞きましたよ。それって、人がせっかく貴方を愛し信じていたというのに、何も知らない私と逢瀬を重ねて、その人を裏切ったってことになりますよね。私を本気で愛していたのなら、その人と離れたかったのなら、もっと誠実であるべきでしょう」
まくし立てるようなその言葉に、ペドッロは顔をしかめた。彼女は続ける。
「そもそもあなたは私のどこが好きなのですか」
「胸だ」
「くたばれ、何が真実の愛ですか。貴方のような人と結ぶ婚約などありません、さよなら」
長いスカートを小さく翻し、女性は去っていく。
おい待ってくれ、僕は第一王子なんだ、結婚すればきっと幸せに暮らせるぞ、おーい!
とかいう負け犬の遠吠えは、彼女の耳には届いていなかった。
────────────────────
「婚約失敗しました……」
「このゴミカスドラ息子が」
ペドッロの父が、吐き捨てるようにそう言った。
「もうこのままじゃ一生独身の王です、国が破綻してしまいます助けてくださいお父様」
ペドッロが地に頭をつける。つけながらカサカサ動く。
後者の行為に誠意を感じるかは人それぞれだけれど、少なくとも父は、動きを見せた。
「簡単な話だろう」
そう口を開いた。
顔を上げたペドッロを見て、ニヤリと笑う。
それはもう、人の気持ちを一切考えてないような、かつ彼らがやることとすれば想像に難くないような、非道な案。
彼は言う。
「ピノ嬢とよりを戻せば良いじゃないか」
そう、言い放つ。
続きが気になったらブクマと評価よろしくお願いします。