08 よく分からんと、最弱勇者②
「おい、そういやこいつわしのパンチで死んだぞ」
「確か、魔王が出てきたときは聖剣も満足に持ち上げれてなかったぞ!」
「え? マジで? いくら聖剣でも五、六キロ……やばいじゃろ! そういえば色々と動きがのろ――」
「うるせぇわ! これでも僕、勇者だけど? 魔王倒す予定だけど?」
色々と失礼な奴らだな!
おっさんにいたっては蘇生のとき『勇者よ〜』とかいってたよね? あれ、……言ってた? ……よね?
「いや、あれはテンプレートじゃから。誰かを蘇生する時に言う決まりじゃから。あのセリフ聞くためだけに死んで大金払ってくSランク冒険者とかいるから。」
「わ〜お! 冒険者は勇者って言ってもらえて、教会のサイフは潤う! Win-Winだね、じゃねぇよ! その頭のおかしな冒険者とかどこにいるんだよ!」
「ハジマアリ街じゃ!」
「え? 今、なんて」
おっかしいな……この町の名前が聞こえたんだが?
ま、まぁ、気のせいだよね!
初心者向けの街にSランク冒険者なんている訳――
「だから、ハジマアリ街じゃ」
「ふざけてんのか⁉ Sランクならもっと経験値の稼げるとこに行けよ! こんなとこで油売ってる暇あるなら魔王軍の幹部でも倒しとけよ!」
「なんちって勇者が何を言ってるんだか……」
「そうじゃ! せめて『今』、『この場』、『目の前』で困ってる人を助けられるくらいになってから言え!」
「困ってる人?」
周りを見渡してみるが、ヨシノとおっさんしか見つからない。
「「いや、目の前にいるだろ!」」
「どこにいるんだよ……」
そう思いながらも周りを見渡すと僕はある事を思い出してしまった。
そう表面が黒く焼けた家達のことを……
「何か、ナレーションおかしくね?」
「マジでそれな、なんじゃが……」
「そういう事か!」
「「と言いますと?」」
突然二人は目をキラキラと輝かせ、顔だけ、元気になる。
「つまり、ここでの困ってる人っていうのは――」
「「うんうん!」」
10秒後
「………………………」
「「………………………………………」」
二人が不思議そうな顔をする。
30秒後
「………………………」
「「………………………………………」」
二人の何も感じられない、ただ形だけの笑顔が恐ろしい。
1分後
「………………………」
「「………………………………………」」
二人の顔が血の気を帯びてきた。
5分後
「………………………」
「「早く言えよ!」」
「でも、大事なことを言うときはできるだけためた方が良いって作者が言ってたよ?」
「どうせ、ため過ぎて何言おうとしたか覚えとらんじゃろ」
し、失礼だなそんな5分しか経ってないのに忘れるわけな……………………あれ? たしか…………?
「何の話だっけ?」
「目の前で困ってる奴を助けろって話だよ!」
「なに忘れとるんじゃ!」
…………あぁ〜、……その話、かぁ~……………。
「あ、あれね! ちゃんと人助けしようねって言うヤツ……」
「いや、それも大事だけど! でも今、目の前で困ってる人を助けようよ!」
「……あぁ! 目の前の困っている人、つまり、ここら辺の家に住んでいる放火の被害者達を救うってことだよね? それってつまり、もう起こってしまったことはどうしようもできないからせめて、その事件の加害者への報復でその苦しみを和らげてあげるってことが一番救われると僕は思うんだ。だからさ? ヨシノ、困っている人のためにも犠牲になってくれないかな?」
そろそろ冒険者ギルドが出てくるかも…………