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03 土下座と、最弱勇者

 十分……十分かぁ……

「無理じゃね!? ここから村の入り口まで、15分はかかるぞ」

「それは、お主だけじゃろ……普通に生きてれば素早さ10くらい余裕でいけるわ」


 おっさんはわざと周りに聞こえるようにため息をつく。


「まぁ、お主が土下座して頼み込むならおぶって行って――」

「お願いします!」


 手を伸ばしきれいに弧を描きながら土下座を決める。


「……お主、プライドはないのか?」


 おっさんは呆れたような、理解できないような、そんな顔を浮かべている。


「土下座グランプリ準決勝まですすんだ僕が土下座をするのを迷うとでも?」

「……お、おうそうか……ほれ、背中に乗れ」


 おっさんはなにかやばいものを見たような顔をした後、しぶしぶ背中を出した。


「それじゃあ、行くぞい」

「うぃ」


 僕が背中に乗ったことを確認すると、おっさんは走り出した。


「……ところで、土下座グランプリって何じゃ?」


  ★★★


「……ふむふむ、残り3秒。ぎりぎりセーフ……ですか?」

「いや、僕に聞かれても分からないから!」


 ……あれ? なんで今ニヤってなってるの?


「それじゃあ、アウトってことで大丈――」

「申し訳ありませんでした!!!!!!!!」


 美しい土下座は人になにか影響を与えるもの。


「チラッ、チラッチラッ」


 ……そのゴミを見るような目は一体?

 僕の土下座は完璧だったはずだ!


「し、仕方な……仕方ないで……イヤです」


「ありがと……へ? いやいやいや、そこはイヤだけどしぶしぶ納得するとこでしょ! ため息ついて『仕方ないですね〜』が定番で――」

「イヤなものはイヤです」


「僕がいないと魔王が――」

「どうせあなたがいても倒せないです」


「でも、漫画とかじゃ――」

「定番とか知りません」


「お願いします!!!!!!!!」


 さすがに、2回も土下座をされて心を変えない人なんて――

「イヤです」

「いるんかい!」


 一体どうすれば……( ゜д゜)ハッ!


「い、いいんですかぁ? みんな見てますよ? さっさと終わらせたほうがあなたにとっても僕にとっても得だと思うんですがぁ?」


 司会ちゃんは一度周りを見渡し、ため息をつく。

「仕方ないですね〜」


「ヤッタ!」


 バンザァーイ! アハハハ、兵士のみなさんも拍手ありがと――

「ただし条件があります」


「……今なんと?」

「へ? 条件があります、ですね」


 ナ、ナンダッテー!!!!!!!

「で? 条件とは?」

「私が今から言うことを『ワン』と言いながらおこなってください」


 ……へ?

「い、いやぁそ――」

「お手」

「ワン!」


「それはちょ――」

「おかわり」

「ワン!」


「ちょっとだ――」

「ちんちん」

「ワン!」


「だめかななん――」

「おすわり」

「ワン!」


「なんて、考えているんですけど」

「とって来〜い」

 彼女は聖剣を投げる。


「ワ〜ン!」


 ふ〜ん! ふ〜ん! 動けぇ〜!


「……あなた、プライドないんですか?」

ぷらいど(ワン)?」


 見上げると彼女のゴミを見るような目はより冷たくなっていた。

 ま、まぁ言うことは聞いたし……大丈夫……だよね?


「はぁ……仕方ないですね……ついて来ていいですよ」


「ヤッター!」


 アハハハ、今度は拍手じゃなくて笑い声が聞こえる……苦笑いじゃないよね……きっとそう……大丈夫……だと思う。


  ★★★


「それじゃあみんな! 行ってきま〜す」


 僕は馬車から身を乗り出して手を振ってい――

「ダーヤマ様、今度なにかしたらどうなるか分かりますね?」


 ……あ、これはマジの目だ


 色々怖くなった僕はそのまま………………寝た。

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