11 ギルドと、最弱勇者①
「トイレ、トイ……ㇾ……」
勢いよくトイレの扉を開ける。
すると、着替えのためか、服を脱いだメイベルがこちらを向いていた。
ん? 何か違和感が……
「ちょっと……出て行ってくれない?」
「あ、あぁ! ごめんなさい!」
僕は慌てて扉を閉めた。
いやぁ〜、隣の部屋だったkァ………ッ!
なんということでしょう、目の前にはトイレと言うには広すぎるほどの空間が広がっているではありませんか。
そして、ズボンを履こうと前かがみになっている幼児体型の少女が下着と手に持っているズボン以外一糸まとわぬ姿で固まっていた。
恐ろしいことに、彼女の顔がみるみる紅く染まっていく。
そういえばヨシノの魔力って53万あるんだっけ?、などとを考えながら杖に手を伸ばすヨシノの胸部を眺める。
「火ボー――」
「ヨシノちゃん落ち着いてぇぇぇぇぇええええ!!!!!」
壁を突き破って隣の部屋から飛び込んできたメイベルがヨシノの杖を奪う。
「おい、杖を返せメイベル! じゃないとこいつを殺せない」
「今魔法使ったらこの部屋も燃えちゃうよ。ほ、ほらダーヤマもさっさと部屋から出る!」
「は、はい!」
急いで飛び出ると、ゴミを見るような目でじいさんが見つめてくる。
「お、お主……初日から……やば過ぎじゃろ……」
★★★
「じゃ、じゃあ冒険者ギルド行こっか……」
な、何だろうな〜、この空気……みんなの視線が痛い……
「それじゃ、わしは教会に行ってくるから」
「おいてかないで! 貴様、僕のことを見捨てる気か? この空気の中に僕をおいていく気か!」
じいさんに泣きついている僕を見る二人の視線がさらに酷くなっている気がするがたぶん……きっと、気のせいだろう。
「や、やめるんじゃ! 服が汚れる、鼻水ついてるんじゃが」
「ふん! そんな簡単に引き剥がされるほど弱グワァァァアアアア」
じいさんが手を振っておきた風で吹き飛ばされる。
「そ、その男を(冒険者ギルドまで)連れて行け!」
「ほら、行くぞ〜」
「じゃ、じゃあ行こうか……」
……何だろうか二人が優しくなった気がする。
ま、まぁきっと気のせいだろうし……
「行くか! ふ、ふ〜ん! 動けぇ〜!」
「何で昨日動かせなかった引き車を動かせると思ったんだ」
「え、あの剣しか入ってなかったやつ? ……ヤッバ」
「う、うるせぇ!」
結局、三十分ほど頑張ったが動かせなかったのでヨシノに引いてもらうことになった。
そんな事もあったが無事に出発した。
「それで、冒険者ギルドってどこら辺にあるの?」
「目の前にあるぞ」
「へ?」
なんということでしょう、その言葉の通りこのアパートの正面が冒険者ギルドだったのです。
てか、看板デカいな……しかも、教会の隣かよ!
「何で気づかなかったんだろ……」
「ほら、入るぞ!」
入り口で立ち止まっている僕をヨシノが建物の中に蹴り飛ばす。
「……な、なんかやばいやつが飛んできたぞ」
「しかも、ヨシノの連れじゃねえか!」
な、何だろ周りの視線がすごいな……
「い、いらっしゃいませ……えっと……お食事ですか? ご依頼ですか? それとも冒険者登録ですか?」
受付のところまで行くと、珍しい黒髪のお姉さんが笑顔で対応してくれる。
顔が引きつっている気もするが、まぁ気のせいだろう。
「冒険者登録でお願いします」
「この人、一応勇者らしいよ〜」
「メイベルちゃん! そう、勇者なの……えっと……聖剣は?」
「この引き車に入ってる」
ヨシノが指した引き車を見ると、受付ちゃんは目を丸くした。
「何でわざわざヨシノちゃんに?」
「い、いやぁちょっと荷物が多くて……」
お、お嬢さん笑顔が怖いですよ……?
「まぁいいや。……それじゃあこの書類に必要事項を書き込んでください」
えっと……名前、ダーヤマ 職業、勇者 年齢、18
「書けましたらこの能力盤を触れてください」
「はい」
「……あ、あの……えっと……そのですね……実はギルドでは勇者は冒険者登録できない決まりでして…………」
受付ちゃんは若干申し訳無さそうな顔をする。
「え? そんなルールあり――」
隣の席の受付の人が何かを言いかけた瞬間、受付ちゃんは彼を奥に引っ張って行く。
「このステータス見てくださいよ! どうせ冒険者始めてもすぐ死んじゃいますよ」
「でも、メイベルさんは登録できたじゃな――」
「あの子は筋力が高いから、パーティー組めばなんとかなるのよ」
「あ、あぁ……あの〜、誠に申し訳ないんですけど実は勇者は冒険者登録できないらしいのでお引取り願いたいんですけど……」
奥で何を話していたのかは聞こえなかったけど……歓迎されてないことだけはわかった。
でも家賃どうしよ……。
「あ、あの〜、どうしても早くに用意しなきゃいけない金額がありまして……」
「え、えっと……それじゃあ商業ギルドの方で登録できると思うので……そちらでお仕事とかもらったり? ま、まぁ頑張ってください!!」
そういうと彼女は商業ギルドまでの道のりを書いた紙を手渡し。
建物の外まで連れて行ってくれた。
「そ、それじゃあ商業ギルド行くか」
次回、商業ギルド!!