11-5、世界の底から、二人を見守っているにゃ
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約束された終末は跡形もなく分解され消滅した。
それを見届けた終末を滅す者も、その身が限界を迎え、ゆっくりと粒子状になり消えていく……。
巨大な2体の約定体が消失した後には、天使に支えられたマテリ、ヴァレト、リアの姿があった。
天使は3人をゆっくりと地面に下すと、翼を散らして消え去った。
「あばばばばばば、全身ガクガク」
リアはまるで生まれたての子鹿のように、膝をガクガク震わせ、よろよろと地面に倒れた。
「リア、大丈夫ですか……?」
心配するマテリも、ふらついている。が、マテリはそこで、いつもなら一言二言は何かコメントするはずの彼が、無言であることに気が付いた。
振り返ると、マテリの背後で、ヴァレトは無言で俯いたままに立ち尽くしていた。
「……」
「ヴァレト……?」
俯くヴァレトに、マテリは恐る恐る声をかけ、
「マ、テリ……」
ヴァレトが小さく呟きながら上げた顔は、頭部からの流血で真っ赤に染まっており、
「ヴぁ、ヴァレト!?」
マテリの叫びに呼応するように、彼は全身から血が噴き出して後ろへと倒れた。
「ヴァレト!!」
マテリがすぐさま駆け寄り、衣服が返り血で汚れることも厭わず、ヴァレトを抱き上げる。
「あ、だ、だい、じょ……、じょ……、じょぶです……」
ヴァレトはたどたどしく、頭部から噴水のようにピューっと血を吹きながら言う。
「い、いや、やばそうにしか見えないけど!!」
リアはプルプルと震えながら、四つん這いでヴァレトとマテリににじり寄りながら告げる。
その時、再び大地が揺れた。
「おわぁぁぁ、痛えぇぇぇ」
少しの揺れでも体に痛みの走るリアは、悶えて転げまわる。
「な、なんだ!?」
「殿下、空を!!」
フィデスやカルリディ達は、うろたえながらも空を見上げる。
約束された終末は消滅した。にも拘わらず、空にある"裂け目"が消えない。いや、むしろ広がりつつあった。
「世界を滅ぼす敵ってのは、ヴァレト達が倒したんじゃねぇのか!?」
ルスフは問い詰めるようにカルリディへ向けて叫ぶが、
「ボクにだってわかりませんよ! 世界の崩壊になんて立ち会ったことも無ければ、そんな資料もありません!!」
「"世界の基底"が、すでに破壊されているんだ……」
混乱する彼らの頭上から、白い猫耳フード付きのマントを羽織った少女、デルスィが降下してきた。
「貴様!!」
フィデスがデルスィに詰め寄り、襟首を掴んで吊り上げる。
「ぐっ」
腹部に傷を負っているデルスィは、吊り上げられたことで呻きを漏らし、口の端にはわずかに血がにじんむ。
「"世界の基底"とはなんだ!」
「私たちの体が封じられていた"水晶の柱"だ……」
そういいながら、デルスィは左手を軽く振り、空中に黒い穴を出現させる。
穴の先は、神殿でも見た洞窟だ。その時には、中央部に巨大な水晶の柱があり、その中にデルスィとコルラプスェが封じ込められていたが、今はその柱が失われ、何もない空洞が広がっている。
「砕けてしまった柱が、"世界の基底"。世界は、あの柱の上に成り立っていた……」
「あ、あんな柱が……・?」
デルスィの言葉に、フィデスは驚愕と絶望の表情を浮かべる。
「あの柱は、"概念"だ。それを、君たちにもわかりやすく視覚的に見せていたにすぎない。私たちの本体は、その概念の中に囚われていて……、そして約束された終末は、その概念を破壊した……」
「概念……、破壊……」
フィデスは力なくデルスィから手を放し、2歩3歩と後ずさる。
「そ、そもそもは、貴様が原因ではないか!!」
フィデスは、再びデルスィに詰め寄り
「殿下! ちょっと黙っていてください!!」
マテリの一括で硬直した。
「な、なに……?」
一瞬ひるんだフィデスだったが、彼は振り返り、今度はマテリに怒りの矛先を向けようとし、
「リア」
「は、はいぃぃぃ!!」
無敵鎧が出現し、フィデスは内部に閉じ込められた。
中からくぐもった音で、抗議の声らしきものが聞こえてくる。が、カルリディやルスフですらも、哀れみの表情を向けるのみであった。
「アルブ……、いえ、デルスィさんとお呼びした方がいいでしょうか……。何か……、何か方法はありませんか?」
マテリはその胸にヴァレトを抱きしめたまま、デルスィを見上げて問いかけた。
「貴女は、こんなことになっても、私を"アルブ"と呼んでくれるのですね……」
デルスィは、泣き笑いのような表情をマテリに向ける。
「ありがとう、マテリさん。私は、貴女たちに救われた……」
そういうと、デルスィはふわりと浮かび、崩れ落ちた神殿跡地へと向かう。そこには、十字架に磔となった、"疑似巫女"が残っていた。
「大丈夫、まだもう少しだけ瑪那が取り出せる」
デルスィは"疑似巫女"と額を合わせながら呟き、そしてマテリに向けて振り返る。
「私が、この世界の"基底"になります」
「え?」
戸惑うマテリを余所に、デルスィはすぐ横に黒い穴を出現させる。
「大丈夫、渡り人に寿命はありません。この世界が本当の"終末"を迎えるその日まで、私が世界を支えます」
デルスィは柔らかな笑顔を浮かべながら、その黒い穴へと飛び込んむ。
「アルブ!!」
「ふふっ、世界の底から、二人を見守っているにゃ」
デルスィのその言葉を最後に、黒い穴が消滅した。
ひと際大きな地震が彼らを襲う。
全員が立っていられず、地面に這いつくばり、マテリはヴァレトを強く抱きしめた。
数秒か、数十秒か、長く感じられた揺れは、次第に収まり……、完全に揺れが収まったとき、彼らの頭上から陽光が差し込んだ。
マテリはゆっくりと空を見上げる。
そこには裂け目などなく、雲の隙間から、太陽が覗いていた。
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<次回予告>
全ては"その男"の企みだった。
数多の契約者台頭と魔族との争い。
そして渡り人の出現。
全ては"その男"がさらなる高みへと昇るために仕組んだことだった!
次回:真の黒幕 テガト=ロニッサ!
(これは嘘予告です)
「え? 誰?」
「大ミミズ運んだりしたじゃないっすか!!」
次回で本作最終話です。
次回更新は、3/15(水)の予定です。




