10-10、我は生きている。ならば終わらぬ
いつもご覧いただき、ありがとうございます。
評価、ブックマークいただきました。重ねてお礼申し上げます。
「この世界は滅ぶ。私が滅ぼす。そのようになるべきだからだ。そのようにあるべきだからだ」
魔王は両手を広げ、天上の存在へ祈りを捧げるように告げる。
「……、魔王様……」
その魔王へ、オヴィエンティアは痛まし気な表情を向ける。
「あの、なんか、話が違いますけど?」
「あるぇぇぇぇぇぇ?」
リアは首を傾げた。
魔王が右手を振り上げる。すると、周囲にいた無数の"眷属"たちは、ピタリと動きを止める。
「人に与する巫女よ。我が大義のため……」
そして、魔王はゆっくりと、右手を下ろし、その人差し指でイグノーラを指差した。
「消えろ」
途端、"眷属"たちは一斉にイグノーラへと、その濁った視線を向けた。
「え、マジ……?」
イグノーラは、冷や汗を垂らしつつ、1歩後ろへと下がった。直後、"眷属"たちは我先にとイグノーラに向けて殺到する。
「うっそぉぉぉぉぉぉ!!!」
我先にとイグノーラに向けて突撃する"眷属"たちは、まるで津波のようにフィデスたちへと襲い掛かる。
「させん!」
「おらぁぁ!」
「はぁぁっ!!」
フィデス、ルスフ、カルリディが、イグノーラをかばって"眷属"を次々と撃破する。
ヴァレトやマテリ、ラクティスも同様に、襲い来る"眷属"を撃退するが、
「この圧力! も、持たない……・っ!」
流石のマテリも、撃退する以上の速度で押し込んでくる"眷属"の勢いに、余裕がなくなっている。
倒しても倒しても、"眷属"は次から次へと補充され、さらに倒した"眷属"も復活してくる。
「祈りを!! 瑪那を!!!」
ヴァレトは叫ぶようにイグノーラへ告げる。が、
「無理だって! あいつに邪魔されて使えないっての!!」
「逆ですよ! 魔王が貴女を排除したいのは、あの"巫女"の邪魔になるからだ! 貴女にとってあの巫女が邪魔なら、あの巫女にとっても貴女が邪魔なはずだ!」
ヴァレトの言葉に、イグノーラはハッとした。しかし、すぐに戸惑いの表情へと変わる。
「で、でも……」
つい先ほど、敵方の巫女であるオヴィエンティアに押し負け、瑪那を奪われたばかりである。ここまでゲーム感覚でやってきたイグノーラにとって、命を賭けて戦うなど、とても──
「できなければ、我々は押しつぶされます!」
イグノーラは助けを求めて周囲に視線を巡らす。しかし、皆襲い来る"眷属"を押し返すのに必死で、そんなイグノーラの視線には気が付けない。
「わ、わたし……」
フィデスも、ルスフも、カルリディも、イグノーラを護るために戦っている。
攻略できなかったが、ラクティスも、そして相容れない相手であるはずの悪役令嬢と、モブの従者たちですら……。
「や、やればいいんでしょ! やれば!! やってやる!!」
半ばやけっぱち気味な心境になりつつも、イグノーラは胸の前で手を組み祈りの体勢を取る。
彼女の意識は緑エルフを通じ、深く深く潜っていく……。そして、瑪那が溢れる"門"へとたどり着いた。
誰かが、その門を独占している。
「くそ、よこしなさいよ。こっちにソレ、よこせぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「っ!?」
周囲の喧噪のため音は聞こえない。が、少し離れた場所でもう1人の巫女が呻きを上げる気配を、イグノーラには確かに感じた。
「おらぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
気合一閃、イグノーラから緑のオーラが溢れ、フィデス、ルスフ、カルリディ、マテリやヴァレトにまで瑪那が流れ込む。と同時に、"眷属"たちの勢いが目に見えて衰えた。
しかし、すぐに緑のオーラが減り、"眷属"が盛り返し、はたまた、緑のオーラが勢いを取り戻し……、
「あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
イグノーラが額に汗を浮かべながら叫ぶ。2人の巫女が、瑪那を奪い合う。その綱引きは、ゆらゆらと行ったり来たりで拮抗している。
イグノーラが完全に主導権を奪うことはできていない。それでも、瑪那供給の安定性が落ちたことで、目に見えて"眷属"の圧力が弱まっていた。
「今です!」
マテリの叫びに、皆呼応する。
「俺が血路を開く!!」
ルスフの炎ゴーレムがひと際強烈な火炎を吹き、壁のように積み重なっていた"眷属"の一画に微かな隙間が開いた。その先には、魔王と、汗を流し膝を付くオヴィエンティアの姿がある。
「彼女は私が!! 殿下! ヴァレト!!」
マテリは叫びながらイグノーラの傍らに立ち、そしてフィデスとヴァレトは頷き合い、視線を交錯させる。
「ラクティス!!」
リアが叫び、ラクティスと視線を合わせる。ラクティスは一瞬怯んだ表情を見せるが、リアの決意に満ちた瞳に魅入られ、頷いた。
黒衣収穫人がリアを担ぎ上げ、眷属の群れの隙間へ向けて投げ飛ばされた。
「うひゃぁぁぁぁぁぁぁぁ、食らえ!! 重鎧弾んん!!」
飛翔しながら無敵鎧を装備し、超重量の質量弾とかしたリアが突進。
密集していた"眷属"たちをなぎ倒し、押しつぶし、小さな隙間が押し広げられて大きな通り道へと変じる。
魔王の元へ通じる"道が"開いた。その道を、時魔術師の時間操作により高速化した騎馬が駆け抜ける。
「食い止めろ!!」
両サイドの"眷属"が、白馬騎士の行く手を遮るように飛び掛かる。
「いけぇぇぇ!!」
白馬騎士に相乗りするフィデスが叫ぶ。その更に背後からヴァレトが飛翔した。"眷属"たちを飛び越え、その先へ!
が、空中のヴァレトに向け、"眷属"の群れから白衣の魔族が飛び出した。
「ティアリウス!?」
ヴァレトが撃破したはずのダメージ反転能力者。が、その瞳は白濁しており、生気が感じられない。彼もまた死体から"眷属"へと変貌していた。
眷属化したティアリウスが、その身をもってヴァレトを止める! その瞬間、遥か後方から放たれた光線が、ティアリウスを打ちぬき撃墜した。
「やっちまいな!!」
神殿の入り口に寄りかかりながら、満身創痍で光線を発射したグラリスが叫ぶ。
中空に舞うヴァレト。視線の先、眼下の数m先には魔王の姿があった。
「動く業火!!」
業火を噴き上げ、拳闘士が動く業火に変わり、拳を白熱させる。
(このまま、魔王に叩きつける!!)
魔王の死の支配者が白骨のような両手を広げ、それが左右それぞれ10本ずつに増殖する。
「ぬぅぅぅぅぅぅん!!」
「SHIAAAAAAA!!」
合計20の白骨拳打へ向け、中空から飛来する1撃の白熱拳。その白熱は、白骨を粉々に打ち砕き、死の支配者の胸へと突き刺さる。
「GYAVAAAAAAAAA!!」
死の支配者が悲鳴を上げつつ全身から炎を吹き出す。炎上した約定体は膝を付き、崩れ落ちた。同時に動く業火も燃え尽きた灰となって消滅した。
そして、"支配者"を失った"眷属"たちも、糸が切れた人形のように一斉に倒れた。
「まだだ!」
魔王から再度黒いオーラが吹き上がり、死の支配者が形成される。が、直後、ランスに貫かれ霧散する。
「……くっ」
「勝負はついた」
フィデスが馬上から魔王を見下ろしつつ呟く。"眷属"が消えたことで、彼と彼の白馬騎士が魔王の元へとたどり着いたのだ。
「まだだ。我は生きている。ならば終わらぬ」
オヴィエンティアに支えられながら、魔王は諦め悪く呟く。しかし、マテリや、グラリスまでもが合流し、すでに戦いの趨勢は決まりつつあった。
「ならば、止めを刺すのみ」
フィデスはそう言いつつ、白馬騎士のランスを構え──
「あ~あ~、なんか面倒なことになってるね」
魔王の背後、空中に黒い穴が生じ、そこから血のように赤いローブの女が現れた。
+++++++++++++++++
<次回予告>
「覚えておくがいい、我が滅びても、すぐに第二、第三の魔王が現れるだろう……」
「その時は、また俺たちが倒してやる!!」
「すごい! まさに王道な捨て台詞! 小生ちょっと感動! あとは戦闘前に"世界の半分"とか交渉に出してくれたら完璧だったのに!!」
「しーっ、ちょっと静かに!!」
「……、ふはははははっ! 貴様らが、生きていれば、な……」
「★という希望がある限り! 人類は必ず立ち上がる!!」
「なんか、宣伝が強引! いくらなんでも露骨すぎ!!」
「しーっ、メタな発言やめなさい!」
「……」
次回:★、その希望!!
(これは嘘予告です)
次回更新は、2/27(月)の予定です。




