10-9、この世界は滅ぶ。私が滅ぼす
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「これらは我が、"憎悪で死を冒涜する支配者"の"眷属"である」
神殿の内外に出現した"眷属"は、総勢30以上にも膨れ上がった。
「さぁ、貴様らも我が"眷属"に加えてやろう」
魔王が手を振り下ろすと、"眷属"たちは、死体とは思えぬほどの俊敏さで、フィデスたちへと襲い掛かった。
「遊んでいる場合ではありませんよ。私たちも加勢します!」
マテリが天使を出しながら叫ぶ。
「はい!」
「わ、わかった!」
ヴァレトとラクティスも、それぞれの約定体を出現させ、フィデスたちへと加勢する。
「お前は行かにゃいのか?」
「小生は足手まといだからね! 端っこで大人しく……?」
リアの視線の先、先ほど加勢に入ったばかりのヴァレトと拳闘士が必至な様子で彼女に向かって駆けてくる。
直後、彼女の背後に"何者か"の気配。
「あ……」
嫌な予感を覚えたリアは、ゆっくりと振り返り、
「ヴァァァァァァァ……」
「ぎょわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
すぐ背後に居た1体の"眷属"と、鼻先が触れそうな距離でのご対面となった。
「ヴァアアァァァァァアァァアァ!!」
「ぎょうわぁぁああぁあぁぁぁぁ!!」
近距離で叫び合うリアと"眷属"。そんな彼女を、拳闘士がヒョイと担ぎ上げた。
「おぉぉぅ、ヴァレトぉぉぉぉ……」
助け上げられ、感謝の言葉を告げようとしたリアだったが、それを述べるより先に、拳闘士によってぶん投げられた。
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
空を飛ぶリア、そして、密集する眷属のただ中へと落下していく。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
そして、無敵鎧を纏ったリアが"眷属"の群れに着弾し、5体の"眷属"がバラバラに吹き飛んだ。
「やめて! 小生を質量兵器扱いするのやめて!!」
無敵鎧から発する抗議の声は、さらなる戦闘の喧噪に掻き消える。
敵陣で騒音をまき散らす無敵のデコイとなったリアは放置し、ヴァレトたちはイグノーラを中心とした円陣を組み、"眷属"を撃破していく。
フィデスの白馬騎士が放つ突きで、"眷属"最後の1体が貫かれて倒れる。
「次は貴様だ! 魔王!!」
ランスの切っ先を魔王に向け、フィデスが魔王に言葉を叩きつける。
「く、」
魔王が手で顔を覆う。
「くっくっく」
その手の隙間から、嗤い声が漏れた。
「これで終わりだと、思うか?」
魔王が右手を翳すと、死の支配者から再び黒い波動が迸る。
それを受け、バラバラになった"眷属"たちの遺体が蠢き、比較的原形をとどめていたパーツ同士が接合し、新たな"眷属"となって立ち上がった。その数約20。
「なっ……」
ツギハギで、ちゃらんぽらんな組み合わせで再構成された"眷属"たち。そのあまりにおぞましい姿に、フィデスたちは言葉を失う。
「ま、まだです! 数自体は減っています! 全身を破壊できれば……」
言っていて気分の悪くなる話ではあるが、ヴァレトは"損傷の激しいパーツ"は戻らないことを告げる。
「そう、だな……。俺が燃やし尽くす……」
「手間取りそうですけどね……」
「やるしかあるまい!!」
顔色は優れないが、ルスフ、カルリディ、フィデスも気合を入れて再び円陣を組み……、
「ならば、数も増やそうか……」
魔王がそう告げた直後、神殿の入り口や、何も嵌っていない窓から、次々と兵士がなだれ込んできた。
「遠征部隊の!?」
遠征部隊の構成員であった兵士や、騎士たち、その数は優に200。全員、目は白濁し、とても正気とは思えないうめき声を漏らしつつも、その濁った眼はヴァレトたちに向けられていた。
「まだまだいるぞ。お前たちが何千体も"素材"を持ってきてくれたのでな」
「貴様!!」
フィデスの怒声をかき消すように、新たな"眷属"たちは彼らへと殺到した。
"眷属"の攻撃を盾で防ぎ、天使が白銀の剣を敵に向かって振り下ろし……、その敵が、遠征部隊で何度か会話した従者の少年であることに気が付き、マテリは剣を止めた。が、敵は攻撃を止めない。マテリへと飛び掛かり、その牙を彼女に突き立てようとして天使のシールドによって吹き飛ばされた。
「ヴァレト! 貴方の"呪怨"能力で魔王を倒せませんか!?」
「無理にゃ」
堪えきれず、マテリがヴァレトに問いかけるも、彼が答えるより先にアルブがそれを制した。
「今回は間違いないのにゃ。この"眷属"というのは約定体じゃにゃい。だから"呪怨"は効果を発揮しないにゃ」
"呪怨能力"は、約定体を攻撃することで、その本体にも同じダメージを伝播させる効果である。が、"眷属"は魔王の約定体ではないため、その効果は意味をなさない。
「ぐおぉぉぉぉ!!」
2体の元兵士がマテリに向かってとびかかる。瞬間の逡巡、そして、彼らは白刃により両断された。
「……謝罪はしません。私たちは、任務を全うします」
そして天使迷うことなく、次々と周囲の"眷属"たちを斬り倒す。だが、斬られた眷属たちは互いに部品を補い合って再び立ち上がり、それをも、天使は斬り刻む。
「SHIAAAAAAA!!」
拳闘士も、眷属の全身を叩き潰すように拳打を連続で叩き込む。
「可能な限り、迅速に破壊する!!」
無事な部位があれば、再び"眷属"として利用されてしまう。ヴァレトは歯を食いしばりながら、襲ってくる元仲間たちの体を可能な限り破壊していく。
襲い来る"眷属"を次々と打ち砕くヴァレトたち。しかし、神殿の外から次々と"眷属"が補充され、倒しても倒しても減らない。いや、むしろ徐々に増えていた。
「もう、もうやめて!!」
そんな中、イグノーラが叫びを上げ、魔王に言葉を投げかけた。
「貴方には昔、人族との間で悲しいことがあったんだと思う! でも! 人族すべてを"眷属"に変えても、貴方の心は救われない!」
イグノーラの言葉に、魔王ではなく、フィデスたちが反応する。
「なに!? そうなのか? 人間すべてを"眷属"にするだと!?」
「そんなことができるのかよ!」
「いや、あれだけの瑪那があればあるいは……、しかし許せませんね!」
そして、ヴァレトの背後でも、彼女の言葉に反応する者がいた。
「あちゃ~、焦ったかな、あれは……」
いつの間にか、円陣の中央にリアと無敵鎧が居た。むしろ、ヴァレトたち自身が、背後の安全を確保するために無敵鎧を中心とした戦闘陣形に自然と推移した結果なのかもしれないが……。
そのリアが、イグノーラの発言に渋い反応をする。
「本編では、魔王戦でこんな物量戦なんて仕掛けてこないからなぁ……。先に"戦いの理由"をネタバラシしちゃってら……」
「今のが、その理由?」
ヴァレトの問いかけに、無敵鎧からの返事はない。が、なんとなく、中でウンウンとリアが頷いているような気配がした。
「貴様、何を言っている?」
当の魔王は、イグノーラの言葉に大した反応は見せない。が、それでもイグノーラは続ける。
「貴方の身近に、愛があるはず、それに気が付いて!!」
この問いかけには、魔王だけでなく、全員の頭に疑問符が浮いた。
「支離滅裂で、何が言いたいのかよくわからないですが……」
「あれ、どういう意味ですか?」
マテリとヴァレトの疑問に、リアが答える。
「横に居る巫女さん、魔王のことが好きなんですよ。その想いに気が付いて、愛に目覚めることで思いとどまる……、的な展開なんだけど……」
「だから、何のことだ? 我は人間などに興味はない」
「……へ?」
イグノーラは、過去一番というほどに間抜けな表情で魔王を見上げている。
「この世界は滅ぶ。私が滅ぼす。そのようになるべきだからだ。そのようにあるべきだからだ」
魔王は両手を広げ、天上の存在へ祈りを捧げるように告げる。
「……、魔王様……」
その魔王の隣に侍る巫女、オヴィエンティアは痛まし気な表情を向ける。
「なんか話が違いますけど?」
「あるぇぇぇぇぇぇ?」
リアは首を傾げた。
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<次回予告>
「この世界を終わらせる。すべての時間を戻し、元ある世界へと還すのだ」
「時間が、巻き戻る!?」
「ふ、ここは僕の出番ですね」
「カルリディ!!」
こうして、世界の命運は、本作で1番影の薄い彼に託された!!
次回:腹黒とは言わせない
(これは嘘予告です)
「影が薄いとか、腹黒とか、言いがかりが酷すぎますよ」
(言いがかりじゃないんだよなぁ……)
次回更新は、2/24(金)の予定です。




