10-4、あれ~? お仲間は逃げたのかな?
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「貴様! 魔族だな!!」
フィデスは、明らかに魔族な外見の男に問いかける。
当の魔族は、「聞くまでもなく魔族だろ?」とでも言いたげに両の手をひらひらと振って見せ、
「僕はティアリウスだよ~」
呑気に自己紹介した。
「ふん! 名前に興味などない!」
「えぇ~、君だって、"貴様、人間だな!?"なんて言われたくないでしょ~?」
「……」
ティアリウスと名乗った魔族の言葉に、フィデスは苦々しい表情で押し黙る。
フィデスの表情を目にし、ティアリウスは軽薄な笑みを更に深めつつ、わざとらしく耳に手を当てて待つ。どうやら、フィデスに名乗れと言っているらしい。
「ふざけたやつだ。だが、このような場所に居るからには、魔王の手下だろう?」
「……なら、どうするんだい?」
名乗ってこないフィデスに、少々不快気味な視線を向けつつティアリウスが問う。
「知れたこと!!」
フィデスが白馬騎士を出現させる。
十八番の騎馬突撃をせんと踏み込んだ瞬間、遠くから爆発音のようなものが響き、地面が小さく揺れた。
それは、今までの地鳴りとは明らかに異質であった。
「あ~ぁ、プラエトはずいぶんと派手に"殺ってる"みたいだなぁ~」
ティアリウスが顎に手をあて、虚空を見上げながら呟く。
「他の魔族か!?」
「そりゃぁ、ねぇ……。だってここ、魔王様の領域だよ?」
とぼけた様子で受け答えするティアリウスに、フィデスはさらに激高する。
「ならば! 早々に貴様を倒し、仲間の救援に向かうのみ!!」
「顕現せよ、──」
呟く魔族の体から、白いオーラが溢れ、
「殿下!」
ヴァレトが止める間もなく白馬騎士は刺突を放ち、ティアリウスの腕を貫く。大きく穿たれた左腕は、今にもちぎり飛びそうである。
「うひゃぁぁ、痛ってぇ~」
ティアリウスは負傷で顔を引きつらせながら、それでも何処か人を食ったような態度を崩さない。
「正夢の見る逆夢!」
涙目のティアリウスの呼びかけに応じ、彼から噴出していた白いオーラがその体を覆い、医者が羽織る白衣のような約定体へと変貌した。
「止めだ!!」
白馬騎士のさらなる突きが、ティアリウスの胸を貫いた。
「ぐぼっ……、あはっ!」
が、彼は口から血を吐きながらも不気味な笑顔を浮かべる。
次の瞬間、まるで逆再生動画のように、千切れかけていた腕が再生していく。胸に突き刺さったランスもグイグイと押し返され抜け落ち、ランスが無くなった胴体には傷一つ残っていない。
「め、面妖な!!」
「あはははははははははっ!!」
白馬騎士が連続で刺突を繰り出し、ティアリウスは大笑いしながら拳打を繰り出す。
その応酬は、一見拮抗しているように見える。が、白馬騎士の刺突は全て命中しているにも関わらず、全くダメージを与えておらず、逆にティアリウスの連打で白馬騎士が見る間にボロボロに破壊されていく。
半壊の白馬騎士の攻撃を潜り抜け、フィデスの間近に接近するティアリウス。
「ぐっ!」
「死にな?」
拳がフィデスを捉える瞬間、ティアリウスの顔面に白い拳がめり込む。
「ぐっぱぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ティアリウスはきりもみしながら吹き飛んだ。
「な、なん、だと……?」
驚愕するフィデスの前には、白司祭が拳を振りぬいた姿勢で立っていた。
「き、貴様、その約定体は確か……」
「えぇ、攻撃力はありません」
傍らのヴァレトも、吹き飛んでいったティアリウスに険しい視線を向けている。
「いっっっっっっってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
ティアリウスが元気いっぱいで立ち上がる。が、彼の顔面は盛大に腫れあがっていた。
「どうやら、ダメージが反転する能力のようです……」
「つまり……、どういうことだ?」
全く理解しないフィデスに、ヴァレトはかすかにずっこけた。
「ですから、ダメージで回復し、回復させればダメージを受けるんです」
「おぉ~なるほど!!」
フィデスは得心が行ったらしく、胸の前でポンと手を叩いた。そして、
「貴様にピッタリな相手だな!」
そう言いながら、再召喚した白馬騎士に相乗りし、
「ここは任せる! 俺はイグノーラを救わねば!」
「え?」
そういって、砂塵の先へと颯爽と消えていった。
「まじかよ……」
"ここは任せて先に行け!"なら、フィクションなどで聞いたこともあったが、まさか"ここは任せた! 先に行く!"をされるとは思わなかったヴァレトは、あっけにとられて茫然とした。
「あれ~? お仲間は逃げたのかな?」
そんな彼の元へとティアリウスがのんびり歩いて近づいてくる。彼は腫れあがった自身の頬を撫で、痛みに表情を微かにゆがめる。
「いやぁ~、殴って回復する約定体なんて、存在するんだねぇ~。まさに僕の天敵──」
言葉とは裏腹に、無警戒に近づいてくるティアリウス。ヴァレトは怪訝に思いながらも、白司祭で蹴りを放った。
「って、思うじゃん?」
ティアリウスの白衣の色が反転、灰色に変色し、敵は白司祭の蹴りをまともに腹で受けた。
「おぉ~、すげぇ~、痛みが引いた~」
ティアリウスの腫れあがった頬が回復し、元のつるりとした肌に戻っている。
「あひゃっ!」
ティアリウスの繰り出した拳打を受け、白司祭ごと、ヴァレトは後方に数m後ずさる。
「君やるねぇ、こんなに早くネタが割れたのは初めてだよ」
再びのんびりとヴァレトに近づいてくるティアリウス。
「でもでもぉ? 僕だって、回復してくる奴と戦ったことぐらいはあるんだよねぇ~。ま、ダメージ反転はオンオフできるから、回復してくれるなら、ありがたく頂戴するけどねぇ~」
白衣のようだった約定体は、グレーのトレンチコートのような雰囲気に変貌していた。
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<情報開示>
正夢の見る逆夢
・3等級(顕現に必要な煌気は3ポイント)
・属性<白>
・攻撃力:高 防御力:超低 耐久性:低
・能力:[煌気を1ポイント消費]:装備者は、以降のダメージ効果が反転する。(ダメージは回復し、回復はダメージになる)
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<次回予告>
「次回、僕の勝利で10章完! 11章からは魔族編だよ~」
「ほぅ、それでこの小生の代わりは、誰がやるんだ?」
「えぇ~、代わりなんて要らなくない?」
「要るよ! 最重要人物だよ!」
次回:リアの後釜選手権!
(これは嘘予告です)
「よく考えたら、続投でよくね? 小生やられてないよ!」
「……」
「え!? やられてないよね!? 鎧無敵だし、無事だよね!?」
次回更新は、2/13(月)の予定です。




