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9章最終話、魔王討伐令

いつもご覧いただき、ありがとうございます。

9章の最終話です。

 王都に跋扈していた魔物たち。それらは全てゴブリン、もしくはその亜種であり……、そして約定体(アバタル)であった。

 敵契約者(フィルマ)をヴァレトが殺害したことで、すべての約定体(アバタル)は消滅した。こうして、王都の魔物被害は一気に沈静化した。


 しかし、混乱はそれだけでは終わらない。王都のあちこちで多数の人的被害や物的被害が発生していた。

 行方不明者の捜索や救助、倒壊した建物の片づけ、けが人の治療・手当など、ヴァレトたち契約者(フィルマ)も各人の能力に合わせた現場へと駆り出され、バタバタと忙しなく、馬車馬のように働く毎日を過ごすこととなった。


 それは、貧民街での激しい戦闘を潜り抜けた者たちも例外ではなかった。

 体を休める間もなく復興作業に従事することは、あるいは"彼女"にとっては良かったのかもしれない。「学年末パーティー」での騒動を、その忙しさは忘れさせてくれる……。




 復興作業に忙殺される日々も、2週間も経てば多少の空き時間を持てるようになった。

 そんなちょっとした空き時間になると、マテリは大抵ぼんやりと空を眺めていた。ヴァレトはそれを痛ましく感じながらも、かけられる言葉が見つからず、できる時には温かい茶を煎れ、主人に供していた。



 騒乱から1か月が過ぎた頃。"王都騒乱の論功行賞"を行うという知らせが届いた。それも、開催は"明日"だという。

 あまりに急な動きだが、今回の騒乱では多くの者たちが戦い、傷つき、そして手柄を挙げた。

 その論功をいつまでも先延ばしにはできないことと、戦後被害で沈む王都に、少しでも明るい話題を提供しよう、という様々な思惑からの施策であった。


 ヴァレトもマテリも、唐突に翌日行われる論功行賞、それに参加するための衣装の準備など、再びバタバタと忙しく動き回った日の夜、これまた突然に近衛兵団団長グラリス・カームスの訪問を受けた。


 ヴァレトもマテリも、ルキオニス侯爵邸の執事長からグラリス来訪を告げられ、エントランスへと駆けつけた。


「よぉ」

 焦ってやってきたマテリとヴァレトに対し、グラリスは実に砕けた挨拶を投げる。

「お越しいただき、ありがとうございます。ですが、団長自らご足労いただかなくとも、お呼びいただければお伺いいたしましたが……」

 そんなグラリスに対し、ヴァレトは少々の嫌味を籠め、慇懃に挨拶を返す。


「いやいや、聖騎士爵殿をお呼びたてするわけにもいくまいよ?」

 しかし、そんなヴァレトのちょっとした復讐などどこ吹く風で、グラリスはニヤつきながら告げる。


「聖、騎士……?」

 マテリが首をかしげながら聞き返し、

「……誰がですか?」

 ヴァレトが問いかけたグラリスは、じっとヴァレトを見た。


「え……、僕、ですか!?」

「明日の式にて、叙爵されることになる」

 驚くヴァレトに、グラリスが真剣な表情で告げる。


「僕は持ち場を離れました。それに、そもそも突入は団長とお嬢様の……」

「でも討ったのは君だろ? 信賞必罰さ。功労には報いんとな。なんせ、王都陥落の危機を救った英雄様だ」

 グラリスは、戸惑うヴァレトの肩をポンポンと叩きながら言う。


「しかし──」

「わかりました。団長自ら先触れにお越しいただき、ありがとうございます」

 更に何かを言いかけたヴァレトの言葉を止め、マテリがグラリスに礼を述べる。


「なんせ、100年以上ぶりの"聖騎士"だからな。ま、俺くらい"信用"のある人間じゃないと、おちおち先触れも任せられんのさ……。急に来て悪かったな。俺が"先触れ"だからさぁ。まさか"先触れ"の"先触れ"を出すわけにもいかなくてな」

 冗談ぽくグラリスは言い、そしてぐっとヴァレトの肩を掴む。

「受け入れきれん気持ちもわかる。が、こういう時だからこそ、"英雄"が必要だ」

「……」

 しばし肩に手を置いていたグラリスだが、ゆっくりとその手を放し、

「じゃ、また明日な。見送りはいいぜ」

 軽い調子の挨拶を告げ、帰っていった。




 グラリスが去ったのち、エントランスには静寂の空気が流れる。

「納得できませんか?」

 そんな沈黙を破り、マテリはヴァレトに問うた。

「……、もっと早くに気が付いていれば、助けられた人が大勢いたはずなんです……」

 あの魔物たちが約定体(アバタル)であると、もっと早く気が付いていれば……。そして、<黒>を使うという踏ん切りが、もっと早くできていれば……。


「……、救われた人も大勢います」

 マテリは、ヴァレトの頬に手を添え、彼の顔を見上げる。

「私も、貴方に救われました。貴方はよくやっていますよ」

「ありがとうございます……」

 そして、ヴァレトはマテリの手に触れ、そっと自分の頬から放した。


「ご心配おかけして申し訳ありません。お嬢様こそ、大変な状況なのに……」

 ヴァレトの言葉に、マテリは寂し気な微笑みを浮かべた。

「いえ、大丈夫です……。いずれは、そのような時が来る……。そんな気がしていましたから……」

「お嬢様……」

 やはりヴァレトには、そんなマテリにかけられる言葉が見つからなかった。




 かくして、王都騒乱の論功行賞が行われた。

 今回の戦いに参加した王国騎士団、近衛兵団の全兵員、そして各契約者(フィルマ)に褒賞として賞金が授与され、加えて、最も危険な任務を請け負った近衛兵団団長グラリス・カームスとマテリモーニア・レギア・ルキオニスの両名には、王国勲章が授与された。

 さらに、この戦いにおける第一功となるヴァレト・エクウェス騎士爵は、王国勲章に加え、聖騎士爵に叙爵された。


 聖騎士爵とは貴族位であれば子爵相当の一代貴族であり、「より多くの手柄、武勲を挙げた者に与えられる」と定められている。「より多く」という表現があいまいであるが、要するに、騎士爵がさらに大きな武勲を挙げた場合などに叙される爵位である。



 そして、この論功行賞の場において、国王であるエトゥソルス・レクス・ウィルゴルディから、"ある"大号令がなされた。



「今回、邪悪なる者たちの企みによって、王都は大きな災難に見舞われた。しかし、それはここにいる勇士たちの活躍により退けられ、こうして諸君らの健闘を讃える機会を得られたことは、望外の喜びである!」

 エトゥソルス王の声が謁見の間に響き、立ち並ぶ勇士たち、そして貴族の当主たちはそれに聞き入る。


「諸君らは国の宝であり、また、王国の希望である! これからもさらなる活躍を期待している!!」

 王の言葉の勢いに応じるように、勇士たちからも「わあっ!」」と鬨の声が挙がる。


 しばし、謁見の間は熱狂で盛り上がり、そして王が手をかざすことで、再び静まった。


「この度の騒乱で、王都には多くの痛みや、悲しみが齎された……。これを成したのは、魔族である」

 王の言葉を聞き、謁見の間には張り詰めた緊張感が走る。

「これまでも、たびたび魔族による悲劇は発生している。先日も、王国立学園において、魔族による襲撃があったばかりである……」

 一呼吸おいて、王は続ける。

「今回、これだけの被害を受け、私は決心した。王国はこれ以上の魔族被害を出さないため、"魔王討伐令"を発する!!」



+++++++++++++++++

<次回予告>


 なんと魔王城は海の中!

 魔王城に行くため、全員水着で集合だ!


「で、殿下……、その水着は……」

「これは王家に伝わる伝統的な水着、"ブーメラン"だぞ? そういうカルリディこそ、なんだその水着は。全身タイツか?」

「なっ! こ、これは、最新技術で作られたもので、水の抵抗を考慮し、さらに低温への対策も──」

「すみません殿下ー! 遅くなりましたー!」

「ルスフお前! その際どい★はやめろ!」

「ぎ、ギリギリだ……、なっ! 動くな! はみ出る!!」


次回:ドキッ! 野郎だらけの水着大会! ポロリもあるよ!


 (これは嘘予告です)


次回から10章開始します。

次回更新は、2/3(金)の予定です。

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