8章最終話、手負いの本体で、この攻撃は耐えられないだろ!!
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「あがぁぁぁぁぁぁ!!」
時計塔の鐘楼にマテリの絶叫が響く。
彼女は体の2か所を黒い触手で貫かれ、その触手から滲み出る毒蒸気で体の内側から蝕まれている。
いくら高速回復能力があるとはいえ、損傷が激しければ命に関わるし、なにより痛みがなくなるわけではない。
「"直接"ならよぉ、無事では済まんだろう?」
勝利を確信したインディスが満足気に呟いた直後、鐘楼の天井に白く太い糸が張り付いた。
「?」
視界の隅でそれを捉えたインディスは、糸の出所へ顔を向けた。向けてしまった。
直後、眼前には圧倒的な破壊力を伴った緑の拳が大写しとなり、そのまま顔面へと炸裂した。
「がっばぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
拳に撃ち抜かれたインディスは叩き上げられて天井に衝突し、そのまま床へと落下した。
「僕の主人にずいぶんなことをしてくれましたね」
ボロボロのマテリをその腕に抱き、怒りに満ちた顔を魔族に向けるヴァレト。
その横には、拳を振り上げた姿勢の蜘蛛拳士が控える。
「ぐはっ、やってくれたな、てめぇ……、許さねぇ」
インディスは血のにじむ口の端を拭いながら起き上がる。
「許さない? それはこちらのセリフだ!!」
インディスを拘束すべく、蜘蛛拳士がその両手から糸を放出する。が、その射線上に、プラエスィと聖母が割り込み、
「属性無効、<緑>!!」
発現したオーロラ状の膜が飛来する糸を弾き、あらぬ方向へと逸らした。
「おらぁ!」
その膜の後ろから黒い触手が4本飛び出し、蜘蛛拳士へと襲い掛かる。
蜘蛛拳士が両拳を打ち出し、迫る4本の触手を打ち払う。その隙間を縫うように、聖母の2本の刺突がヴァレトに迫る。
「SHIAAAAAAA!!」
蜘蛛拳士は拳を連続で繰り出し、聖母の刺突をも防ごうとした、が、聖母の刺突を迎え撃った拳打は、見えない力に押し返され、吸い込まれるようにヴァレトの腕にナイフが突き刺さった。
「ぐっ……」
「私の属性無効は、"攻撃"も"防御"も不能なのさ!!」
再び触手と刺突がヴァレトへ降りかかる。
「あぁぁぁぁぁぁ!!」
そのすべてを拳打のラッシュで弾き返そうとしたヴァレトだが、やはり聖母の刺突だけは止められず、マテリをその身で庇いつつヴァレト自身が身をかわして刃を避ける。
繰り返される応酬で、徐々にヴァレトの傷が増えていく。
「っ!」
弾き洩らした黒触手の触手を無理やり避けたヴァレトに、回避不能な軌道で聖母の刺突が迫る。
しかし、その刃がヴァレトへと届く寸前、半透明なシールドにより防がれた。
「色が違えば、防げますね……」
ヴァレトに抱かれていたマテリが、ゴポリと血を吐きながら呟く。
「お嬢様!」
ヴァレトとマテリを護るように、天使のフロートシールドが2枚展開される。
「確かに、"2色"同時には属性無効を張れない。が……」
プラエスィとインディスが、揃ってヴァレト達から距離をとる。
「これはどうするよ!?」
そういいながら、インディスは鐘楼の床に触手を突き刺す。
床に黒いひび割れのような染みが広がっていく。明らかに毒蒸気を吹き出す準備である。
「きゃっはっはっはっ!! 手負いの本体で、この攻撃は耐えられないだろ!!」
「ええ、そうですね。が……」
戦闘でテンションが上がったためか、下品な笑い声をあげるプラエスィに、マテリは冷たいほど冷静に言葉を返す。
マテリの様子に嫌な予感を覚えたプラエスィは、違和感に気が付いた。
「……、お前、自分の約定体をどこへやった?」
フロートシールドはあれども天使の姿が無いのだ。
「床がなければ、その能力は使えませんよね?」
マテリはプラエスィの問いかけには答えず、ただ、確認のように呟き……、
──ギシッ、ビシッ
鐘楼の床から、嫌な音が響く。
「ま、まさかてめぇ!」
インディスが叫んだ直後、鐘楼の床が崩壊した。
時計塔の内部は、周囲の壁にらせん状の階段が取り付けられているだけの中空である。つまり、鐘楼の底を抜いた彼らは、地上まで一直線に落下する。
「床下から塔の柱を破壊しやがったのか!!」
「まさか、落下のダメージでも狙うつもり!?」
瓦礫と共に落下しつつ、インディスとプラエスィが叫ぶ。
「空中なら、無防備でしょう?」
ただ1体、飛行能力を持つ天使がヴァレトとマテリを抱えて羽ばたき、落下中のインディスとプラエスィに向けて突進した。
「ヴァレト!」
マテリの呼びかけに応え、ヴァレトは蜘蛛拳士を拳闘士に戻し、
(今の煌気は4つ。それを全て注ぎ込む!)
拳闘士にありったけすべての煌気を注ぎ込み、無色の変異を行った。
「そ、その約定体、無色か!?」
天使に押し出され、ヴァレトが強拳闘士と共にプラエスィへと向けて突撃する。
「プラエスィ!!」
「あぁぁぁぁっ!!」
「SHIAAA!!」
時計塔内で複数の絶叫が響き渡る。
強拳闘士と聖母の攻撃が空中で交錯する。
ヴァレトはその身に聖母の刺突を受けながらも、強拳闘士でプラエスィを打ち据えた。
「がぼ──」
「SHIAAAAAAAAAAAAAAA!!」
プラエスィは強烈な拳打を雨のように浴びて吹き飛び、時計塔の壁面を突き破って外へと飛び出していった。
「き、貴様ぁぁぁ──」
インディスが怨嗟を吐き終わるより速く、全員が地上の床へと激突した。
一瞬の静寂、
「くっ、そがぁぁぁぁぁ!!」
それを破ったのは、床石を吹き飛ばしながら立ち上がったインディスであった。
そして、背にいる黒触手の触手を地にさし、再び毒蒸気を振りまこうと──
「させません……」
しているインディスの胸を、天使の剣が貫いた。
「ぐふっ……」
黒触手は消滅し、インディスは膝から崩れ落ちるように倒れた。
「ヴァ、ヴァレト……」
ふらつく体を押して、マテリは倒れているヴァレトの元へと向かう。
「さ、さすがです……、お嬢、様」
ヴァレトは言葉と一緒にゴポリと血を吐いた。彼は空中でプラエスィと打ち合った際、聖母に腹部を貫かれている
一時はマテリの方が重傷であったが、高速回復でほとんどの怪我は既に治癒しており、今はヴァレトの方が重傷である。
「あぁ、ヴァレト、ごめんなさい。落下の下敷きにしてしまいました」
「いえ、僕が、下へ行ったのです……、大丈夫、です」
マテリがヴァレトの横に座り、未だに血のにじむ傷口に手を当てて押さえる。
ヴァレトも、白司祭を使えば自分を癒すことができる。が、先ほど強拳闘士に全ての煌気を消費してしまったため、今はガス欠状態である。
5分程度で煌気は回復するため、その間、少しでも出血を抑える意味で、マテリは圧迫止血を行っている。
「私はその、"頑丈"ですから……。わ、私の、その、"上"に乗っても、い、良いのですよ?」
「そんな、できません……。僕の、大事な、ご主人様、ですから」
「……」
マテリは手を当てたまま、赤面してヴァレトから顔を逸らす。
「にゃぁ~。イチャイチャしてないで早く逃げないと~、時計塔、くずれるにゃよ?」
時計塔の外から、呑気な様子のアルブが声をかけてくる。
「い、いちゃいちゃなどしていません!」
ドンッと、ヴァレトの胸を叩くマテリ。そして、それに応じてゴフッと血を吐くヴァレト。
「あ、まだ、白変異、できないので、これ以上は、死ぬ……」
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<次回予告>
ついに訪れた運命の時。
「俺の力があれば、お前を★で困らせることはしない!」
「君のためなら、僕はその智で、君にどれだけでも★を捧げて見せるよ」
「俺は国中から★を集めてやる!」
「さぁ! 俺(僕)と共に!」
ヒロインの前で3人が頭を下げ、手を出して待つ。彼女の答えを……。
次回:3人同時に手を握る! バカ王子は右手、腹黒ショタは左手、脳筋は……、約定体でいいや。
(これは嘘予告です)
次回更新は、1/13(金)の予定です。




