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7章最終話、どうしよう、どうすればいいのかわかんない!

いつもご覧いただき、ありがとうございます。

7章最終話です。

「軽率な動きはするなと、申し伝えていたはずだが?」

 ここはエトゥソルス王の執務室。その室内に、部屋の主の苛立つ声が響いた。

 王の居る執務机の正面、そこには8人の契約者(フィルマ)が居た。


 8人を代表し、フィデス王太子が口を開く。

「申し訳ありません。すべての責任は俺に──」

「それで済む訳が無かろう! 加担した者、全てに処分をくださねばならぬ! お主の最大の罪は、おのれの立場を理解せずに、他の者達を巻き込んだことだ!! 王太子たるお主に頼られれば、断ることなどできぬ立場の者達をな!!」

 フィデス王太子の言葉を遮り、王は叱責を告げる。彼はそれに返す反論もなく、ただ黙ってそれを受け入れた。


「その上、団長が駆けつけなけねば、全員の命が無かったやもしれぬとも聞いている」

 さらに続く王の言葉に、全員が悔しさを滲ませる。


「自らの行いが如何なる結果を招くのか、それを良く考えることだ」

「……、はい」

 フィデス王太子は様々な感情を飲み込み、ただ素直に"はい"と答えた。


 そんな両者のやり取りを、イグノーラは空気のようになって聞いていた。背中には嫌な汗が流れていく。


(まずい。本物の乙女ゲーヒロインなら、ここで「殿下は私のために!!」とか言って割り込むんだろうけど、この空気は無理! 下手したら不敬罪になりかねない!!)

 彼女は乙女ゲームのヒロインに転生した。そのため、日ごろはヒロイン的ムーブを心掛けているが、その実、彼女の中身は平凡常識的な一般人であった。彼女の精神力では、真性ヒロインのような"天然ムーブ"を取るにも限界があった。



「さて、諸君らの沙汰だが……」

 厳めしい雰囲気のまま、エトゥソルス王は告げる。


「確たる証拠もなしに公爵邸を襲撃し、そのために近衛兵団が動くこととなり、国家最大戦力である近衛団長をも動員させた。多数のけが人を出し、死者が出なかったことは奇跡であるといえる」

 全員が無言で、王の言葉を聞く。


「フィデス・レギア・ウィルゴルディ、ルスフ・レドウィケス、カルリディ・カムスブルエ、ラクトゥス・ビケグレオス、マテリモーニア・レギア・ルキオニス、ヒストリア・ヴィケコム、ヴァレト・エクウェス、以上7名に沙汰を下す。全員、学園を退学処分とし、王太子については継承権をはく奪……」

「……っ」

 誰となく、息をのむ音がする。

「なっ!」

 これまで黙っていたイグノーラも一瞬声を上げた。が、王とその横に控える側近に睨まれ、再び黙り込んだ。


「ヴァレト・エクウェスについては、騎士の爵位はく奪」

 それをヴァレトは無言で聞いていたが、マテリが顔色を変えた。


「7名全員は近衛騎士団の所属とし、一兵卒として勤めることを申し付ける」

 エトゥソルス王の言葉が止まり、室内に重苦しい空気が漂う。


「……、おっと、功績を加味しておらなんだな」

 そんな重苦しい空気を和ませるように、"うっかり"といった様子でエトゥソルス王がさらに続ける。


「近衛兵団の助力があったとはいえ、王家転覆を目論む公爵の反乱を未然に防ぎ、反逆の契約者3名を捕縛した。加えて、誘拐された令嬢を救出した功をもって、今回の処罰との相殺とする」

 マテリとイグノーラが、目に見えてホッとした様子でため息を吐いた。


「が、」

 王の言葉はまだ終わっていなかった。


「夜間に学園の寮を抜け出し、王都内で問題を起こしたということで、学園からは2週間の停学とのことだ。皆、重々反省するように」

 ニヤリと笑う王に、全員は直立不動のまま、

「はっ!」

 と、しっかり答えたのだった。


 一旦治癒したとはいえ、全員が負傷し、血を失いすぎた者もいる。何より、全員が疲労困憊であった。

 2週間の停学は、大人たちの「しっかり休め」という、ある意味の気遣いであった。



****************



 救助された側であったため、停学を免れたイグノーラは、1人、学園の庭園にあるベンチに座っていた。


 彼女は、常日頃からフィデス王太子やカルリディなどの攻略対象たちとばかり一緒にいたため、それ以外の友人が居なかった。

 そんな彼らが揃って停学中の今、当然の帰結として学園内で孤独であった。

 しかし、彼女の頭を悩ませるのは、そんな些末な問題ではなかった。


(どうしよう、どのあたりのシナリオなのか全くわからない! 攫われたヒロインを助けに来るのは攻略対象の誰かでしょ!? それなのに、悪役令嬢やその取り巻きまで来るって、おかしくない!?)

 爪を噛み、焦った様子で黙考するイグノーラ。


(どうにかしてリカバらないと……)

 彼女は未だにシナリオ通りの展開で進めることを諦めてはいなかった。

 その点、同じく乙女ゲー知識を持つ転生者であるリアはイグノーラに比べて俯瞰的な立場であるためか、シナリオとの乖離の酷い状況をリカバリーするどころか、ゲーム知識を利用することすら放棄しつつある。

 

(私はフィデスルートの王妃エンドに進んでたはず……だよね? くそっ! なんでメニュー画面が無いんだよ! 自分のステや進捗の確認ができないじゃない!)

 この世界は分岐の決まったゲームではなく、既に現実として存在している。そのため、ゲームではありえないような、数多の行動や、数多の選択を取ることができる。できてしまう。

 そう、ゲームのシナリオに沿うこともできたであろうが、沿わないという自由も発生しているのだ。


 だから、イグノーラも、心のまま、自分らしく生きる選択肢が存在していた。しかし、幸か不幸か、彼女はその"ゲーム"を良く知っていた。熟知していたと言ってもいい。それゆえに、逆にその"ゲーム"に準備された道"以外"を選ぶという思考を放棄してしまっていた。


(どうしよう、どうすればいいのかわかんない!)



 ──陥れればいい



「……、そっか、悪役令嬢に退場してもらえばいいんだ」

 その内なる声は彼女には聞こえていない。が、彼女の思考は明らかにそれに引きずられていた。


「悪役令嬢が婚約破棄されれば、私はハッピーエンドを迎えられる。なら、冤罪でもなんでも擦り付けて、とにかく悪役令嬢には退場してもらわなきゃ……」

 物騒な言葉を零しながら、その後もイグノーラはブツブツと独り言を呟く。


「にゃ~ん」

 ベンチに腰かけたまま額に手を当て、考えこんでいたイグノーラの股下から、猫が顔を出した。

「あら? どこの子かな?」

 イグノーラは猫の興味を引くよう、手を地面近くに下ろし、指をすりすりと擦り合わせてみる。が、猫はそれに見向きもせず、プイっとそっぽを向いて走り去っていった。

「む、かわいげのない猫……、ん?」

 走り去る猫の後ろ姿に、何か既視感を覚えたイグノーラ。


「……、気のせいか」

 しかし、その既視感の正体は掴めず、首をかしげるだけであった。



+++++++++++++++++

<次回予告>


「その巨大な★が、18日後には地上に!」

「あの規模では、どこに落ちても人類は助からない!」

「僕たちが行きます」

 

 世界最後の日

 命運はたった8人に託された


次回:ハルマゲドン「すべての土地を破壊する。」


 (これは嘘予告です)




次回から8章開始です。

次回更新は、年明け1/2(月)の予定です。

皆さま良いお年を。

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