7-5、"巫女"、だと!?
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「き、貴様は、王国最強……」
ドルクス公爵はテラスの手すりを握りしめ、恐れや怒り、苛立ちをない交ぜにした表情を近衛団長グラリスに向ける。
「皆さん、随分とやられちまったみたいですね」
「グラリス……、"王国"は動けないのではなかったのか?」
倒れているマテリ達を前に呑気なグラリスに対し、フィデス王太子が嫌味のように問う。
「ええ、動けませんよ? でも、ドルクス公爵邸で"狼藉者"が暴れているというので、近衛兵団が緊急出動したんですよ」
にやにやしているグラリスに、フィデスは苦虫を噛み潰したような表情を向ける。
「俺たちは、囮だったのか……」
「まさかとんでもない。陛下がおっしゃった"動くな"は本気ですぜ。これは完全に、殿下たちの"先走り"です。まぁ、結果的に好都合にはなりましたがね? 事が終わったら、陛下からのきっびしぃぃぃい、お叱りを覚悟しといてください、殿下」
「……」
グラリスの言葉に、フィデス王太子は無言で押し黙った。
「はっ! "王国最強"と言われても、たかが1人! 好都合なのはこちらの方だ! ここで王国の最大戦力も討ち取ってくれる!」
公爵の背後、屍術師が髑髏の口をカタカタと鳴らしながら邪気を放つ。
巨像や狙撃手に債務者だけでなく、白馬騎士や炎ゴーレム、天使までもが出現する。
「ただの1人では屍術師の能力には歯が立つまい!」
「おぉぅ、こりゃ確かに少々手こずりそうだ」
余裕を見せるグラリスの左右から債務者が2体襲い掛かる。債務者たちは、グラリスに掴みかかるように飛び掛かった。が、彼は、それを足運びだけで華麗に回避し──
「動きの制御が甘いな」
債務者の1体、その腹にグラリスの右拳がめり込む。債務者が分解するように消滅する。と同時に、グラリスの右拳に装着している手甲、そこに並ぶ宝珠の1つに光が灯った。
「ば、ばかな! 素手で約定体を破壊するだと!?」
公爵がテラスから覗き込み、グラリスの戦いぶりに驚愕する。
「いやいや、素手じゃないんで。これが俺の約定体なんでね」
両手に装着した手甲を見せびらかすように、グラリスはひらひらと手を振る。
その手甲には左右それぞれに3つずつ、合計6つの宝珠があり、その内4つに光が灯っている。
「ま、細かい能力までは──」
背後から突進してくる白馬騎士の刺突を左手甲で弾き、
「解説しないけどね!」
右手甲の宝珠、そのうち2つの光が弾けて広がり、手甲全体が光に覆われる。グラリスはその右拳で白馬騎士に向けて突きを放つ。
盾でグラリスの突きを防ぐ白馬騎士。だが、突きは盾を壊して貫通し、そのまま白馬騎士のボディをぶち抜いた。
白馬騎士が粒子となって消えていく。
続けて襲い来る約定体も、次々とグラリスによって破壊されていく。それはまるで演舞のようだった。
「ば、化け物め……」
ドルクス公爵は、テラスの手すりを握りつぶすほどに握りしめながら呟く。
結局、20体近くいた約定体は、全てグラリスにより殲滅された。
「まだやりますかい?」
グラリスは煽るように、ドルクス公爵へ挑発の言葉を投げる。
「ま、まだだ! まだ終わらん!! お前たちも約定体を呼び出せ!!」
屍術師の能力により、再び多数の約定体が出現する。
ついに巨像は計5体、狙撃手や債務者も2~3体が並び、総数は30体に迫ろうとしていた。
「はっはっはっはっ! どれだけ高い戦闘能力があろうと、人の身で戦う以上は無限には戦えまい! 貴様が力尽きるまで、何度でも屍術師の能力で約定体を呼び出してくれるわ!」
「ありゃりゃ、こりゃ、少々キツイかな……」
直後、グラリスの背後から飛び上がる2体の天使。
「疾っ!」
彼は素早く振り返り、2体を迎撃し──
しかし、1体の天使は、もう1体によって貫かれていた。
「おっと、"本物"でしたかい」
グラリスの言葉に応えるかのように、マテリが立ち上がる。
同時に、白馬騎士が、炎ゴーレムが、黒衣収穫人が、時魔術師が出現し、周囲の敵約定体を攻撃し始めた。
「なっ!? 貴様ら瀕死だったはず……、はっ!」
庭園を見渡したドルクス公爵は、マテリ達復活の原因を発見した。
ヴァレトは、自身が瀕死の状態にもかかわらず白司祭を呼び出し、地面に光の陣を展開していた。
光の陣は、陣内に立つ味方と、その約定体を緩やかに癒している。
「あのガキっ! やはり厄介な!!」
「はっはっ! 殿下たち、まだまだイケそうですなぁ」
その様子を見た公爵は苦々しい表情で悪態を吐き、グラリスは愉快げに笑う。
「こりゃ、おっちゃんも負けてられねぇな」
グラリスは視線を上げる。5体の巨像が一斉に倒れこもうとしていた。
彼の手甲、そこに灯っていた6つの宝珠全てが弾ける。と同時に、右手甲の手のひら部分にエネルギーが収束していく。
やがて、凝縮された光の球となったソレを、グラリスは手をかざして巨像へと向けた。
球から光が溢れる。その光はレーザーとなり、巨像を貫通する。
貫かれた1体の巨像は、風の前の塵のように消滅した。
「そぉぉぉぉらぁぁぁぁぁぁ!!!」
グラリスは景気よく掛け声をかけ、そのレーザー光線を横に薙ぎ払う。
横薙ぎにされたレーザー光により、巨像が次々と上下に分断され、塵と消えていく。
「……」
そのあまりに圧倒的な光景に、ドルクス公爵は口を開けたまま、巨像達の消滅する様を見上げて絶句している。
グラリスは止まらない。公爵が隙を見せた一瞬に、動きの悪くなった約定体達の合間を独特の足運びですり抜けていく。
直後、次々と約定体が粉砕され、再び彼の手甲の宝珠が灯る。
「なっ!」
そして、いつの間にか巨像の本体である、公爵私設騎士団団長リオリタスに接近していた。
「お、おのれ!」
抜剣し、グラリスに斬りかかるリオリタス。しかし、斬撃はくるりと躱され、──宝珠の光が1つ弾ける── カウンター気味に両手突きを叩き込まれ、"く"の字になって吹き飛んだ。
壁にめり込んだリオリタスは、白目を剥いていた。
「あっ! な、なんだと!?」
次に公爵が我に返った時には、大量に呼び出した約定体達は全滅していた。5分も持たずに……。
「ば、ばかなぁ! 私の力は無敵のはず! も、もう一度……」
公爵が屍術師に能力を発動させようとする。が、屍術師はそれに応えない。
「く、くそっ! 煌気切れだと!?」
公爵が叫んだ直後、テラスへと飛来した天使の剣で、屍術師が貫かれた。
「ひ、ひぃぃぃっ!」
屍術師の消滅を見届けることなく、ドルクス公爵はテラスから転がるように2階の室内へと逃げ込む。
「そうだ、"巫女"だ、"巫女"が居る! "巫女"ならば無尽蔵な瑪那を生み出せる!」
ドルクス公爵は叫びながら、転がり落ちるように階段を駆け下りる。地下牢へ向けて……。
その円環は正気を宿すの本体と律儀な債務者の本体である魔族の男2名は、公爵が叫んだ"ある言葉"を耳にし、動きを止めていた。
「"巫女"、だと!?」
魔族たちの表情には、怒りが現れていた。
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<情報開示>
その手に劫火を
・3等級(顕現に必要な煌気は3ポイント)
・属性<無色>
・攻撃力:高 防御力:高 耐久性:高
・能力:その手に劫火をの装備者が、約定体もしくは本体にダメージを与えた場合、宝珠の1つに光を灯す。宝珠は最大6つである。
・能力:[宝珠の光を1つ消費]:以下の効果のうち、1つを選んで実行する。この効果では、宝珠は灯らない。
●次の一撃の攻撃力を30%増加する。
●エネルギー波で攻撃する。この攻撃は遠距離であり、複数の対象を貫通する。
●対象の約定体1体を10秒間弱体化する。
●本体を僅かに回復する。
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<次回予告>
ついに公爵を追い詰めた勇者たち。しかし……
「はっはっはっはっ! 残念だったな。まだ私は変身を3つ残している!」
「な、なんだと!?」
「見せてほしかったら★を投げるが良い!!」
「別に見たくはないのだが……」
「そうですね」
「え? 俺は見てみたいぜ!?」
「これだから脳筋は……」
「あぁ!?」
「小生も見たいような……、いや、やっぱりやめとこ」
「あ……、俺が……」
「その、変身、させていただいてもよろしいでしょうか? あ、★はいいんで」
「★はもらっとくべきでしょう!? 小生は欲しい!」
「いや、お願いの仕方があるでしょう」
次回:★をお願いします! 小生のために!!
(これは嘘予告です。あと、公爵は変身しません)
次回更新は、12/28(水)の予定です。




