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6-6、もっと強力な約定体になるから、問題ないな

いつもご覧いただき、ありがとうございます。

 脳筋枠のルスフは、2つ目のチェックポイントへ向かっていた。


 ルスフのチームは、彼と令嬢2名という構成である。彼女たちはオリエンテーリングの開始早々、積極的にルスフに話しかけ、自分たちをアピールしていた。

 しかし、ルスフは男女関係には真面目であった。彼のとっての"一番"はイグノーラであるため、女性に話しかけられて嬉しい気持ちはありつつも、どこか線を引いて対応していた。

 そんな彼の様子を当然彼女らも察した。そのため20分ほどで猛アピールは止み、今はむしろ会話が無い状態であった。


(なんか、間違えたかな……)

 自分の対応に何か問題があったのか……、このまま丸1日無言はキツイ。

 あまり考えこまないタチの彼だが、さすがにこの状況を打開する方法を検討し始め──

「?」

 顔を上げたルスフの視界は、見慣れぬ男の姿を捉えた。

 明らかに学生ではない。冒険者風の衣服をまとう姿は、学園関係者とも思えない。


 脳筋のルスフであっても、いや、ルスフだからこそ、その男が"敵意"を持って近づいてくるのが分かった。

 直後、その男は約定体(アバタル)を現出させた。


 その約定体(アバタル)は奇妙だった。お皿のような小さな円盤型をしており、男の頭上にふわふわと浮かんでいるのだ。



「2人とも、離れていろ」

 ルスフの警戒を耳にした2人の令嬢は、正面から迫る男の異常さを即座に理解、迷うことなく踵を返して逃亡した。


「!!」

 一瞬、男が逃げた令嬢たちに何かを仕掛けてくるか?とルスフは警戒した。が、男の視線は彼にのみ向けられており、それが杞憂だとルスフは安心した。

 むしろ、全くためらいなく逃亡した令嬢に、ルスフが驚いたくらいである。


「狙いは俺か……、真正面から来るとは、いい度胸だな!」

 敵が正面から自分に挑んでくる状況に、ルスフは闘志を燃やす。それに呼応するように、彼の体から赤いオーラが吹き上がり、赤熱したゴーレムが姿を現した。



****************



「はぁぁっ!」

 フィデス王太子の約定体(アバタル)である白馬騎士(エクウィテス)が、刺突攻撃を放つ。しかし、債務者(エッフィ)はそれを左手で受け止め、右手から同質の攻撃が打ち返す。

 白馬騎士(エクウィテス)は反撃を立てで受け止めるが、何度も反撃を防御した盾はひどく削り取られ、すでに崩壊寸前である。


「チィッ! きりがない!!」

 イグノーラを助けに行きたいのに行けない。そして、森の中であるため白馬騎士(エクウィテス)は満足に駆けられず、得意の騎馬突撃もできない。思い通りにならない苛立ちから、フィデス王太子の攻撃は精彩を欠いていた。


 速度の乗らない騎馬突撃、それに対し、債務者(エッフィ)が手近な木に右手を当てると、左手から同じ木が出現する。

「ぐおっ!」

 突撃線上に木が出現したことで白馬騎士(エクウィテス)がよろける。そこへ、さらにもう1本の木が出現し、白馬騎士(エクウィテス)に向かって倒れてくる。


「おらぁ!」

 ランスで木を迎え撃つ白馬騎士(エクウィテス)。が、ランスが突き刺さる前に、木は消滅した。

「なにっ!?」

 一瞬の隙、その間に債務者(エッフィ)が王太子の間近へ迫っていた。

 債務者(エッフィ)は足元にある大きな石に手を付き、その石をコピーして王太子に向けて投げつける。

「そんなもの!」

 王太子は両手を交差してガード、自身の障壁(クラテス)でそれを堪える。が、

「おご……」

 そのガードの下、王太子の腹に債務者(エッフィ)の拳が打ち込まれていた。


「殿下!!」

 マテリの天使(アマレ)が白銀の剣を振り下ろし、時魔術師(マグス)は杖でそれを受け止める。

 時魔術師(マグス)はパワー負けし、勢いに弾かれ後ずさる。


「チッ、能力の燃費が悪すぎる……」

 時魔術師(マグス)を操作している黒スーツの魔族が愚痴をこぼす。

 時魔術師(マグス)の時間停止による攻撃、それをマテリは既に数回受けていた。しかし、天使(アマレ)もマテリ自身も耐久性が高いため、時魔術師(マグス)による攻撃程度では致命傷どころか、大した負傷すらも負っていなかった。


「RAFAAAAAAAA!!!」

 ついに天使(アマレ)の一閃が時魔術師(マグス)を捉える。時魔術師(マグス)は上下に両断され、崩れるように消えていった。


 消えた時魔術師(マグス)の向こう側、黒スーツの魔族は、しかし全く焦りを見せていなかった。

「まぁ、もっと強力な約定体(アバタル)になるから、問題ないな」

 魔族が告げた直後、天使(アマレ)のシールドバッシュがマテリを直撃する。

「がはっ!」

 障壁(クラテス)を貫通し、衝撃がマテリの体を駆け抜ける。吹き飛ばされたマテリは、木に叩きつけられた。

 喉の奥から熱いものが込み上げ、口から血潮があふれ出した。


「な、にが……」

 マテリが天使(アマレ)に視線を向けるも、いつものような一体感や操作感が無い。

 その上、天使(アマレ)の効果による本体の治癒能力向上、つまりマテリの高い自己治癒機能も停止しており、受けた負傷が癒える様子もない。


 黒スーツの魔族が、天使(アマレ)の横に立つ。

「喜べ、殺しはしない。約定体(アバタル)が消えるからな」

 マテリを見下ろし薄っすらと笑みを浮かべた魔族は、そういって踵を返した。

 天使(アマレ)が白い翼を羽ばたき飛翔する。今だ一進一退の攻防を繰り返すフィデス王太子へ向けて。


「でん──ぐはっ」

 マテリはフィデスに警告を発しようとしたが声が出ず、出たのは喀血のみであった。



 何度目かの刺突攻撃を白馬騎士(エクウィテス)が放つ。

「何度やっても同じだ!」

 債務者(エッフィ)がそれを左手で受け止め、右手から同じ刺突が反撃として打ち返される。

 白馬騎士(エクウィテス)はそれを盾で受け止める……、と見せかけ、盾も騎馬も捨てて回避した。

(連続ならどうだ!!)

 今だ反撃姿勢のままである債務者(エッフィ)に対し、騎馬から降りた騎士がランスを突き出す。その騎士が背後から白銀の刃に貫かれた。


「な、なにぃ!?」

 消滅する白馬騎士(エクウィテス)。消えた騎士の背後には、天使(アマレ)が居た。

「マテリ貴様!?」

 マテリの裏切りに驚愕したフィデスは、本体であるマテリに視線を向けた。が、彼女は喀血し、何かを訴えるような表情をフィデスに向けているだけであった。


(いや、違う! 約定体(アバタル)のコントロールを奪う能力!?)

 そこで初めて敵の能力を察したフィデス。よく見れば、天使(アマレ)の頭部には見慣れぬ円環が装着されていた。

(確かに、あれは時魔術師(マグス)にも──)

 フィデスの分析は、迫る天使(アマレ)により中断された。


「まだだ!」

 フィデスは再び煌気(オド)を費やして白馬騎士(エクウィテス)を呼び出し、天使(アマレ)の斬撃を受け止める。が、債務者(エッフィ)と2体の攻撃により、瞬く間に破壊された。

「っ!」

「でん──」

 天使(アマレ)の凶刃がフィデスに迫る。



 が、白銀の剣は、フィデスに振り下ろされる直前でその動きを止めた。いや、止められた。切っ先に蜘蛛の糸が巻き付き、背後の木と繋がっていた。

「ヴァレ──」

 フィデスと天使(アマレ)の間に、<緑>に変異した蜘蛛拳士(ロレム<緑>)が割り込む。

 天使(アマレ)は即座に糸を無理やり引きちぎり、標的を蜘蛛拳士(ロレム<緑>)に変える。蜘蛛拳士(ロレム<緑>)もそれを迎え撃つ姿勢を見せる。

「だめぇぇぇぇぇぇぇ!」

 ヴァレトを止めるべく、血を吐きながらマテリが絶叫する。天使(アマレ)を破壊してしまえば、次は蜘蛛拳士(ロレム<緑>)が──


「問題ありません」

 天使(アマレ)の剣が蜘蛛拳士(ロレム<緑>)へと振り下ろされる直前、天使(アマレ)頭部の円環がはじけて消えた。

「……破滅の魔眼」

 遅れて追いついたラクティスの黒衣収穫人(グルム)が、両眼に怪しげな光を灯していた。


 マテリに操作が戻った天使(アマレ)は、即座に背後を薙ぎ払うように一閃する。

「がっ!」

 その不意打ちの一刀により、債務者(エッフィ)が胴を両断されて消滅。直後、天使(アマレ)の影から蜘蛛拳士(ロレム<緑>)が飛び出した。


「RAFAAAAAAAA!!!」

「SHIAAAAAAA!!」

 天使(アマレ)と、蜘蛛拳士(ロレム<緑>)が、同時にラッシュ攻撃を叩き込む。 

 

 円環の本体である黒スーツの魔族は、蜘蛛拳士(ロレム<緑>)に拳打の雨を叩き込まれ、吹き飛びながら意識を失った。

 債務者(エッフィ)の本体である緑スーツの魔族は、天使(アマレ)に幾筋もの斬撃を浴びせられ、止めのシールドバッシュで吹き飛んだ。



+++++++++++++++++

<次回予告>


「これはまずい! とてもまずいです!」

「そうですね。かなりピンチでしたね」

「違う! そうじゃない!」

「え?」

「小生が出てない! これでは、★がもらえません!」

「え?」

「え?」


 次回:1話丸ごとヒストリア祭り!


 (これは嘘予告です)


「え? 嘘ってことは、小生出てこないってこと!? いいの? それ許されるの?」

「今回も出てないじゃないですか」

「シャラーップ!!」


次回更新は、12/14(水)の予定です。

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