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6-2、この学園、本当に勉強の時間無いのですね……

いつもご覧いただき、ありがとうございます。

 とある学園での一日。



 ──朝



 5時半。ヴァレトは男子寮でも最も早く起床する。

 彼は起床早々に、学園内の早朝ランニングに出かける。木剣を佩いた状態で、ヴァレトは広い学園の遊歩道をぐるりと3周する。

 30分少々のランニングの後、男子寮裏手にて木剣による素振りと、拳闘士(ロレム)を呼び出しての戦闘イメージトレーニングを行う。

 これら、一連の早朝トレーニングを、彼は12歳のころから続けている。以前、マテリの兄であるオウェルに教えを請うた際、彼から指導された訓練である。


 1時間ほどの訓練を終えた6時半。水場にて軽く汗を洗い流して衣服を着替え、ヴァレトは女子寮前へマテリの出迎えに向かう。


 7時頃。マテリは"大抵"この時間に女子寮から出てくる。多少前後する場合があるのは、リアの寝起きにムラがあるためである。

 本日のリアは大変寝起きが悪いようで、女子寮から出てきた際にもボケーッとしており、制服のブレザーはボタンが掛け違っていた。


 7時半。全学生が利用できる共有の食堂にて朝食。

 食堂はビュッフェスタイルであり、各種パンや、ベーコン、ハム、スクランブルエッグなど、前世でも見かけたことのあるメニューが多数見受けられる。このあたりにも、"乙女ゲーム感"を覚えずにはいられない。

 マテリとヴァレトは適度な量の朝食をいただき、ボケッとしているリアには深緑色の野菜ドリンクを口に突っ込んでおく。


「うげっ、まずーい!」

 リアの寝起きが悪い朝は、大抵ここで本格的に覚醒することになる。



 ──午前



 本日、彼らの午前の活動は"茶道部"である。

 "茶道"と言っても、畳の茶室に茶釜、茶碗に侘び寂び(わびさび)、"結構なお手前"の"ソレ"ではなく、前世で言えば、イングリッシュアフタヌーンティー的な風情のモノである。


 この学園では、茶会やパーティーなどの社交イベントを頻繁に行う。その練習や訓練のために、身内や近しい間柄の者たちで"茶道部"と称した部活動を行うことが多い。

 マテリの近しい者と言えば、ヴァレトとリアである。結局、3人で茶道部を形成しているのだが、やっていることは茶会の練習。つまるところ結局は茶会である。

 本日は午後に茶会を行う予定であるため、その予行の意味もかねているが、結局茶会である。


 なお、猫のアルブは"おやつにありつける"という理由で、毎回、必ず茶会には参加している。午前のおやつはマカロンであった。



 ──昼



 朝食同様、共有の食堂にて昼食。

 昼食は、複数あるセットメニューからの選択である。メニューは日によって変わるが、本日のセットメニューは、魚のムニエル、子羊のソテー、鶏のグリル、メンチカツ、カレーうどんの5種である。


「カレーうどん! これ一択っしょ!!」

 制服に飛び散ることも厭わず、リアはカレーうどんを平らげた。



 ──午後



「ほ、本日は、お、お、お招きいただき、ありがとう、ございまふ」

 3人目の騎士爵であるペラム・マギクエスが、噛みながらマテリに挨拶を告げた。

 本日午後は、マテリ主催のお茶会である。参加者はリア、ぺラム他、同じく新入生の女子3名、計6名での開催である。なお、ヴァレトはマテリの従者として、茶会の給仕を勤める。


 茶会での話題は、「誰々のお茶会に参加した」であるとか、婚約者の居ない女子は、マテリに「どなたか良い殿方をご存じありませんか?」など、表向きはにこやかに会話している。

 ヴァレトはそんな中、終始無言で給仕を続けた。口を開いてしまえば噴き出してしまいそうだったからだ。

 ご令嬢たちは茶を楽しみつつも、チラチラととある場所へと頻繁に視線を送っているのだ。


(カレーだわ)

(カレーね)

(跳ねてる……)


 リアの白いブラウスに飛んだカレー染みが気になって仕方がない一同であった。


 なお、猫のアルブは、ここでもおやつにありつくため茶会にこっそり参加していた。午後のおやつはベイクドチーズケーキであった。



 ──夕方



 茶会終了後、ヴァレトはマテリ達を女子寮前へと送っていく。女子寮まであと数m。


「今日、一日お茶しかしてないですね……。この学園、本当に勉強の時間無いのですね……」

「そういう場所なんだよ……」

 ヴァレトの呟きに、リアが冷静なツッコミを入れた。


「でも、明日はオリエンテーリングがありますよ」

 マテリは2人に振り返り、少し楽しそうに言う。



 3人1組でチームを組み、学園内に設定されたチェックポイントを探索し、ゴールへ向かうというイベントである。

 チームは、可能な限り同級生内での派閥や親しい間柄の者たちを"分ける"ように編成される。更に、魔物が放たれている"学園の森"まで含めた全敷地をもって行うイベントであるため、場合によっては、魔物との戦闘も発生しうる。


 これも、結局"社交"のイベントである。日頃交流の無い者同士で協力し合い、時には魔物との闘いを乗り越え、新たな出会いや人脈を作らせようというのである。

 "慣れないメンバーで戦闘もありうる"という冒険イベントに、マテリの冒険心が刺激されているらしく、彼女はこのイベントを楽しみにしていた。



「チーム編成はまだわかりませんが、きっと私たち3人は、別チームになってしまうでしょう……、しかし! どのような困難でも乗り越え、ぜひ、優勝しましょう!」

 マテリはテンション上げ気味で、握りこぶしを作る。

「はい、がんばりましょう」

 彼女の発言にある矛盾点には気が付きつつも、ヴァレトは全面的に同意する。彼はマテリ第一主義なのである。


「あのー、チーム別になったら、一緒に優勝はできないのでは?」

 あえて言わなかった部分にツッコミを入れるリア。3人は、一瞬静止した。



「負けませんよ! 優勝は私です!」

 気を取り直し、マテリは2人に宣戦を布告した。

「はい、胸をお借りします」

 ヴァレトが頭を下げ、マテリの布告を受け止める。が、マテリは「む、胸!?」とつぶやき、自分の胸を制服の上から押さえている。


「いや、ソッチの胸ちゃいます。"まいまいたん"の胸借りられるなら、借りますけども、ぐへへ……、ぐぼぁ!」

 手をワキワキしながらマテリににじり寄ったリアは白い糸に吹き飛ばされ、ミノムシのように木に吊るされた。



+++++++++++++++++

<次回予告>


 これは、あったかもしれない職員たちのやり取り。


「た、大変です!」

「どうした慌てて」

「い、一年生が……、オ、オリエンテーリングを行う時期です!!」

「一年生がオリエンテーリング……、まさか!!」

「そうですよ! あの"怪物たち"が"学園の森"へ入り込みます!」

「い、急いで魔物を救い出せ! 狩りつくされるぞ!!」


 次回:職員全員集合! オールナイトオリエンテーリング準備!!


 (これは嘘予告です)



「小生まで怪物扱いとは心外な!」

「へぇ~、そうですか」

「!?」

 簀巻きで朝まで吊り下げられるリア。

次回更新は、12/5(月)の予定です。

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