5-4、お前が……壊したんだ……
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「顕現せよ、紺碧の潮汐は星霜」
カルリディの体から青いオーラがあふれ出し、それが寄り集まって青いフード付きローブを纏った人型が出現した。その手には時計を模った杖を持っている。
「むがーっ!」
(やばい! たしかコイツの能力は"時間停止"!! 時止め能力者に鎧だけで勝負って、無理ゲーすぎない!? それも縛られてるし!!)
リアはもがきながら無敵鎧を纏う。
「よし! これで、拘束だけは解け……」
鎧を纏ったことで猿轡が外れ、声を発することはできるようになったリア。しかし、
「糸が外れてねぇ!!」
リアの予定では、鎧を着込んだことで糸が引きちぎれる、もしくは鎧の出現そのものにより糸が切断されるはずだった。しかし、糸は想像以上の柔軟性を有しており、伸張した糸は鎧の上からリアを拘束し続けていた。
「無駄に高性能すぎ!!」
「さぁ、時魔術師。ボクらだけの時間だ……」
リアの抵抗空しく、カルリディの言葉と共に杖にあしらわれた時計の針が高速回転を始め……、直後、ガキーンという硬質な音が響き、時計の針が停止した。
世界の全てが停止した。あれほど騒がしかったリアも完全に静止し、言葉一つすら発することはない。
「ふはっ! これが僕の能力だ!」
歓喜の声を上げるカルリディの横で時魔術師が杖を構える。その先端は静止しているリアに向けられていた。
「この世界ではボクだけが動ける!」
時魔術師が杖を突き出し、リアの無敵鎧へと命中する。
「誰も抗うことはできない! 死んだことも気が付かない!」
ひたすらに、無敵鎧へと杖先を打ち込む時魔術師。
一心不乱にリアを打ち据え続けたカルリディだったが、
「あぁ、そうか。聞こえないんだったね」
冷静さを取り戻し、そして指を鳴らした。その瞬間、静止していた時が再び刻み始めた。
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「俺の黒衣収穫人の魔眼は……、相手に"恐怖"を与える。人も約定体もだ……。竦み、動けなくなる……」
大鎌を振り上げた黒衣収穫人とラクティスは、身動きできないヴァレトへと近づく。
「契約者なら……、死にはしない……、だろう」
そして振り下ろされる大鎌は、しかしヴァレトが無詠唱で呼び出した拳闘士によって受け止められた。
「そうか、<無色>だったな……、はぁ、面倒だな……。面倒だが、仕方ない……」
黒衣収穫人が大鎌を押し込む、ジリジリとその先端が拳闘士に近づき、
「力押しだ……」
その切っ先は拳闘士の肩へと刺さっていく。
(拳闘士のままではパワー負けする!!)
拳闘士が地面の石畳を踏み抜き粉砕し、それを蹴り上げて黒衣収穫人の視線を切る。
ラクティスは腕で顔をかばい、打ち上げられた砂と石を躱した。そして腕を退けた時には、既にヴァレトの姿が無かった。
「逃げた……?」
いや、遊歩道から外れ、何本もの立木が植えられている林へと逃げ込む後ろ姿が微かに見えた。
ラクティスは逃げたヴァレトを追う。ヴァレトは、立木の影から影を移動し、黒衣収穫人の視線に捕まらないように林の中を逃げ続ける。そして1つの建物へと駆けこんだ。
「ここは……」
そこは窓もないような掘立小屋である。恐らくは、林の整備用具を格納してある倉庫であろう。
ラクティスは警戒しつつ、黒衣収穫人の大鎌を使って倉庫の扉を開いた。
ギギィという建付けの悪い音を立てつつ、木製の扉が開く。倉庫内はヴァレトの蜘蛛拳士により、蜘蛛の巣だらけになっていた。
入口に立ち、中の気配を探るラクティス。しかし、中からは物音1つしない。
「入ってこい、ということか……」
追う側であるラクティスは中に入らざるを得ない。彼は黒衣収穫人を先に進ませつつ、慎重に倉庫内へと足を踏み入れた。直後、彼の背後で扉が閉まる。倉庫内が完全に闇に閉ざされる。
「確かに、見えなければ……、魔眼も効果は無い。が……」
黒衣収穫人の大鎌にあるカンテラが光を放ち、ラクティスの周囲を明るく照らした。改めて倉庫内が蜘蛛の巣だらけであることがよくわかる。
「そんな弱点は、黒衣収穫人には無い」
その時、ラクティスの背後で床の軋む音が鳴る。黒衣収穫人がノールックで大鎌を振りぬく。しかし、切り裂いたのは木製の柱だった。
ラクティスは再び集中し、周囲の音や気配に意識を向ける。
右斜め前方に何かの落下音、瞬間、そちらへ視線を向けるラクティスと黒衣収穫人。
直後、ラクティスの背後へとヴァレトと蜘蛛拳士が襲い掛かった。完全に死角であるラクティスの背後、そこへ迫る蜘蛛拳士の拳。しかし、黒衣収穫人の頭部が180度ぐるりと回転し、真後ろのヴァレト達を視線に収めた。
「なっ!!」
畏怖の視線により、ヴァレトと蜘蛛拳士が硬直する。
「暗晦は無慈悲の刃に、死角は無い……」
「ぐっ……」
ヴァレトは硬直したまま呻く。その様子を視線で捉えている黒衣収穫人は、首をそのままに体だけをぐるりと回転させた。
「せっかくだ……、俺のもう1つの"眼"を見せてやる」
黒衣収穫人の両眼が赤黒い光を宿す。
「破滅の魔眼……」
その視線に射抜かれた蜘蛛拳士の全身にビシリッと亀裂が生じ、次の瞬間爆散するように消え去った。
「あらゆる約定体を破壊する。<黒>か<無色>以外ならばな……」
蜘蛛拳士が破壊されたことで、室内に張り巡らされていた蜘蛛の巣も崩壊し、消えていく。
「さて、本体には……、この大鎌を……」
黒衣収穫人が再び大鎌を振り上げ、そして、
「お前が……壊したんだ……」
ヴァレトはうまく動かない体で、絞り出すようにつぶやく。
「……、何?」
「お前が最後の柱を壊した。これで、小屋を支える"モノ"はなくなった」
直後、小屋の天井がギシギシと激しい音を立て崩壊し、2人の上へと落下した。
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<情報開示>
紺碧の潮汐は星霜
・3等級(顕現に必要な煌気は3ポイント)
・属性<青>
・攻撃力:低 防御力:低 耐久性:低
・能力:[煌気をXポイント消費]:X秒間、世界の時間を50%遅くする。本体とこの約定体だけが普通に動ける。
・能力:[煌気をXポイント消費]:X秒間、時間を停止する。本体とこの約定体だけが普通に動ける。
・能力:[煌気をXポイント消費]:Xmの距離を瞬間移動する。
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<次回予告>
「ねぇねぇ、これどうなっちゃうの? 小生どうなっちゃうの?」
「たぶん、そっちは誰も心配してにゃいにゃ」
「なんで言い切れるんですかー? 小生女子だよ? 貞操の危機だよ?」
「んにゃ? 貞操は狙われてにゃいにゃ? 誰も狙わんにゃ」
「なにおぅ!!」
「うるさいにゃ」ぬいぐるみにボディブロー
「ぐぼーっ!」
次回:最強の刺客! 猫参戦!!
(これは嘘予告です)
次回更新は、11/28(月)の予定です。




