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5-3、はぁ、憂鬱だ……。でも、仕方ない

いつもご覧いただき、ありがとうございます。

「マテリモーニアめ……」

 契約者(フィルマ)向け特別講座が終わり、闘技場から出た王太子のフィデスは苛立ちながら通路の壁を叩く。


「身分を盾にイグノーラのような立場の弱い女性を虐げ、その上、あろうことか王太子であるフィデス殿下に歯向かうなど……、貴族令嬢としてあるまじき行為です!」

 そんなフィデス怒りに便乗するように、青髪ショタ枠のカルリディもマテリへの不満を口にする。完全に事実無根なのだが、彼らの中ではそのように認識されているのだ。


「我が婚約者ながら、あのような非道を行う女であったとは……」

「殿下、彼女には少し"思い知らせる"必要があるのではないですか?」

「なに?」

 カルリディの言葉に、怒り心頭のフィデスも怪訝な表情を向ける。


「侯爵令嬢であり、殿下の婚約者であるマテリモーニア嬢、彼女に何かあれば大いに問題です。が、"子爵令嬢"や、"騎士爵"程度であれば、少々何かがあっても、大きな問題とはならないでしょう」

 カルリディはその青い前髪から除く瞳に、暗い色を灯しながら告げる。

「ま、まさか、暗殺でもするつもりか?」

「いえいえ、少々怖い思いをしてもらう程度ですよ。」

 焦るフィデスの言葉に、カルリディは努めて明るく否定の言葉を返す。


「彼女の"せい"で、身近な者に累が及ぶ……。そうなれば、如何にあの女が厚顔無恥であろうとも、殿下の心の痛み、その数分の一程度でも"理解"できることでしょう!」

 カルリディの熱弁に、フィデスは「うむ」と納得する。


「ならば、あの騎士爵は、俺自ら相手をしよう」

「いえ」

 力強く告げるフィデスの言葉に、カルリディは待ったをかけた。


「殿下は、王太子。将来の王となるべき方です。そのような日陰の仕事は、僕ら側近にお任せください」

 現状はただの学生に過ぎないカルリディだが、まるで王の腹心であるかのように、恭しい態度で"汚れ仕事"を請け負う。

「……、ふむ、そうか、ならばお前に任せよう」

「はっ!」


 一任されたカルリディは脳筋枠のルスフに向き直る。

「聞いたな。僕と君で、あいつらを──」

「俺はやらねぇ」

 カルリディの言葉をルスフが遮った。


「結局"闇討ち"じゃねぇか。俺はそんな卑怯なマネはしねぇ」

 それきりルスフは腕を組み、そっぽを向いてしまった。

 カルリディは「やれやれ」と言いつつ、それ以上ルスフには何も言わなかった。その代わりに、

「ラクトゥス、僕と君でやるよ」

 少し離れて3人に付いて来ていた、黒髪で陰のあるキャラ枠のラクトゥスに声をかけた。


「え……、お、俺?」

 完全に意表を突かれたラクトゥスは、声が裏返る。

「先ほどの特別講座でも、君は大した役には立たなかったんだ。将来"殿下の側近"を目指すなら、ここらで殿下のお役に立っておくべきだと、僕は思うけどね」

 カルリディは見下すような視線を向けつつ、ラクトゥスを煽った。

「あ、うん……」

 ラクトゥスはそれに抗いきれず、あいまいな返事で答えた。



****************



「やっぱりダンジョンは天然ものに限りますね」

「小生は、職員が不憫でしたよ……」

 上級ダンジョンを堪能?した3人は、女子寮へと向けて歩いていた。


「内容は大したことはありませんでしたが、少し汗をかいてしまいましたね」

「小生は脂汗でダクダクですが……」

 マテリの発言に、リアが手で顔を扇ぎながら答える。なお、リアの脂汗の内訳は、砲丸のように投げられた時が7割で、職員の不憫さに気が付いた時が3割である。


「ん!? 浴場!? そうだ! 小生、今女子だった! 浴場なら、"まいまいたん"と公然で裸のお付き合いが! ぐふふふふふ」

 リアは危険な表情を隠すこともなく、よだれと鼻血を垂らしながらぐふぐふと不気味な声で嗤う。

 ちなみに、この学園にある女子寮、男子寮ともに、時間指定で入浴可能な大浴場が完備されている。ここが貴族の通う学園であるためか、はたまた、この世界が前世における"乙女ゲーム"の世界故か、風呂事情についても非常に充実している。


「さぁ! まいま……、マテリ様! 急いで寮へ帰りま、ぶべらっ!」

 マテリの手を引き、駆けださん勢いだったリアに白い糸の塊が衝突し、そのまま遊歩道横にあった街路樹に彼女を縫い付けた。

「むがーむがー!」

 ヴァレトの蜘蛛拳士(ロレム<緑>)から発射された糸により、リアは街路樹に拘束され、さらにご丁寧に猿轡までかけられている。


「あ、あの、それ大丈夫ですか?」

 拘束されたリアを見下ろしつつ、マテリが不安げにヴァレトへ問う。

「問題ありません。明日の朝には解放します」

「いや……、せめて私を送った後には解放してやってください」

「んんー!!」

 マテリも身の危険を感じたのか、リアの対応には少々辛辣であった。そして、女子寮に向け、歩き去る2人。


「んが!?(え、マジ!?)」

 リアは「ふがふが」と呻きつつもがく。が、驚くほどの柔軟性と耐久性を併せ持つ糸は、リアを完璧に拘束し逃がさない。そんな彼女の近くに、何者かの近づく足音があった。


「何故、木に縛り付けられているんだい……?」

 カルリディは、リアの姿を見て、怪訝な表情を向けた。

「んんー!!(良いところに!!)」

「……。好都合かな」

 カルリディは、ニヤリと暗い笑みを浮かべた。

「んんんん!!(全然良くなかった!!)」





「お嬢様、それではこれで」

 女子寮前でヴァレトは頭を下げ、マテリを見送る。

「ありがとうございます。ちゃんとリアを解放してあげてくださいね」

「はい、善処します」

 マテリは最後にもう一度「お願いしますね」と告げ、女子寮の中へと入っていった。


「ま、しょうがないか」

 マテリを見送ったヴァレトは、リアを縛り付けた木へ向かうために踵を返す。

「……?」

 ヴァレトが向かう先に視線を向ける。既に時刻は夕方過ぎ、夜の帳が下り始めた遊歩道を歩いてくる人影があった。


「……、よぉ」

 その人影……、ラクティスが、ヴァレトに声をかけた。

「ラクティスさん、こんばんは」

 ヴァレトは「珍しいな」と思いつつ、彼に挨拶を返す。


「……、す、少し、いいかな」

 ラクティスは、ためらいがちに、ヴァレトを呼び止める。

(うーん、リアを解放しにいかないといけないけど、まぁ、少しくらいはいいか)

「はい、なんでしょうか?」

 ヴァレトは足を止め、ラクティスの言葉を待つ。

「……」

 しかし、ラクティスは何か言いたげに視線を泳がせながらも、口を開かない。

(え……、呼び止めておいて、話題無し?)


 沈黙にいたたまれなくなったヴァレトが、逆に話題を振った。

「ラクティスさんは、あまりイグノーラさんとは一緒に居ませんね」

「ん? あの女か……」

 ヴァレトの問いに、ラクティスは存外機敏に反応し、そして意外な答えを返す。

「……、俺、あの女、嫌いだし……」

「へぇ~……、へ? そうなんですか?」

 これには、ヴァレトも少々素っ頓狂な声を返してしまった。


「あいつ……、何度か俺にも、声、かけてきたけど……。猫かぶり? 言葉が上っ面だけだ……。裏があるのが透けて見えるから……」

 彼の案外正確な見識に、ヴァレトは「鋭い」と思いつつ、唸ってしまった。


「……、はぁ……、本当は、"これも"、気が進まない……」

 少し話しやすくなったのか、ラクティスが愚痴のような言葉を零す。


「これも?」

「……親からも"殿下"の言うことを良く聞いて……、将来は"片腕"にならなきゃいけないって……」

 言いつつ、ラクティスの様子は更に暗くなっていく。


「……それ、どういう?」

「はぁ、憂鬱だ……。でも、仕方ない」

 更に暗くなるラクティス。いや、違う。彼の体から黒いオーラが溢れているのだ。


顕現せよ(レベラータ・アバタル)暗晦は無慈悲の刃(グルム・ベナトル)

「!?」

 そして、黒いオーラが集まり、仮面に燕尾服の人型が出現する。全身が黒一色その人型は、手には身の丈を越す長さの大鎌を持っていた。その大鎌の石突側には、カンテラがぶら下がっている。


顕現せよ(レベラータ・アバタル)──」

 ヴァレトも約定体(アバタル)を呼び出そうとした瞬間、黒衣収穫人(グルム)の瞳が怪しく光り、それを目の当たりにしたヴァレトは、全身が硬直し、身動きできなくなった。


「殺しはしない……、少し痛めつける程度だ……、はぁ、気が進まない」

 黒衣収穫人(グルム)は大鎌をクルリと回し、ヴァレトへ迫る。



=================

<情報開示>


暗晦は無慈悲の刃(グルム・ベナトル)

・3等級(顕現に必要な煌気(オド)は3ポイント)

・属性<黒>

・攻撃力:高 防御力:並 耐久性:並

能力アクティブ:[煌気(オド)を0ポイント消費]:【畏怖の魔眼】にらんだ相手の動きを鈍らせ、萎縮させることができる。相手が約定体(アバタル)の場合、<黒>、<無色>には効かない

能力アクティブ:[煌気(オド)を3ポイント消費]:【破滅の魔眼】対象の<黒>、<無色>以外の約定体(アバタル)を破壊する。それは再生できない。



+++++++++++++++++

<次回予告>


「うははははは! これが小生の最強必殺技! 悩殺クモ糸縛り!」

「ぐはっ! 目が焼ける!!」

「失礼な! この魅力的なボデーになんてことを!!」

「目がぁぁぁぁ! 目がぁぁぁぁ!」

「見たからには、★を置いていけぇぇぇ!」


 次回:炸裂! リアの最強必殺技!


 (これは嘘予告です)





次回更新は、11/25(金)の予定です。

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