4章最終話、どんだけロマン要素てんこ盛りしてくるんですかぁぁぁぁ!?
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模擬戦しかしてない4章が、今回で終了します。
「闘技場閉めるから、外に出ろ~」
契約者向けの特別講習は終わり、闘技場の戸締りまでが講師の仕事であるため、近衛兵団長グラリスは受講者である契約者たちを追い出しにかかる。
「あ、あの、マテリモーニア様……」
揃って退場しようとしていたマテリに、黒髪を肩でそろえた少女が声をかけた。3人目の騎士爵であるペラム・マギクエスだ。
「はい、なんでしょうか?」
マテリはにこやかに応える。
「ご挨拶が遅くなりました。私、ペラム・マギクエスと申します」
ぺラムはカーテシーをしつつ、マテリに自己紹介を行う。
「ご丁寧にありがとうございます。マテリモーニア・レギア・ルキオニスです。よろしくお願いしますね」
彼女の紹介に、マテリは笑顔で応えた。
「先ほどの摸擬戦、殿下はあのようにおっしゃっていましたが、私は感銘をうけました。そちらの、えっと……」
ぺラムはチラリとリアに視線を送る。
「ひょっ!? 小せ……、ワタクシですか? ワタクシはヒストリア・ヴィケコムですわ。以後お見知りおきを」
日頃の挙動の"残念さ"とはうって変わって、リアは意外にも華麗なカーテシーを見せる。続けて、マテリはヴァレトにも視線を向けた。
「ヴァレト──」
名前だけを名乗ろうとしたところで、マテリがチラリと目線を送ってきたため、ヴァレトは慌てて付け加える。
「ヴァレト・エクウェスです。よろしくお願いいたします」
ヴァレトは胸に手を当て、腰を折って挨拶した。
「私、契約者ということで、騎士爵を頂き、学園に入学しましたけど、その、本当に"大した"能力もなくて……。でも、お二人を見て、少し自信が持てた気がします。"どんな能力"でも、使いようなんだって」
模擬戦で感銘を受けたらしいぺラムは、その感動を必死にマテリへと訴える。が、"どんな能力でも"の部分では、チラチラとリアに視線が向いていた。
「それひょっとして小生のこと? 小生の鎧のこと言ってる?」
「アレな能力でも使い方次第って、褒められてるのですよ?」
「彼女は良い人! ヴァレトは褒めてない! "アレ"ってひどくない!?」
リアはヴァレトにつかみかかるが、ヴァレトは視線を逸らし、どこ吹く風である。
「ヴァレトさんは、赤く変色してましたけど、あれが約定体の"能力"なんですか?」
ぺラムはヴァレトにもキラキラとした瞳を向ける。
「あー、能力については、秘密です」
ヴァレトの言葉に、ぺラムは恥じ入るように頬を染めた。
「あっ! そうですよね、ごめんなさい!」
彼女は、ペコリとヴァレトに頭を下げる。少し抜けているが、いい娘なのかもしれない。
「なぁ、闘技場閉めたいんだけど……、俺本当に泣くよ?」
彼らの背後から、ずっとマテリ達を待っているグラリスの泣き言が響いた。
****************
何度も言うが、この学園に通う目的は、学生の社交であり、人脈形成である。故に、この学園には"授業"がない。
ただ、社交のための施設や制度は充実しており、それらを用いて人脈形成の努力を行うことが、学生に求められている。良くも悪くも、学生自身の自主性に全て委ねられているといえる。そういう意味では、「契約者向けの特別講習」とは、学園においては非常にイレギュラーな催しである。
「いいなぁ、いいなぁ~」
契約者向けの特別講習が行われた日の午後、お茶会などに利用されるサロンの1つを借り、マテリ、リア、ヴァレトと、ついでに猫のアルブが、お茶でくつろぐ。
「いいなぁ、いいなぁ、羨ましいなぁ、小生の鎧も変形しないかなぁ~」
そんなまったりとした空間に、リアの声が響く。
「……」
訂正、リアのうっとおしい声が響く。
ヴァレトもお茶を嗜みつつ、構ってほしそうに訴えるリアの言葉に、少々うんざりし始める。
「ヴァレトの能力は、とても不思議ですね。呼び出した時には<無色>なのに、その後に<白>や<緑>……、今日はついに<赤>にもなりましたね」
紅茶のカップを手にしたマテリが、今日の"講習"を思い出し、しみじみと告げる。
「うにゃぁ。"変異"するユニットは、たまーに見かけるんにゃが、複数種類に"変異"するのは、見たことにゃ~(見たことない)」
テーブルの上に座り、器用に両手でスコーンを持って齧りついていたアルブが、ヴァレトの約定体を評する。
「アルブさん、お詳しいのですね」
「うにゃ? にゃんだろう? にゃんかそう思ったにゃぁ」
スコーンに食いつくのを止め、コテンと首を傾げたアルブだが、すぐに気を取り直し、スコーンに食らいつきなおした。
「もしかして、<無色>にも変形できたりして?」
「できますけど」
「ですよね、さすがに<無色>から<無色>は──、って、できるんかーい!!」
リアは冗談のつもり言ったが、予想外の"肯定"にノリツッコミを炸裂させた。なお、誰にもウケなかった。
「できるんですけどね……」
そういいつつ、ヴァレトは拳闘士を出現させる。更に、ヴァレトの体から色の無いオーラが溢れ拳闘士へと流れ込む。すると、全身に溝が走り、いつもの変異動作……、から、元の拳闘士に戻った。
「え……? もしかして今、変形したの?」
リアは瞬きしながら拳闘士を上から下まで舐めるように見つめ、違いを探している。
「ええ。変異? しました。しましたけど……、能力は変わってません。いや、むしろ少しだけ弱くなってます」
「弱体化変形! 斬新!!」
"弱くなった"の部分でテンションを上げるリア。
「僕の約定体は、3等級です。なので呼び出しのタイミングで煌気を3消費します。で、<白>や<緑>、今日初めて変わった<赤>にしても、変異する時に煌気を2消費するんです。だから、約定体を呼び出して即変異すると、5つの煌気を全て消費します」
契約者は体内に5つの煌気を溜めている。消費した煌気は、1つあたり約1分で回復する。ヴァレトの約定体を呼び出し、即変異で5つの煌気が枯渇する。そのため、再度変異するためには、最低でも2分程度は煌気を溜める必要がある。
「わーい、説明セリフだー」
「メタにゃ発言は控えるにゃ」
猫のアルブがリアにチョコチップを投げつけたが、リアはそれを口でナイスキャッチする。
「<無色>への変異だけは少々特殊で、変異の際に煌気をどれだけでも注ぎ込めて……、注ぎ込んだ分だけ強くなるみたいなんです。なので、煌気の回復を待って変異したら、もっと強力になります」
ヴァレトの言葉を聞いたリアは、齧りかけていたクッキーをポロリと口から落とす。
「すげぇ! いいないいなぁぁぁぁぁぁぁ、力溜めたら強力な攻撃できるとか、マジロマンだし!!」
"弱くなった"の下りでテンションを上げたリアだったが、一転"ロマン能力"とわかるや、再びウザ絡みを始めた。
「その上、<無色>変異は、3分程度しか持たないんですよ?」
「いいないいなぁぁぁぁ、さらに時間制限付きとか、どんだけロマン要素てんこ盛りしてくるんですかぁぁぁぁ!?」
「……」
ヴァレトはそろそろ無表情になり、マテリは苦笑いを浮かべている。
「うるさいにゃ」
猫のアルブが背中のクマのぬいぐるみを取り出し、ボディに一撃入れた。
「ごふぅぅぅ!!」
リアは"く"の字にへこみ、そのまま地面を舐めた。
「め、めちゃ痛い……、そのクマ、前より強力になって、ない?」
リアは地面に這いつくばったまま、呻くように呟いた。
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<情報開示>
無能の化生
・3等級(顕現に必要な煌気は3ポイント)
・属性<無色>
・攻撃力:高 防御力:高 耐久性:高
・能力:[煌気を2ポイント消費]:変異する
↓
無能の化生<無色変異>
・X級(変異に投入した煌気はXポイント)
・属性<無色>
・攻撃力:X 防御力:X 耐久性:X
・能力[煌気を0ポイント消費]:変異を解除する
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<次回予告>
「やれやれ、あんまり俺を舐めない方がいい」
「な! まさか!」
「あれが、王国最強と言われる……」
「近衛兵団長グラリスの約定体!?」
「こんにちは、ぼくドラ○もんです」
次回:帰らない学生たちには、独裁ス○ッチで強制退場!
(これは嘘予告です)
次回からは、引き続き学園編の5章が始まります。
更新は、11/18(金)の予定です。




