4-8、ここは俺に任せろ!
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「怖っ! 衝突事故こわ!」
無敵鎧に正面衝突した白馬騎士の騎馬は見事に転倒し、乗っていた騎士がきれいな弧を描いて空を飛んだ。
お互いにフラフラな騎士と騎馬が何とか合流し、騎乗して再度白馬騎士となる。
「そ、そのような鎧程度、我が騎士の突撃で粉砕してくれる!!」
王太子はムキになり、白馬騎士に騎馬突撃を命じる。約定体は愚直にその指示を守り、リアの無敵鎧へと突進し、ランスの刺突を見舞う。無敵鎧に突き立てられたランスは、ギャィィンという硬質な音と共に弾かれ跳ね返される。
「ぬうっ!」
再び突進を止められ、ひるんだ白馬騎士の頭上で、白銀の刃が煌めく。飛来した天使の白刃で袈裟斬りにされた白馬騎士は、崩れて消滅した。
「なっ! ま、まだだ! まだ煌気はある!」
王太子は白馬騎士を再び呼び出し、天使に向けて突撃攻撃を行うが、天使はその翼でひらりと空へ舞い上がり、突撃を回避する。
「ちっ! ならば、本体へ攻撃するのみ!」
マテリは無敵鎧を着込んだリアの後ろに隠れていた。そのままでは、再び鎧の弾かれるだけである。
「せ、正々堂々勝負せんかぁ!!」
堪らずフィデス王太子はマテリ達に向かって叫ぶ。
「生身で約定体と"勝負"する行為は、正々堂々というよりは愚か者かと思いますが……」
「御託を並べるな!!」
もはや論理も無茶苦茶である。
「……はぁ、リア」
マテリはため息を漏らしつつリアの名を呼び、天使を地上へと下した。
「っ! りょうかいっす!」
何かを察したリアも、無敵鎧を解除し、生身を晒した。
「潔し! 行くぞ!!」
上機嫌なフィデス王太子は、再び白馬騎士で騎馬突撃を慣行し、そして、マテリに到達する前に転倒した。
「なっ、なんなんだぁぁぁぁ!!!」
マテリ達を中心とし、闘技エリアのあちこちに鎧の部品が散乱していた。リアが無敵鎧をバラバラに分解し、闘技エリアのあちこちにばらまいた状態で呼び出したのだ。
落馬し、転倒している白馬騎士にの頭上に、天使が舞い降り、白銀の剣を振り下ろす。
「あぁ!!」
しかし、騎士の体を白い結界が包み込み、白銀の剣によるダメージが無効化された。
「ふ、ふん! 何度も同じ手を食らうか!」
「殿下の約定体が持つ能力ですね……」
白馬騎士は、煌気をつぎ込むことで、あらゆるダメージを軽減するバリアのようなフィールドを展開する能力を持っている。
白馬騎士は騎乗せず、その場で天使に向けて連続で刺突を繰り出す。しかし、天使は宙を舞い、ひらひらと回避し、そして、隙を突いて逆に白銀の剣を白馬騎士に食らわせる。だが、斬撃は再び白い結界により防がれた。
「おかしい。あの結界能力は、これほど乱用できるものではない。すでに殿下の煌気は枯渇しているはず……。なのに結界が消えない」
続けて繰り出す天使の攻撃も、ことごとく結界により防がれる。
「はっはっはっ! これこそがイグノーラの力だ!」
フィデス王太子の後方で緑エルフが両手を組み、祈りを捧げている。その緑エルフから緑のオーラが湧き出し、それがそのまま王太子へと流れ込んでいた。
「彼女の祈りが、この俺に力を与えてくれるのだ! 彼女が支えてくれれば、俺の結界は無敵!」
再び騎馬にまたがる騎士。馬上から、白馬騎士がランスをマテリに向ける。
「さぁ! 無敵の騎士が、貴様の約定体を破壊して──」
「きゃぁぁぁぁぁぁ!」
白馬騎士を無視し、天使は緑エルフへと切りかかる。
白馬騎士が再騎乗しているうちに、攻撃ターゲットを緑エルフへと切り替えたのだ。
「卑怯な!!」
フィデス王太子が吠える。白馬騎士がそれに呼応するように天使に向けて突進──、しようとして、散乱する鎧を避けるため、足元に注意しながらゆっくりと緑エルフへと近づいていく。
「いえ、ですから、彼女も最低限の自己防衛力を──」
「貴様らの戦い方は、愚劣極まる!! 人としてあるまじき行為だ!!」
王太子は激高し、マテリを糾弾する。
「……、殿下、魔物は騎士道を重んじてはくれません。相手が魔物でも、同じことをおっしゃいますか?」
「ふん、苦しい言い訳を……。貴様の私怨であることはわかっているぞ!」
「私怨?」
マテリは首をかしげる。
「今イグノーラがやってますね」
「……その"しえん"ではありません」
リアのボケに、マテリが冷静にツッコミを入れる。
「イエスッ!!」
リアはサムズアップして大喜びである。
「嫉妬に狂う女とは、実に嘆かわしい」
フィデス王太子は、額に手を当てながら零す。
「……」
マテリは、もはや王太子にかける言葉が見つからない。
(婚約者が居る身で、別の令嬢に現を抜かす方が嘆かわしいよなぁ)
リアも、これはさすがに口に出すとマズイことがわかり、内心だけで突っ込むにとどめた。
「だが、俺たちは、そんなモノには屈しない!」
散乱する鎧を避けて移動することにしびれを切らした王太子は、一旦白馬騎士を消し、自身とイグノーラを護りやすい位置に再度出現させた。
「さぁ! 仕切り直しだ!」
再び闘志満々といった様子のフィデス王太子に、マテリとリアは冷めた視線を送る。
「勝手に仕切りなおしてますけど、どうします?」
「リア。指を差してはいけません……。仕方がありません。"プレゼント"して差し上げて」
マテリも、もうあきらめたのか、天使を消した。
「アイアイマム!」
リアはビシッっと敬礼する。直後、闘技場内に散らばっていた鎧が消滅する。
「ふむ、潔し! 行くぞ!!」
バカの一つ覚えな騎馬突撃。白馬騎士がマテリ達に向けて高速で突進してくる。
「くらえっ!!」
白馬騎士のランスが、マテリ達に届く、その瞬間、白馬騎士が纏う白銀の鎧は、黒鋼の鎧に変貌した。
白馬騎士は静止し、重量に耐え切れず落馬、そのまま地面にめり込んだ。
「ど、どうした騎士! 立て! 立ち上がれ!!」
黒鋼の鎧を着込み、刺突姿勢のままで地面にめり込んだ状態の騎士が、ピクピクと微動する。が、起き上がることも、身動きもできない様子。
「どうすか、無敵鎧の着心地は?」
リアは地面で震えている騎士を見下ろし、ニヤニヤしながら告げる。
「きゃぁぁぁぁぁ!!」
王太子の背後では、イグノーラの緑エルフが天使に切りつけられ、消滅した。
「ぐっ! またも卑怯な!! 逃げろ、イグノーラ!!」
フィデス王太子がその身で天使にとびかかり、抑え込もうと力を籠める。
「もう見ていられません! イグノーラこっちに!!」
そこへ、青髪ショタ枠のカルリディが乱入し、イグノーラを助け出す。
「あぁ、でも、殿下が!」
「今は君の身の安全が大事だ! さぁ! こっちへ!!」
カルリディに引きずられるように、イグノーラが闘技場隅へと退避していく。
「ここは俺に任せろ! さぁ! 彼女を追わせはしないぞ!」
王太子は、素手で天使に立ち向かい、顔面へと拳打を叩き込む。最も、人間の攻撃など、約定体には何の効果も無いが……。
「……」
マテリは、その茶番を魂が抜けたような顔で見守る。
「……」
ヴァレトは、ただひたすら無言で、この三文芝居が終わるのを耐えている。
「えっと……」
脳筋枠ルスフは、ヴァレトの冷めた様子と、フィデス王太子とのあまりの温度差に、「もしかして、俺たちがおかしいのか?」と、やや正気に戻り始めている。
「……、あほくさ」
リアが吐き捨てるように呟いた。
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<次回予告>
「殿下……、俺たち、このままでいいのか……、いいんですか?」
「何を言っているんだルスフ!」
「そうです! 見てください、可憐な彼女の笑顔を!」
「っ!」
「あの笑顔が消えるようなこと……、あってはいけません」
「俺が、俺たちが、護るんだ」
「フッ、貴方らしくないですよ。いつもの熱さはどうしたのですか?」
「俺は、お前を信じているぞ!」
「あ……、あぁ! そうだな! そうだよな!!」
──再洗脳完了
「怖い! 怖いよあいつら!!」
次回:復活! 脳筋男!!
(これは嘘予告です)
次回更新は、11/16(水)の予定です。




