4-7、怖っ! 衝突事故こわ!
いつもご覧いただき、ありがとうございます。
お互いの健闘を称えあったヴァレトとルスフは、握手していた手を解くと踵を返し、それぞれの仲間たちの元へと戻る。
2人の模擬戦が激しくなった際、自然とグループ単位で固まって観戦する雰囲気となった。
1つは、マテリとリア、と、ついでに講師であるグラリスに、なぜか攻略対象の1人であるラクトゥスが集まったグループ。もう1つは、イグノーラを中心とした逆ハーレムグループ。なお、もう1人の騎士爵であるペラム・マギクエスは、ややハブれた雰囲気を出しつつ、マテリたちグループから少し離れた位置で観戦していた。
マテリ達の元へと近づいてゆくヴァレトは、途中で足がもつれてフラリとバランスを崩す。が、倒れるより先に、マテリが素早く助けに入った。
「す、すみません、お嬢様……」
「無茶しすぎです」
ヴァレトを支えるマテリは、セリフこそ非難めいた内容だが口調は穏やかで、彼の健闘を称える色が含まれていた。
「……ありがとうございます」
マテリに支えられ、リアたちの元へと戻るヴァレト。
「わ、私ぃ! あんな戦いできないですぅ!!」
そんな2人の耳に、女の甲高い声が届く。そろって振り返ると、イグノーラがフィデス王太子に向けて何やら物申していた。
「あぁ! 当たり前だ! 君をあんな危険な目には合わせはしない!」
フィデス王太子は、イグノーラにキラキラと輝くような笑みを向け、自信満々に宣言する。
「う、うれしい……」
イグノーラはセリフとは裏腹に、表情では雄弁に「いやそうじゃねぇ」と訴えている。しかし、言葉を額面度通りに受け取った王太子は、「そうだろうそうだろう」と満足気である。
「あれは……、どういう状況ですかね……?」
「……、さぁ?」
ヴァレトもマテリも困惑気味である。
「模擬戦やる方向に持っていこうとしてんじゃないですかね?」
そんな困惑状態の2人に、リアが告げる。
「"できない"と言っていますけど、摸擬戦したいということですか?」
マテリが首をかしげながらリアに問う。
ヴァレトは、そんなマテリに見惚れつつ、いつまでも肩を借りているわけにもいかないことに気が付き、やんわりとマテリの肩から手を退かし、1人で立つ。
「"察してちゃん"なんすよ」
「さ、察してちゃん?」
言葉の意味は、マテリには良くわからない。が、"摸擬戦したい!"という気持ちはよく理解できる(※あくまでもマテリの個人的感性です。女子全体の傾向ではありません)。なので、マテリはイグノーラに助け舟を出すことにした。
「殿下……、この場は訓練ですし、彼女も模擬戦を経験されるべきでは──」
だが、その"助け舟"は、王太子により"敵船"と認定された。
「貴様! まだ言うか! 嫉妬の末、そのように嫌がらせをするとは……」
「い、嫌がらせでは……」
フィデス王太子は、困惑するマテリを睨みつける。助け船のつもりだったマテリは、イグノーラに視線を向ける。が、彼女はニヤリと薄っすら笑みを浮かべているだけである。
「そこまで言うなら、お前自身で彼女の支援の力を味わうといい! さぁ、約定体を出せ! 私が相手になってやる!!」
フィデス王太子の体から白いオーラが噴き出す。
「顕現せよ、戦場を駆る白光!!」
オーラが集まり、白馬に跨る白銀鎧の騎士が出現した。右手には白銀のランス。左手には白銀の大盾を持っている。
「で、殿下……、結局それでは意味が……」
マテリは、「イグノーラにも1人で戦う経験を積ませるべき」というつもりで言っていたのだが……、
「かかってこぬなら、こちらから行くぞ!」
それを理解しないフィデス王太子は、白馬騎士のランスを問答無用でマテリに向けた。
ヴァレトが射殺すような視線をフィデス王太子に向ける。それを察したルスフは、先ほど熱い勝負を終えたばかりの相手から向けられる殺気の籠った視線に、戸惑いの表情を浮かべているが、対照的にカルリディは、刺し返すような鋭い視線をヴァレトに向けていた。
マテリグループとイグノーラグループの間で、一触即発の緊張感が──
「えぇ~、二対一は卑怯だよね~?」
剣呑な空気に、リアが冷や水をぶっかけた。ヴァレトとカルリディは、リアの素っ頓狂な声に毒気を抜かれた。しかし、そんな冷や水も、ヒートアップした王太子には焼け石に水だったようだ。
「ならば貴様が加勢したらよかろう!」
「え? えぇぇぇぇぇぇ!?」
かくして、リア緊急参戦によるフィデス王太子+イグノーラ VS マテリ+リア の模擬戦が唐突に勃発した。
「仕方ありません。リア、お願いします。顕現せよ、慈愛齎す天翼」
マテリの体から白いオーラが溢れ、それが集まって白い翼の天使が現れる。
「え、え、え!? マジですか!? いや、マジでぇぇぇぇ!?」
戸惑うリアを突き放すように、白馬騎士の刺突により戦端は開かれた。
至近距離からの刺突を、天使が大盾で受け止める。ランスの先端が盾をわずかに削り、ギャリリという音が響く。
リアの「もう始まってるぅぅ!」 という悲鳴を聞き流しつつ、イグノーラも体内の煌気を励起させる。
(やっとチュートリアルかよ! なんでこんなに苦労しないといけないのよ!!)
「顕現せよ、深緑賢人の巫女」
イグノーラの体から溢れた緑のオーラが集まり、森林のような深緑色の髪を持つ美女を生み出した。緑の衣をまとうその美女は長い耳を持つ、緑エルフであった。
「我が約定体の真の力を見せてやる」
白馬騎士の騎馬がいななき、闘技場内を駆ける。闘技エリアの広さを存分に使い、マテリ達に向けて、ものすごい勢いで突進攻撃を行った。
白馬騎士の持つ突撃槍の一撃が、天使の大盾と衝突する。金属同士の激しい衝突音が闘技場全体に響き渡る。
天使の横を通過し、再度突進を行うべく騎馬で旋回する白馬騎士のランスには、目立った損傷はない。しかし、天使の大盾は、刺突を受け止めたことで大きく抉られている。
「まだまだいくぞ!」
再び騎馬突撃を慣行する白馬騎士。
「結局、相方さんはなんもしてないのでは?」
「……、そこは、その、ほら……」
突撃してくる白馬騎士を前にリアが呑気に呟き、擁護の言葉が思いつかないマテリは言葉を濁した。
「女子とて手加減はせんぞ!!」
マテリとリアの目前まで接近した白馬騎士のランスが、マテリを捉え──
ゴンッ!! 瞬間、騎士は空を飛んだ。
闘技場の全員が、宙を舞う騎士の姿を目で追う。そして、ズササササーと、地面を滑りながら、丁度王太子の前で騎士が停止した。
「なっ! 何が!?」
「怖っ! 衝突事故こわ!」
リアの声が、硬質な黒い鎧の中から聞こえる。そう、白馬騎士は無敵鎧を着込んだリアに衝突して停止。騎馬を残して、見事に騎士が吹っ飛んだのである。なお、重すぎて着ているリア自身も微動だにできない。
「チッ、小癪な!」
衝突の後遺症が残る騎馬が、よろよろと騎士の元へと向かい、フラフラの騎士が騎乗して、再度白馬騎士となった。
「む、鎧か……」
脳筋ルスフは、「自分の約定体で壊せるだろうか?」と、リアの鎧を興味深そうに見ている。
「はっ、また無色ですか。マテリモーニア嬢は無色がお好きなのでしょうかね」
ヴァレトの約定体に続き、リアの約定体も<無色>であったため、青髪ショタ枠のカルリディは、侮るような視線を向けていた。
「……」
ヴァレトは、表情には出さず、しかし「いつか思い知らせる」と、心のメモにしっかりと刻み付けた。
=================
<情報開示>
戦場を駆る白光
・3等級(顕現に必要な煌気は3ポイント)
・属性<白>
・攻撃力:高 防御力:高 耐久性:並
・特徴:騎馬と騎士のセットであるため、機動力が高い。騎馬突撃からのランス刺突が強力。
・能力:[煌気を1ポイント消費]:一時的に防御力を上昇させる
深緑賢人の巫女
・3等級(顕現に必要な煌気は3ポイント)
・属性<緑>
・攻撃力:低 防御力:低 耐久性:低
・特徴:木々や大地に祈りを届け、瑪那を取り出し、集めることができる。
・能力:祈りに応じて瑪那が抽出される。他人に提供可能。最大5点
・【巫女能力】(アクティブ):大地に刻印を刻む
・【巫女能力】(アクティブ):刻印を刻んだ地から、瑪那を抽出し、収集する。他人に提供可能。上限なし
瑪那
・自然界に存在するエネルギー
・契約者は、周囲の瑪那をゆっくりと吸収し、煌気として蓄えている
+++++++++++++++++
<次回予告>
「怖い! これだからむっつりスケベは!」
「むっつり……?」
「"心のメモ"とか言って、根に持つ男とか、嫌よね~。ですよね? マテリ様!」
「え? いや……」
「小生もなんか根に持たれてるかも、うわぁー、怖っ!」
「いや、リアには何も、根に持ってませんよ」
「へ?」
「こうやって、」拳闘士出現
「すぐに解消してますからね」
「ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
次回:結局、根に持つ男!
(これは嘘予告です)
次回更新は、11/14(月)の予定です。




