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4-6、うむ、若いっていいなぁ

いつもご覧いただき、ありがとうございます。

 契約者(フィルマ)専用闘技場、そこで脳筋系攻略対象ルスフ・レドウィケスと、ヴァレト・エクウェスが相対する。

 ルスフの表情からは、これから始まる戦いへの高揚感と期待感が露わとなっている。


「さぁ、いくぜ……、顕現せよ(レベラータ・アバタル)灼熱剛腕岩塊(ラピデア・ルベル)

 言葉と共にルスフの全身から赤い蒸気のようなオーラが溢れ、そのオーラが渦巻くと、中から岩石のゴーレムが出現した。岩石は赤熱し、炎を噴き上げている。


顕現せよ(レベラータ・アバタル)無能の化生(ロレム・V・イプスム)

 言葉と共にヴァレトの全身から半透明なオーラが溢れ、茶褐色の甲殻をもつ拳闘士を形作った。



「ほぅ、"無色"の約定体(アバタル)か」

 フィデス王太子が、ヴァレトの約定体(アバタル)を見て評する。

「"無色"は能力が弱いと、文献にはありますがね」

 続けてカルリディが酷評する。


「む……」

「……」

 リアは二人の言葉に、思わずムッとした表情を向けてしまう。が、マテリは表情を変えていない、片側だけは。

 器用にも、王太子とカルリディに見えない反対側にのみ、青筋を浮かべていた。マテリの表情を目にしたリアは、背筋に冷たいものを感じ、自身の怒りを収めた。


「一撃で終わってくれるなよ!!」

 ルスフの声に呼応し、炎ゴーレム(ラピデア)はヴァレトに向けて突進し、目の前まで迫った炎ゴーレム(ラピデア)は、大振りの拳打を振り下ろす。ヴァレトと拳闘士(ロレム)は、それを大きく回避して避ける。通過した拳から発した熱が、ヴァレトの顔にジリジリとした熱波を送る。


 大振りで隙のできた脇に向け、拳闘士(ロレム)が左フックを打ち込む。

「させるかぁぁぁ!!」

 炎ゴーレム(ラピデア)は裏拳でそれを迎え撃つ。炎ゴーレム(ラピデア)の裏拳と、拳闘士(ロレム)の拳が衝突する。拳闘士(ロレム)の左拳が焼け落ちた。


「うっ……」

「まだまだぁぁぁぁ!」

 ルスフの気合の声とは裏腹に、炎ゴーレム(ラピデア)は先ほどの大振りとは違い、細かく刻むようなジャブを拳闘士(ロレム)に打ち込んでくる。

 拳闘士(ロレム)はそれらを無事な右拳でいなすが、それだけで右手が焼け焦げていく。


(<無色>のままでは、パワー負けしている。あまり"能力"を大っぴらにはしたくないが……)

 ヴァレトは拳闘士(ロレム)の速度を上げる。ルスフと炎ゴーレム(ラピデア)から距離を取り、高速ステップによるアウトレンジ攻撃に切り替えた。

 高速のステップインからの打ち込み、そして拳が焼けるより速く引く、ヒット&アウェイを繰り返す。しかし、炎ゴーレム(ラピデア)には大したダメージは与えられていない。


(もう少し速度を上げて、隙を──)

「ダメだ」

 攻撃しつつ巡らせていたヴァレトの思考は、ルスフの呟きにより中断される。


「ダメだ、ダメだダメだダメだダメだダメだぁぁぁぁ!!」

 徐々にヒートアップする呟きは、ついに雄たけびとなる。

 ルスフの叫びと共に炎ゴーレム(ラピデア)が炎を噴き上げ、更に強い熱を放つ。


「そんな戦い方じゃねぇ! もっと燃えろよ! 俺にはわかる! お前の熱はこんなもんじゃねぇ!!」

「……、僕は考えて力を振るっています。闇雲に振り回しているわけではない」

 ヴァレトは冷静に答える。が、それが更にルスフを加熱させた。


「熱さが足りねぇ!! そんな熱じゃ、護りたいモンも護れねぇ!!」

 更に巨大化した赤熱岩石が、ヴァレトの拳闘士(ロレム)を襲う。

「くっ!!」

 それを蹴りで迎撃する拳闘士(ロレム)

 ガァァァンという衝突音と共に、炎ゴーレム(ラピデア)の拳と、拳闘士(ロレム)の足の両方にヒビが走る。


「加減してぇ! 護れなかったら仕方ねぇってあきらめるのか!?」

 炎ゴーレム(ラピデア)が火炎の諸手突きを放つ。

「SHIAAAAAAA!!」

 拳闘士(ロレム)もそれを諸手突きで迎え撃つ。4本の拳打が衝突し、闘技場内に衝撃が迸る。

 お互いの約定体(アバタル)の両手に、無数のヒビが入る。


「惚れた、護りたい奴が、いるんだろ?」

 突然、落ち着いた調子で告げられたルスフの言葉に、ヴァレトはピクリと反応する。

「す、好いた惚れたでお守りするわけでは……」

「なら義務か!? お前の想いはそんなモンか!?」

 再びヒートアップしたルスフは、ヴァレトの襟首をつかみ、頭突きを食らわせる。

「お嬢様のためなら僕はいつでも全力だ!」

 ヴァレトもルスフの襟をつかみ、頭突きを返す。ガチィィンと人間の頭部がぶつかり合ったとは思えない音が闘技場に響き渡る。

 なお、二人は契約者(フィルマ)であるため、障壁(クラテス)が存在する。そのため、本体同士でどれだけドツキ合っても、お互いに全くダメージは入らない。


「ヴァレト!?」

「あー、あれは、だいぶお熱上がってますねー」

 突然のヴァレトの告白同然の言葉に、マテリは真っ赤になって動転している。その横で、リアは鼻でもほじりそうなほど覚めた様子で、盛り上がる脳筋二人を見ている。


「だったらぁぁぁぁ!」

 ルスフが再び首を大きく引き、

「いつでも全力だろうがぁぁぁ!!」

 ヴァレトに全力の頭突きを見舞う。ヴァレトの頭部が後方に跳ね、二人の距離が離れる。重ねて言うが、見た目は派手でも、お互いにダメージは無い。



「貴方に言われるまでもない! 必要なら全力です!!」

「はっ! そんないい子ちゃんな戦い方でかぁぁぁぁぁ!?」

 炎ゴーレム(ラピデア)の全身から、さらなる炎が吹き上がる。それは今日一番の出力だ。遠巻きに見ている観客ですら、その放射熱で火傷を負いそうなほどである。

「砕けちまいな!!」

 もはや巨大な溶岩と化した右腕が、拳闘士(ロレム)に襲い掛かる。拳闘士(ロレム)はそれをくぐるように回避、が、くぐった背中が焼け、体表が泡立つ。


「SHIAAAAAAA!!」

 拳闘士(ロレム)渾身の右拳打が炎ゴーレム(ラピデア)脇に叩き込まれ、そして、拳闘士(ロレム)の右腕が爆散するように溶けて砕けた。


 右腕を失った拳闘士(ロレム)の頭上で、炎ゴーレム(ラピデア)が両手を組み、まるで巨大火山弾のような打ち下ろしを放つ。拳闘士(ロレム)は咄嗟にローキックを炎ゴーレム(ラピデア)の膝に叩き込む。その攻撃により、両手の打ち下ろしは角度が逸れ、拳闘士(ロレム)には直撃せず、体表面を少し焼いた程度で済んだ。が、代わりにローキックを放った左足の膝から下を失った。


「終わらせてやるよ」

 やや姿勢を崩していた炎ゴーレム(ラピデア)だが、沈んだままの状態から救い上げるような右アッパーカットを繰り出す。その軌跡は、拳闘士(ロレム)を目指す。


 両手と左足を失い、右足一本で立っている拳闘士(ロレム)は、それを自らの前頭部で迎撃した。

 炎ゴーレム(ラピデア)の巨大なアッパーカットが命中した拳闘士(ロレム)の頭部は、ビシリッという音と共にひび割れる。そして、頭部を起因としたひび割れは、拳闘士(ロレム)の全身へと広がり、そこから炎が噴き出した。


「ヴァレト!!」

 マテリが悲痛な声を上げる。


「まだまだぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 ヴァレトが吠える。全身が砕けるかに思われた拳闘士(ロレム)だったが、そのひび割れは全身を幾何学模様的に走っており、それは全身に炎のエネルギーを行きわたらせる走査線のように光を放つ。

 これまでつるりとしたスキンヘッドだった拳闘士(ロレム)の頭部に、毛髪のように焔が立ち上がる。破損したはずの四肢が復活し、両腕はその体に見合わないサイズまで巨大化し、それぞれに炎を噴き上げる。その様子は、まるで動く業火(ロレム<赤>)であった。


「なっ、色が付いただと!?」

 ヴァレトの約定体(アバタル)が<変異>した様子に、フィデス王太子が驚愕の声を出す。


「あれはまさか……」

「変異してますね……、それも赤」

 マテリとリアも、見たことのない色の変異に、驚愕は隠せない。


「ははっ!! いいぜ! いい!! さぁ! 最後の勝負だ!!」

 ルスフは対戦相手の変貌にも動じることなく、ただ好敵手の出現に笑みを浮かべる。

「おらぁぁぁぁぁ!!」

「SHIAA!!」

 炎ゴーレム(ラピデア)動く業火(ロレム<赤>)が、お互いの巨大な右腕を振るい、衝突する。炎をはらんだ衝撃波が闘技場内に吹き荒れる。そして、両約定体(アバタル)の右拳が爆散した。

「まだだぁぁぁぁぁ!!」

 動く業火(ロレム<赤>)の全身に走るラインが、更に強く明滅する。

 体中を走る光は、左腕に向かって集まっていく。全身の炎が消え、錆びた鉄色に変貌し、ただ一か所、全エネルギーが集中した左腕だけが、まばゆい白熱に輝く。

「はっ! 勝負だぁぁぁぁぁ!!」

 今度は左拳同士が衝突。

 が、炎ゴーレム(ラピデア)の左腕は、まるで加熱された蝋のようにズルリと溶解。動く業火(ロレム<赤>)の白熱する左拳は、全く静止することなく直進し、炎ゴーレム(ラピデア)の胴体をぶち抜いた。


「ぐはぁっ!!」

 炎ゴーレム(ラピデア)爆散の衝撃により吹き飛ばされたルスフは、数m先の地面へと落下し、動く業火(ロレム<赤>)は、振りぬいた左拳の光が消え、全身鉄さび色のまま崩れ落ちるように消滅した。


「む、相打ちか……?」

 フィデス王太子の発した言葉に、

「……、い、いや……、俺の負けだ」

 ルスフは体を起こしながら、反論した。そこに手を差し出す者が、

「いい、勝負でした」

 ルスフの元に歩み寄ったヴァレトは、彼を助け起こすため、手を差し出していた。


「はっ! 次は負けねぇ」

「僕も、負けません」

 ルスフはニヤリと笑い、ヴァレトの手を取り立ち上がる。そのまま二人は握手の形となった。


「うむ、若いっていいなぁ」

 近衛兵団長グラリスが、二人を見てしみじみと述べ、

「良いものですね……」

 マテリがキラキラした目でそれに同意した。

「え、あ、はい?」

 戦闘の余波で吹き飛ばされたために最後を見ていなかったリアは、何が起こったのかわからないまま、とりあえず返事をした。



「なによこれ。なんなのよぉぉ!」

 イベントをぶっ飛ばされたイグノーラは、一人慟哭した。



=================

<情報開示>


灼熱剛腕岩塊(ラピデア・ルベル)

・3等級(顕現に必要な煌気(オド)は3ポイント)

・属性<赤>

・攻撃力:高 防御力:並 耐久性:並

・特徴:全身が燃えた岩石でできているため、常に熱を帯び、触れた者にダメージを与える

能力アクティブ:[煌気(オド)を1ポイント消費]:一時的に攻撃力を上昇させる


無能の化生(ロレム・V・イプスム)

・3等級(顕現に必要な煌気(オド)は3ポイント)

・属性<無色>

・攻撃力:高 防御力:高 耐久性:高

能力アクティブ:[煌気(オド)を2ポイント消費]:変異する


 ↓


無能の化生(ロレム・V・イプスム)<赤変異>

・属性<赤>

・攻撃力:超高 防御力:低 耐久性:超低

・特徴:全身に火炎を帯びており、エネルギーを集中することで、超攻撃力を発揮する。耐久性が皆無であるため、一撃で自壊する。

能力アクティブ[煌気(オド)を0ポイント消費]:変異を解除する



+++++++++++++++++

<次回予告>


「なぁ、そろそろ講習終わっていいかな、年寄にはきついのよ」

「講師さん、見てるだけですよね?」

「はふぅん、イケボ……」

「最近、立ってるだけで腰がね……」

「30代半ばにしては、年寄臭過ぎないですかね……」

「こしぃぃ……」

「いや、ほら、体使う仕事だし、いろいろとガタもきてんのよ、」

「ガタァァァ……」

「っていうか、さっきからそこのヤバイ顔してる女子、何? 大丈夫? 俺、それ、見ていい奴? なんか見たらヤバイ感じじゃない?」

「うぴょぃ!? 小生注目の的!? イヤン見られちゃう!」くねくね

「あー、全く大丈夫じゃないです」

「ダメじゃん!」


 次回:リアが正気?に戻るまで、あと120秒


 (これは嘘予告です)


次回更新は、11/11(金)の予定です。

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