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4-5、だめだ、こいつら……

いつもご覧いただき、ありがとうございます。


「さぁ! 全力で行くぜ!!」

「いや、これはおかしい」

 ヴァレトの目の前では、脳筋担当の攻略対象であるルフスが、赤い髪が逆立つほど闘気を漲らせ、好戦的な笑みを彼に向けていた。


 模擬戦の第1回戦は、ヴァレト対ルスフとなった。

 

「なんでこうなった……」



──遡ること数分前。



契約者(フィルマ)であるお前らには、今更な話を長々としたが~」

 近衛兵団団長のグラリスが、間延びする喋り方で言う。

「結局、自分の約定体(アバタル)は、使って慣れるしかないんだよなぁ~」

 グラリスの言葉に、模擬戦大好きなマテリは瞳をキラキラと輝かせ、ヴァレトは「はぁ、やっぱり」と諦観モードを漂わせ、模擬戦に苦い思い出しかないリアは顔色を悪くする。



「だから、お前ら適当な相手選んで、1対1で模擬戦なー」

 グラリスは頭の後ろをガリガリと掻きながら、気だるげに告げる。

 一同の大半は、「模擬戦、マジ?」といった様子で周囲をキョロキョロと見回し、お互いに「え、マジでやるの?」といった視線を送りあっているが、数名、鋭い視線を周囲に向けている者たちがいた。彼らは、"獲物を物色"しているのだ。もちろん、そのうちの1人は、マテリである。



「私一人で戦うなんて無理ですぅ」

 戸惑う周囲に空気を読んでか読まずか、一石どころか岩を投げ込む女。乙女ゲームヒロインであるイグノーラである。すぐ横にいたフィデス王太子を見上げ、涙目で訴える。


 ゲームのシナリオを知らないヴァレトは、「本編のシナリオ展開なのかなぁ」などと思いながら眺めていたが……、


「騎士爵として、契約者(フィルマ)として、1人で戦うこと、必要に迫られる時が来ることも考えられます。その時に"できません"では済みませんよ」

 なんと、マテリがイグノーラを嗜めた。

 完全に意表を突いたマテリの行動に、ヴァレトもリアも反応できなかった。ヴァレトは急いでリアを見る。が、リアは瞠目し、口を半開きでマテリを見つめていた。


(この表情は……、シナリオ通りなのか? 想定外なのか? わからん……)

 役に立たないリアからは目を逸らし、ヴァレトは再びマテリとイグノーラに視線を向ける。

 ヴァレトもマテリの意見に全面的に賛成であるため、その内容に異論はないのだが、果たしてこれは"乙女ゲーム"的にはどのようなことになるのか。


 イグノーラは、泣き崩れそうな、しかし、それをぐっとこらえるような表情で、そして恐れるような視線をマテリに向ける。そんなイグノーラとマテリの間に、1人の男が割り込んだ。

「イグノーラはオレが守る。1人で戦わねばならない状況になどさせはしない!」

 イグノーラをぐいっと背に庇うように前に出たのはフィデス王太子であった。


「殿下、しかし……」

「そうですね。僕たちが彼女を守りますからね」

 さらに意見を述べようとしたマテリを遮り、青髪ショタ枠のカルリディが王太子に並ぶ。


「トノさまのショタ声、ハァハァ」

 ヴァレトの横から、気持ち悪い声が聞こえた。どうやらカルリディの声にリアが反応しているようである。

 リアはハァハァと息を荒くしており、涎まで垂らしている。が、ヴァレトは努めてそちらに視線を向けないようにした。

「……」

 黒髪で陰のある攻略対象枠のラクトゥスは、そんなリアの異常な表情に目を剥いて驚愕している……。ような気配がしたが、ヴァレトはそれも見ないフリをした。



 イグノーラを庇うフィデス王太子、カルリディと相対するマテリ。両者の緊張感が高まる中、フィデス王太子を挟んで、カルリディとは逆サイドに赤髪脳筋枠ルスフが立つ。


「オレはそれより、そこの騎士爵さんの力を試したいぜ!」

 一瞬、うんうんと頷いたフィデス王太子だが、言葉の内容を咀嚼し、脳が理解した瞬間、「え?」という表情をルスフに向けた。

 "さすが脳筋"としか言えない、全く空気を読まない発言に、一同がルスフに驚愕の視線を向け、その後に彼が指さす先へと視線をスライドさせていく。そうやって、全員の視線はヴァレトへと注がれた。

「……え? 私ですか?」

 たっぷりと時間をかけ、ご指名を受けたのが自分であると気が付いたヴァレトは、素っ頓狂な声で答えた。


 この瞬間、この場にいるルスフ以外の全員が同じ気持ちを抱いた。



──この脳筋、いきなり何言ってるんだ?



「りょうきゅ~ん、イイワァ、そこにしびれる、あこがれるぅぅ~」

 いや、1名例外がいた。


「「……・」」

 マテリとヴァレトは、既にリアの奇行に反応するのをやめている。

「……」

 まだまだ耐性の無いラクトゥスは、再びあんぐりと口を開け、リアのヤバイ表情にただただ驚愕している。



 一瞬の間の後、

「……はぁ、これだから脳筋は……」

 攻略対象グループで最初に再起動した青髪ショタ枠のカルリディが、ヤレヤレといった様子で零した。


「ということで、オレと模擬戦しようぜ! 騎士爵さんよぉぉ!!」

 ブレない脳筋は、改めてヴァレトへ模擬戦を申し込んだ。


「……これも授業の一環、ということであれば、仕方ないですね」

 とりあえず、マテリとイグノーラの衝突を回避できるならば、と、ヴァレトは闘技場中央部へと向け、歩き始めた。

「はっ! さすがだぜ!!」

 ルスフもヴァレトを追い、楽しそうに闘技場中央部へと向かう。


「なっ……、え?」

 ここで一番慌てたのはイグノーラであった。彼女にとって、この展開は完全に想定外である。

 ゲームでは、ここで悪役令嬢を対戦相手とし、攻略対象の1人とペアで戦闘チュートリアルになるはずであった。現に途中まではほぼゲーム通りの展開であった。にも関わらず、気が付けばモブと脳筋が戦う展開になっているのである。

 今からでも誰かこの流れを変える人間が居ないか、イグノーラは周囲を見回す。



 フィデス王太子は、イグノーラと目が合うと、眩しい笑顔でサムズアップして見せた。「守ったぞ!」と満足気である。

(守らなくていいからチュートリアルしろっての!)


 カルリディは、ルスフを見送り、ヤレヤレ状態のままである。

(クールぶって役に立たないガキが!)


 少し離れた位置にいるラクトゥスは、何を考えているのか、何も考えていないのか、無表情でルスフを見送る。

(この根暗が!)


 当のルスフは、対戦相手に夢中で、どう猛な笑みを浮かべている。

(くそ脳筋が! お前のせいだろうが!)


「だめだ、こいつら……」

 イグノーラの口からは、おおよそヒロインが呟くとは思えない悪態の言葉が漏れたが、幸か不幸か、それは誰の耳にも届かなかった。



+++++++++++++++++

<次回予告>


「前話のラストで"次回バトル展開!" みたいな引き方したのに、今回も戦闘無し!?」

「いや、主に貴女の奇行が原因ですが?」

「これが本作のメインコンテンツでしょ? これ無かったら、凡よ、凡!」

「いや、凡って……」

「それに、今回は小生のせいだけ違いますぅ~、脳筋も戦犯ですぅ~!」

「"脳筋も"と言っているあたり、一応自分にも原因があるとは認識しているのですね」

「だからメインコンテンツだっての!」

「そんなメインコンテンツ嫌だ」


 次回:決着! 脳筋戦!!


 (これは嘘予告?です)



次回更新は、11/9(水)の予定です。

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