2-8、"これ"を壊されるのは不都合があるのでしょう!!
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ヴァレト、マテリ、リア、ついでにテガトの4人が冒険者ギルドで活動を始めて半年ほどが経った。その間、4人は魔物討伐を中心に、不人気な依頼を着々とこなした。
「正直、小生は自分を褒めたいですね! こんなに続けられるなんて思わないでしょ!!」
「俺は手当増やしてもらえたんで、がんばりますけどね……」
冒険者ギルドに併設された酒場の一席で、リアとテガトが盛り上がっている。なにやら"境遇的な何か"で通じ合うものがあるのか、最近の2人は妙にウマが合う。
ちなみに、これから依頼を受ける予定であるため、アルコールは厳禁である。なお、この世界では、なぜか"日本風"の制度がいろいろとあるため、「お酒は20歳になってから」であるため、リアはどのみちノンアルコール一択なのだが……。
「実は、マテリ様に受けていただきたい依頼があります」
ギルドのカウンターで、マテリとヴァレトは受付嬢から"依頼"についての相談を受けていた。
「北の森での、"謎の怪物"の目撃報告が何件も出ていまして……」
「"ソレ"を調査、もしくは討伐してほしいということですか?」
受付嬢の言葉を先回りし、マテリが問いかける。
「はい」
受付嬢は神妙な様子でうなづく。
「その特徴は?」
「赤色の全身鎧姿なのですが、明らかに人とは思えない気配を発しており、"ナワバリ"に入り込まない限りは、身じろぎすらしないとか……」
受付嬢の言葉に、ヴァレトは逡巡し、
「不死者でしょうか?」
「それも含めて、の調査でしょう。一当してみる必要があるかもしれませんね……」
慎重に言葉を選びつつも、マテリは一瞬闘志を覗かせた。
(一当どころか、がっつり戦う気満々じゃないですか……)
ヴァレトは小さく嘆息しつつも、それに異を唱えることはなく。そして、マテリは粛々と依頼の受諾を進めた。
****************
「というわけで、ここ"北の森"で目撃されたという"謎の怪物"を探します」
マテリの発言に、リアが挙手する。
「はい! ここまで何も知らされずに連れて来られてしまったので、早々に辞退し、帰宅したく存じます!」
天を突き刺さんばかりな勢いで振り上げられた挙手と、それに負けないほどの堂々とした口調で、リアは宣言する。
「では行きますよ」
「マテリ様のスルースキルが上がりすぎぃぃぃ!!」
しかし、華麗にスルーされた。
「確かに少々異常っすね」
森に入ってすぐ、テガトが冷や汗を垂らしつつ、告げる。
「魔物も、動物も居ない。こんな静かな森は、見たことがねぇです」
テガトは顎に垂れた汗を袖で拭い、「マジで撤退した方がいいかも」と付け加えた。
「あ……」
全員が停止するように、テガトは手をかざした。
「確実にアレっすね……」
テガトの視線の先、森の木々の間に、真っ赤な全身鎧が立っていた。
甲冑の隙間から、時折ゆらゆらと炎のような赤いオーラが漏れ、頭部バイザーの隙間からは爛々と赤く光る眼が覗く。が、その輝きには人間味が感じられない。
更に、赤い全身鎧の更に奥には、正体不明な黒い球体が、ぷかぷかと森の中に浮かんでいる。
「どうやら、あの黒い球を守っているようですね……」
マテリはそう言いつつ、天使を前に出し、剣と盾を構える。それに交戦の意思を見出したのか、赤い全身鎧も、いつの間にか赤い大剣をその右手に持っていた。
「まずは私が"力"を見ます」
マテリの天使が盾を前に飛翔し、赤い全身鎧へと接近する。その突撃に対応するように、赤い全身鎧は大剣を水平に構え……、そして鎧の背中が展開しスラスターノズルが出現。赤い噴射光を発しつつ、ノズルの供する推進力を生かし、天使以上の速度で突進し、両者の相対距離は瞬く間にゼロへと近づく!
「!!」
瞬間、マテリは天使に防御姿勢を取らせる。天使は盾を構え、更にフロートシールドを前方に2枚展開、が、赤い全身鎧はそれを難なく貫通し、天使は盾ごと、横一文字に両断された。
消滅する天使。
「なっ!」
あまりに一瞬で天使を破壊されたマテリが瞠目した瞬間、そこへ追撃とばかりに赤い全身鎧が急接近していた。
「お嬢様!!」
ヴァレトはマテリを護るように抱え、2人の前にはヴァレト約定体が立ち、赤い全身鎧に相対する。
(止められるか!?)
まるでギロチンの刃のような大剣が2人に向け振り下ろされる。
「うぎゃぁぁぁぁぁ!!」
そこへ飛び込む影。なんとリアが体ごとそこへ飛び込んできて、
「破壊不能で絶対無敵ぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」
ガキィィィィィンという、凄まじい衝突音が響き、赤い全身鎧の打ち下ろしは、リアの鎧によって止められた。
「よ、よかった! 止まった! 死ぬかと思った!!」
「テガト! 明らかに約定体です! 貴方は下がって!!」
リアとマテリの声が同時に響く。そしてテガトは目にも止まらぬ速さで森の中へと消え、赤い全身鎧の左側では、茶褐色の拳闘士が拳を振りかぶっていた。
「SHIAAAAAAA!!!」
拳闘士が素早く連打を赤い全身鎧へと繰り出す。が、敵は素早く大剣を切り返し、それをすべて打ち払う。
「くっ」
打ち払われた拳闘士の両拳は、細かくひび割れていた。
「慈愛齎す天翼ァァァ!!」
マテリが再度天使を現出させ、拳闘士とは逆サイドから全身鎧へと切りかかる。
「RAFAAAAAAAA!!!」
「SHIAAAAAAA!!!」
全身鎧の左右から、マテリの天使とヴァレトの拳闘士が連撃を叩き込む。だが、全身鎧はそのラッシュを脅威的な剣捌きでしのぐ。しかし、すべてを防ぐことはできず、一部の攻撃は剣の結界を通過し、全身鎧へと命中した。命中したが、目に見えて大したダメージとはなっていない……、かに思われた。
「何か、」
赤い全身鎧へ通ったダメージは、振動となって鎧を駆け巡る。駆け巡り、更に攻撃が命中するたびにそれが増幅されていく。
「何か不味い!!」
増幅されたエネルギーは、鎧の背中にあるスラスターから噴出。何本もの光の剣を形成し、歪曲軌道で拳闘士へと殺到、その全身を貫いた。
「ヴァレト!!」
「だ、ダメージ、反射!? いや、移し替えの類か!」
穴だらけになった拳闘士が消失し、そのまま無防備なヴァレトに向け、全身鎧が大剣の突きで突進してくる。
「無能の化生!!」
ヴァレトは自身の目前に再度拳闘士を現出させ、その突進の切っ先を白刃取りで止めた。が、その大剣は赤熱しており、拳闘士の両手が音を立てて焼ける。
「ヴァレ── っ!」
マテリがヴァレトの身を案じ、視線を向けた瞬間、ヴァレトと目が合った。アイコンタクトで察したマテリと天使は踵を返す。
「"これ"を守るというなら、"これ"を壊されるのは不都合があるのでしょう!!」
天使は"黒い球体"目掛け、白銀の剣を振り下ろした。バキィィィと硬質な音が鳴り、黒い球体の表面がわずかに削れる。一撃で無理なら連撃だ。そう悟り、剣を切り返した瞬間──
「お嬢様ぁぁぁぁ!!」
ヴァレトの絶叫にマテリが振り返る。その眼前には、大剣を振り上げ、今まさにマテリに向けて振り下ろさんとしている赤い全身鎧が居た。
「あ……」
間近で見たバイザーから除く目は、最初に目撃したソレよりも、更に異常な輝きを放っていた。そう、まるでそれは激しい憎悪のように……。
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<次回予告>
「あ、あれは!」
「リア、知っているのか?」
「さま○うよろい!!」
「ドラ○エかよ!」
「まぼろしを見せるマ○ーサが効きやすいですよ!!」
「いや、呪文とかある世界観違うし」
次回:仲間になるサイモン
(これは嘘予告です)
次回更新は、10/14(金)の予定です。