2-7、ありがとう……。救ってくれて……
いつもご覧いただき、ありがとうございます。
最新話更新です。
今回はなんと! "ポロリ"があります!!
オークの巣穴に侵攻し、その奥深くまでたどり着いたマテリ達一行。洞窟を進む彼らの先には、明りが灯る広い空間があった。
その広場に近づくにつれ、様子を伺うまでもなく、中で行われていることは容易に知れた。
複数のオークがブヒブヒと気色の悪い声を上げ、その合間には若い女性のモノと思われる悲鳴や呻き声が混ざる。
あっという間に怒りが沸点に達したマテリは、徐々にその速度を増し、最高速で広場へと突入した。
「PuGA──」
入ってすぐにいたオークの1体は、わずかに声を出した瞬間、首と胴体が分離していた。
広場には、それ以外にも、5体のオークが居た。中でも2体は肌の色が異なり、体格も殊更大柄であった。
「PuGYAAAAAAAAA!!」
それら5体のオークは、耽っていた猥雑な行為を中断し、怒声を発しながら一斉にマテリに向かって襲い掛かった。
「お嬢! ハイオークだ!! 肌の色が違う2体には気をつけ──」
遅れて広場に飛び込んだテガトの忠告が終わるより早く、5体の五体はバラバラに分解されていた。
「……、るまでもなかったっすね……」
テガトの緊張感は早々に霧散した。切り替えの早い男である。
オークの残骸の先、そこには7名の女性が横たわっていた。
全員裸で、内3名は意識があり、呻きつつも体を起こそうとした。が、それぞれに手足が折られていたり、酷い場合は切断されており、まともに起き上がることすらできない。
他4名は意識もなく、浅く息をしていることで生きていることがわかる、という状態だった。
「くっ……」
マテリは、苦悶の表情を浮かべつつ、まずは意識のある3名に、自分たちの外套など肌を隠せる物を渡す。
残りの4名は、皆内蔵が潰されており、口や下腹部から血を流していた。まさに、"辛うじて生きている"という状態である。
「お嬢は外へ。ここは俺にお任せください」
テガトがマテリの視線を遮るように前に出る。が、マテリは逃げなかった。
「……、いえ、上に立つ者であれば、時に非情な判断や、手を汚す覚悟が必要となります。それに比べれば、彼女らに"救済"を与えることは、慈悲でありましょう」
内臓が潰されてしまっている4名は、連れ出すことも治療することもできない。ならば、ひと思いに介錯してやることが救いである。
「お嬢様。僕が──」
「いえ、私が……、私に、やらせてください」
ヴァレトの言葉を制し、マテリは今なお苦しむ被害者たちの前に立ち、天使がその横に立つ。手にある白銀の剣が鈍く光る。
「ごめんなさい。私に癒す力が残っていれば……」
マテリは悲痛な表情で、天使に白銀の剣を振り上げさせる。
ヴァレトは、そんな彼女の後姿を見ていることしかできない。彼は指先が食い込み血が出るほどに、強く拳を握りしめた。そんなヴァレトの想いが通じたのか、それとも応えたのか、彼が漏らした煌気を彼の約定体が吸い上げた。直後、ヴァレトとその約定体を中心に、白い息吹が吹き荒れる。
「ヴァレト! いったい何を!?」
マテリに聞かれても、彼自身も何が起こっているのかわからない。白の息吹、白いオーラは彼の約定体に収束し、茶褐色で陶器のような体に行く筋もの帯状の白い光が走る。その"ライン"は全身に広がり、白い光を湛える。
ヴァレトの約定体が変形し、全身が白に変色、白い司祭服のような見た目に変化した。が、相変わらず顔面は無機質無表情である。
「ヴァレト……、約定体は、どうなったのですか……?」
マテリが恐る恐るといった様子で、ヴァレトの約定体に近づく。
何が起こったのかヴァレトにもわからない。しかし、"何ができるのか"については、自然と理解できた。
「お嬢様。任せてください」
直後、白司祭が姿勢を低くしたまま、倒れ伏している被害者たちに向けて疾走する。
「ヴァレト!?」
「な、なにを!?」
マテリやテガトの声を無視し、白司祭がその拳打の連打を被害者たちに叩き込む。
「ヴァレトォォォォォ!!──!?」
見かねたマテリが被害者たちの前に割り込み、その身に白司祭の拳打を受けた。が、その異常な"効果"にマテリの頭が混乱した。
「え、こ、これは……」
ダメージが全く無い。どころか、昨日の模擬戦での打ち身が瞬間的に治癒されていた。
「驚かせてしまい申し訳ありません、少々絵面が悪かったですね」
ヴァレトの謝罪に続くように、マテリの背後でごそごそと誰かが動く音が聞こえる。
振り返ると、あれほど重症だった被害者たちが意識を取り戻し、体を起こしていた。体の傷は癒え、折られていた手足まで治っている。
「失った四肢までは治せないようです。力及ばず申し訳ありません」
あっけにとられるマテリと被害者たちに向け、ヴァレトは頭を下げた。
「いえ、ありがとう……。救ってくれて……」
マテリはそんなヴァレトの手を取り、胸の前で両手で包むように握る。彼女の瞳からは光るモノが零れ落ちていた。
「うん。小生すっごく空気。まじ来なくてよかったんじゃない? っていうか、むしろ自分の役に立たない具合に軽くへこむわー」
「なんか、親近感覚えますよ」
2人だけで盛り上がるマテリとヴァレト、その様子を遠巻きに見ていたリアが呟き、それにテガトが賛同するが……、
「ちょ、違うから! ってか、おっさんと親近感とか共有しないし!!」
「……ひどくないっすか?」
その後、ヴァレトが一旦約定体を消し、再度出現させたときには、元の茶褐色な拳闘士に戻っていた。
その点については、ヴァレトはホッとした。白司祭の能力は稀有で有用ではあるが、攻撃力が無くなってしまうのは困る。彼は、"大切な主人"を護らねばならないのだ。
さらに、煌気を2ポイントほど追加投入することで、再び白司祭に変化できることも確認した。
「こういう能力、っていうことなんでしょうか……」
「ふふ、貴方の優しさが、約定体にも影響したのかもしれませんね」
約定体の能力を試し、独り言をつぶやいたヴァレトに、マテリが優しく語りかけた。
「もったいないお言葉です」
ヴァレトは照れながら、その言葉を受け入れた。
「あのー、小生も居るんで~。2人だけの世界を作るのは小生居ないときにしてほしいんですけど~」
リアの抗議は2人の世界には届かず、侯爵家庭園にむなしく響いた。
=================
<情報開示>
無能の化生
・3等級(顕現に必要な煌気は3ポイント)
・属性<無色>
・攻撃力:高 防御力:高 耐久性:高
・能力:[煌気を2ポイント消費]:変異する
↓
無能の化生<白変異>
・属性<白>
・攻撃力:マイナス高 防御力:並 耐久性:並
・特徴:攻撃力がマイナスであるため、攻撃対象を回復する効果がある
・能力[煌気を0ポイント消費]:変異を解除する
+++++++++++++++++
<次回予告>
「ヒストリアお嬢さん、また出番がほとんどなかったっすね」
「違うもん! ちゃんと仕事したもん! ほら! お宝拾ってきた!!」
「ほぅ?」
「じゃじゃーん!!」 (*゜▽゜)ノ★
「ちょ! それ何処から拾ってきたんですかい!!」
「えっと、どっか他の作品から?」
「だめです! 返してきなさい!」
「えぇ~」
次回:★は自分で稼げ!
(いや、ほんと、お願いします)
え? ポロリはどこにあったのかって? ほら、オークの"アレ"がポロリしましたよ?
次回更新は、10/12(水)の予定です。