第80話「生活魔法かな?」
今、私は驢馬に乗りながら、お腹が空いたのでおにぎりを食べている。
他は干し肉をしがんでいたりしながら、荒野を進んでいる。
「ノノ様、おにぎり美味しいです」
馬車に乗ってるルイさんにはおにぎりを渡している。
他の団員には、おにぎりは馬上だと揺れるので食べにくいのと、馬上で手が塞がるのはちょっとどうかということで、あまり良い評判では無い。
確かに干し肉は割と長く口の中にあるし、おにぎりみたいに散けることも無いし、口にくわえておけば、手が塞がることもない。
ここら辺は傭兵とそうじゃない私との差かねー。
ちなみに和人であるゲンジさんも勿論、干し肉だったりする。
「相変わらず、器用に魔法を使ってるわね」
「ん?」
エミリーさんが近づいてきた。
「それよ、その魔法の腕」
私は魔法の腕でおにぎりを持って食べている。……馬上だしね。
「魔導書がおにぎりに変わってる……」
「ノノ様の魔力はどうなってるんです?」
シンシアさんとレミさんも近づいてきた。
どうなってると言われても。
「この程度でどうにかなる量では無いですよ」
エミリーさん以下、皆、苦笑いだ。
「それ以前にその魔法は、何魔法なのよ?」
「んー? 生活魔法かな?」
「そんな魔法はありません。てか、どの魔導書に載ってるのよ」
エミリーさんが聞いてきたけど、他のみんなも頷いている。
「……どの魔導書にも載ってないと思いますよ。私のオリジナルなので」
普通こんな使い方は考えないからね。それにそれなりの魔力も消費する。
「オリジナルって、どういうときに思いつくのよ?」
「家で掃除してたときに、ですねー。ものを浮かす魔法があるじゃ無いですか。それを使って、高いところにあるものを動かしたときに思いついたんですよ。結構、試行錯誤して、今の形になりました。大魔導師の方達には結構良い評判なんですよ」
「ノノ……」
「「ノノ様……」」
え、3人がかわいそうなものを見るような目で見てるけど、何故?
「他にもいろいろありそうだけど、普通だと使わない気がして仕方が無いわ」
そんなことはないと思うけどね。
「ちなみに纏めたものが、この本なんですけど」
そう言って、エミリーさんに渡してみる。
「纏めては居るんだ。この本、どうするの?」
パラパラ見ながら聞いてくる。
「うちの本棚に置いてますよ」
「ふうん」
シンシアさんとレミさんも気になるようで、エミリーさんの横から眺めている。
ルイさんは、荷台で魔導書を読んでいる。……おにぎりは食べ終わったようね。
「……凄く読みやすいし、分かり安いけど、うちらみたいな傭兵稼業では、どれも使えないわね。ノノ、他の子に見せても?」
「構いませんよ」
エミリーさんがシンシアさんとレミさんにも見るように促す。
「シンシア、レミも見てみなさい。魔法への考え方が変わるわよ」
ほう、エミリーさんは、違う使い方を思いついたようですね。
「これ、複合魔法ですか。系統が違うと難しいものもありますが、合理的なものが多いですね」
「系統で考えると、まず排除してしまう組み合わせですね。これが本当に出来るのなら、凄く便利ですが……」
2人とも唸りながら見ている。
「そう、便利なのよ。得手不得手を考えても。ただし使えればだけどね」
3人が黙ってしまった。
「そう難しく考えなくても良いんですよ。まずは試してみて、ダメなら何故ダメなのか、属性が違うからと思考を止めると何も出来ませんよ。何度か言いましたけど、魔法は想像力なのです。便宜上、属性毎で分けてはいますが、別に他属性と併せちゃダメとかはないんですよ」
まあ、そうは言ってもなかなか難しいんだけどね。
「ノノの言わんとしていることは分かるよ。でもね、頭で分かっても実践でやってみて出来るかというと、出来なくてヤッパリになるの」
「「ですねー」」
シンシアさんとレミさんがハモった。
「そしてそこでオシマイ。ノノだけ特別っと思っちゃうんだよ」
ふうむ、こればっかりはどうしようも無いか。
「おーい、エミリー、今日はここまでだそうだ。また、後衛の女子だけで集まってる?」
グラインさんがやって来て、私たちが集まってるのを見てやや呆れている。
「お前ら、また魔法談義か?」
言わんとすることは分かる。間違ってないしね。
「グライン、たまたまよ」
エミリーさんはたまたまというが、果たしてそうかな?
「まあ、いいけどな。それより、今日はここで野営だそうだ。まあ、この辺りはどこも変わらんからな」
「そうね。殺風景すぎて、なんとも言えないけど」
確かに変わり映えの無い殺風景な景色だ。それもまだずっと続くという……。
「それと商隊の方から、打ち合わせをしたいから野営の準備が終わったら来て欲しいそうだ」
「了解-、じゃあ、みんな野営の準備をして頂戴」
だだっ広いだけで、何も無い場所で野営となった。
「ルイさん、パパッとやっちゃいますから、ちょっと待ってね」
「はい、わかりました。手伝うこととかは無いですか?」
「いつものテントと調理セットを出すだけだから、ないよー」
私は荷台から降りてきたルイさんにそう言って、魔法の鞄からいつものテントと調理セットを出した。
「ノノとルイさんはもう終わってるし……」
おっと、エミリーさんがこっちにまだ居たわ。
「エミリーさん、魔法の件ですが、ご飯を食べてからで良いですよね?」
「そうね、設営終わったら商隊に行く必要もあるから、それでお願いするわ」
そうなるよねー。あ、そうだ。
「ところで、エミリーさんの食事はどうします?」
これを聞いておかないと。
「んー、多分、商隊の方で打ち合わせの時に食事が出るんじゃないかな。設営終わったらすぐにってことは、食事を取りながらになると思うのよね。恐らくだけど、今日、長めの打ち合わせをして、明日以降はその修正の打ち合わせで終わるようにすると思うのよ」
「それじゃ、無しですね」
「悪いわね」
そう言って、エミリーさんは野営の準備をしている残月の団員の方も見ている。
「終わったぽいから、行ってくるわ」
エミリーさんの後ろ姿を見送る。
「じゃあ、ルイさん、食事にしましょう。今日は肉を茹でてシチューっぽいものを作りますよ」
「ノノ様、そういったことは弟子がすると思うのですが?」
ルイさんが聞いてくるけど、弟子がとか、考えたことが無いんだよねー。
「う~ん、弟子を取ったことが無いから気が付かなかったよ。でも、今はまだ良いかな。ルイさん、今は商隊に派遣されているでしょう。商隊でのお仕事が終わるまではこれまでどおりでいいよ。商隊との契約が先だからね。それを反故には出来ないからね」
後先を考えるとね。商隊からすれば司祭の方を優先しそうだけど、それはちょっと違う気がするんだよね。
「それと、弟子になったことは機会を見て私の方から商隊長に話すので、それまでは黙っておくこと。いいですね?」
「え、それは何故です?」
変に気を遣われるのが、嫌なんだよねー。
「ちゃんと筋を通しておきたいからです。まあ、商隊長が気を遣いそうなので、この護衛任務が終わるまでは話さない予定ですが」
終われば自由だ! 教会でちょっと手続きはあるだろうけど。
「そういうことだから、ルイさんはこの机に食器を並べてください」
私は机と食器を魔法の鞄から取り出して、ルイさんにお願いすることにした。
誤字・脱字は見つけ次第、修正しています。




