第76話「息抜き」
いろんなことがありすぎて、ルイさんがふらついてきたので、一端お開きしにしてルイさんには先に部屋に戻って貰った。
「ノノさんや、これまで賢者ウェヌスが弟子を取ったとか、ノーマッドの誰某に師事したとか聞いたことが無いんだけど、何か理由はあるの?」
エミリーさんが不意に聞いてきた。
「うちで門前払いにしているとかでは無いですが、我が家に来ようとすると、来る方法がフォルス王国を通る意外には無いので、あいつらのせいでエルフ以外は通せんぼになってるんですよ。まあ、ミンダスの方から来られなくも無いですが、危険すぎて辿り着いた人は居ませんね」
そう、フォルス王国のエルフ達は自分達以外を見下している。神に選ばれしーとか、香ばしいことを平気でいう連中が多い。……滅ぼされかけたことは忘れてしまったんだろうか?
「ノノ、険しい顔になっているよ。まあ、確かにあの国のエルフはちょっとキツい感じはする。でも、神弓の使い手とまで呼ばれるロンネ・フェルトは違ったよ。フォルス王国を離れて、結構経つと言ってたけど……」
何やら懐かしげに話している。ん?
「お知り合いですか?」
「うちの団がまだ人数も少なくて、彼方此方をフラフラしてたときに、今のでこそ勇者一行とか言われてるアレックス達と一緒に魔物討伐をしたことがあるのよ。彼女は人当たりも良くて、こーいうエルフも居るんだと感心したのよ」
「あの人、フォルス王国の王族ですよ」
エミリーさんが吃驚している。
「え、凄く話しやすかったけどね。ノノから聞いてるフォルス王国のエルフ達と違いすぎるし、フォルス王国の王族なら魔法使いなんじゃないの」
「彼女、うちの父様の弟子だったみたいなんです。魔法が苦手で、ご近所のよしみでうちの母様に相談に来たそうです。そのときにうちの父様から弓の素質があると言われて、そのまま弟子入り、我が家からライジョウドウを預けられるぐらいの腕前に育ったと母様から聞きましたよ。つい最近、うちの母様に勇者一行に加わって貰えないかと交渉に来られてました。私が会ったのはその時だけですね-」
まあ、彼女のせいで私はここに居るのだけどね。
「ノノ、情報が多過ぎというか、掻い摘まみすぎでしょう。もっと、こう、説明が必要とは思わないの?」
「まあ、一緒に住んでたとかあれば、もうちょっと話せるんですけど、今話したことも最近になって、初めて知ったことなので、彼女の為人も分かりませんし、弓の腕前も、私は見てないので分からないんですよ。ついこの間まで面識さえ無かったですからね」
そう、居なかったときのことは答えられない。
「そーなんだ。ノノって、一所に居ない感じ?」
「メリハリがハッキリしてるんですよ。家に居るときは、ずぅぅぅっと家に居ますし、居ないときは10年単位で不在ですね。ここ十数年ぐらいは母様の調子が悪いので、家に居ましたが、そのお陰で何故か勇者一行の選抜試験を受けることになっちゃいましたね。母様が元気なら、わたしが出向くことも無かったですけどねー……」
そう、家に居たためにこんなことに。
「ところで、ノノは弟子とか取らないの?」
「おや? 気になりますか?」
「ほら、割と人に魔法とか教えるの苦にしてないし、的確じゃん。それに教えてるときは楽しそう見えるよ」
あー確かにね、教えるのは楽しいかも知れない。
「それは、そうですね。確かに思い当たりますが、人に教えるのって、自分の理解度を測るっていう意味合いもあるんですよ。それもあって、楽しそうに見えるのかも知れません」
「それもそうか。ちゃんと理解してないと教えることは出来なくはないけど、質問には答えられないもんね。……なるほど、アルテオが人に教えるのが苦手というのは、そういうことか。感覚で覚えているから説明できないのか」
エミリーさん、以外と気にしてたのか。
「ところで、エミリーさんは人に教えるのは得意ですか?」
話題を変えておこう。弟子の話は長くなりそうだし。
「私は魔法を教えることはちょっと苦手かな。魔法陣の書き方とか読み解き方を教えるのは得意なんだけどね。魔法陣は書いたとおりのことをそのまま説明すれば良いけど、魔法は何故そうなるかとか聞かれても、ねーって感じだよ」
やや、呆れ気味にエミリーさんは手を大げさに広げながらそう言った。
「魔法は魔導書を読んでも抽象的ですからね。それに比べると魔法陣は確かに書いてるとおりにしか魔法が発現しないですから、説明はしやすいですね」
魔法は想像の力が必要とも言うしね。抽象的なのは仕方が無いのかも知れない。
「さて、ノノ、私たちもそろそろ寝ないと明日が辛いわよ」
エミリーさんにそう言われて、結構な時間が経っていることに気がついた。
「明日は国境越えですか?」
「そうなると思うわよ。国境を越えると暫くは荒野だから、ゆっくりは出来なくなるから、今のうちに疲れを残さないように休んでおく方が良いかもね。……ノノは違うかもだけど」
そう言って、解散となった。
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