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第75話「契約の証、それとも呪いの指輪?」

 ルイさんを正式に弟子にすることになったけど……


「ルイさん、確か教会で師事していた司祭が居たと聞いたけど、その人は師匠ではないの?」

「それは、師匠とかではなく、学校の教師と生徒みたいな関係です。教会所属の司祭が教師のように助司祭をまとめて指導するんです。習う内容毎に担当する司祭も違います。面倒見のいい人もいれば、そうでない人も居ました。私にも親切にして下さる方もいらっしゃいましたが、弟子にとまでは考えてはおられませんでしたよ。考えてもみて下さい。初歩の治癒魔法もまともに使えない貴族出の女を弟子にしたがると思いますか?」


 んー、私には分からないなー。


「それは、私には分からないですね。エミリーさんはどうです?」


 自分で分からないので、エミリーさんに聞いてみる。


「私は分かるかな。ルイさんの実家が代替わりでもした後なら弟子にしてもいいかも知れないけど、そうでなければ、ルイさんの実家からの寄付を教会分とは別に受け取ってるんじゃないかとか疑われるというのが一番で、あとは、もしもの時は実家に戻ることもあるから弟子には取りにくいと思う。恐らくだけど、教会の上層部も同じ考えだと思う。司祭の方も元貴族とかならねじ伏せられるけど、治癒魔法もまともに使えないような弟子じゃ、弟子に取った方の評価にも係わってくるからね。お前の教え方に問題があるからだとか言われかねないじゃない。教会内ので発言力も低くくなるし、何も良いことがないわよ」


 なるほど。弟子にしても旨みが無いね。


「何となく分かりました。ルイさんを弟子にする旨みが全く見いだせないということですね」

「ザックリ言うとそうなるわ。治癒魔法も微妙、実家の男爵家も微妙となると、教会に置いておくのは良いけど、弟子に取るには魅力も旨みも無い、というのが、教会側の考えなのよ。そうじゃなければ、商隊に派遣なんかしないでしょうよ」


 エミリーさん、本人の居る前でも容赦は無い。でも、貴族なら政略結婚とかもあるかと思うんだけど、何故教会送りだったんだろう?


「ノノ、顔の出てるわよ。領地持ちの貴族の場合、政略結婚も視野に入るんだけど、ルイさんのご実家の場所が悪いのよ。魔王領が近いのがね、どうしてもネックになる。恐らくそれもあって、政略結婚の対象からも外れたから、教会へ預けられたのでしょうね」


 ルイさんが黙って頷いている。少しして、ルイさんが口を開いた


「魔力量も多かったというのもあって、問題なく教会には受け入れて貰えました。ただ、その、治癒魔法の成功率が著しく低かったこともあり、扱いは悪くなる一方でした。そこに今回の商隊への派遣が決まったんです。派遣の際に言われたのは、商隊には腕の良い治癒魔法使いがいるから、彼の元でしっかり学んでこいと言われました。それで、アルテオさんにお願いしたのですが、さっぱり分からなくて。それでもアルテオさんは私よりかなり腕の良い方でしたので、彼のやり方を真似てみたりもしましたが、居ないよりはマシ、戦闘時は役に立たないと言われてました」


 ああ、アルテオさんの教え方だとこの子は育たないね。うんうん。

 思わず苦笑いしながら、頷く。


「ノノから見て、アルテオは有能なの?」


 アルテオさんかぁ……。本人は有能なんだけどね。


「まあ、有能ですけど、ルイさんに教えるのは向かない人ですね」


 エミリーさんと同じで、感覚派だからなぁー。言わないけど。


「それって、どういうこと?」

「ルイさんは論理的思考で魔法を考えるてるんだと思うんです。何というか、筋道を立てて矛盾なく考え、結論を導き出すといえば分かりますか。それに比べて、アルテオさんは直感的なんです。何でそうなるかは重要では無く、この魔法を唱えると怪我が治るという感じで、何故そうなるのかの部分が無いんですよ。呪文の構成がとかでは無く、こう唱えたらこうなるといった考えですね。ですから、新たな魔法を創造することには向かない。誰かがこう唱えたら、火が付いた。だから自分も同じように唱えれば、火が付く。そう言った考えの人なんです。同じような考え方の人には良いんでしょうけど、ルイさんはそうじゃないので、全くのミスマッチですね」


 んー、感覚派の説明は難しいね。


「魔法ってそういうものじゃないの?」


 エミリーさんも若干、感覚派寄りだからそう思うよね。


「まあ、あながち間違えでは無いんですが、それだけだと、その魔法はそれ以上のことは出来ないんです。エミリーさんなら、恐らく、何故そうなったかを考えて、より強力に効率よくするにはどうすれば良いのかとかを考えると思いますが、アルテオさんにはそれが無いんですよ」


 アルテオさんは魔法使いとしては優秀なんだよね。呪文と結果さえ知っていれば再現できるんだから。ただ、見たことがある以上の結果は出せないけど。


「魔法を道具とみるか、そうじゃないものとしてみるかということか。何となく分かった気がする」


 流石、ご理解いただけたね。エミリーさんの場合だと、とりあえず、やってみてから結果を見た上で呪文解読するから、他の人より理解が早いんだろうなとは思う。思考が柔軟なんだよね。


「ノノ、その目。ちょっと失礼なことを考えていない?」


 す、鋭い。


「……いませんよ。凄いなとは思っていますが」

「まあ、そういうことにしておくわ。ところで弟子の証とかはなくて大丈夫なの?」


 ややあきれ顔だ。あ、弟子の証か。


「ルイさん、ファイネル教で何か無いですか?」


 一応、ファイネル教上の弟子なので確認しておかないと、思ってるのと違うと不味いだろうからね。


「ノノ、あんた司祭なんだから、その辺は知ってないのは不味いんじゃないの?」

「弟子を取る気が全くなかったんで、その辺はスルーしたんです。多分、コレに何か載ってるんでしょうけどね……」


 エミリーさんにそう言われて、聖書とは別のファイネル教の聖典を出しておく。ルイさんが知っていれば見る必要ないし。


「以前、師匠のいらっしゃる方に聞いたことがあります。師匠の魔力を宿したものを身につけてることになってるそうで、その方は腕輪でしたが、イヤリング、指輪、ネックレス、変わったところで短剣とかもあると聞きました」


 いや、短剣とか教会関係者とは思えないよ。


「私が言うのも何だけど、なんか、何でもありだね。特に短剣は何に使うの?って感じだわ」


 ルイさんの説明にエミリーさんが呆れ気味。まあ、分からなくもない。


「ファイネル教の挨拶の際に身につけていれば、その魔力で誰かの弟子になってることが分かると言ってました。私には関係ないことだとそのときは思っていたので『そーなんだー』ぐらいでしたけど」

「え、それだと身に付けてないときは分からないんじゃないの?」

「そこは分からないです。でも、弟子はすぐに辞めることが出来るとも言ってました。師匠が死亡とか行方不明とかもありますし、あと、弟子入りしたけど、思ってたのと違ってたとかあると弟子側からでも取り消しできるようにしてると言ってましたね。何でも過去には契約魔法を使ってた時もあるらしいですが、弟子を小間使いにしてた人が居たらしく、そういうことはダメだと言うことで、弟子からも簡単に取消ができるようになったと聞きましたよ」


 おおぅ。魔法使いの師弟とは全く違って新鮮だね。魔法使いの弟子だと師匠からしか取り消せないからね。魔法契約で縛るから、弟子入りは気を付けないといけない。エミリーさんもその辺はよく知ってるはず。


「魔法使いのそれとは随分違うんだね。魔法使いの場合、契約魔法で縛られるから、弟子を辞める際はなかなか難しいのよ。大抵は何らかの魔法触媒とかお金で解決するんだけど、そうでないときは師弟対決まで……、おっと、これは関係ない話だね」


 師弟対決って、拗れすぎて怖い。でも、ままありそうなのが魔法使いの因果よね。

 

「で、ノノはどうするの?」


 ああ、そうか、その流れだったね。


「そうですね、何でも良いとなると、今渡せるとしたらコレですかね。ちょっとした呪物になりますが、ちゃんと扱えば凄く役立ちますよ」


 私は空間から銀色の指輪を取り出した。


「空間魔法か。どこに仕舞っているのやら。それにしても綺麗な指輪ね」


 エミリーさんが興味深そうに見ている。


「ルイさん、どうぞ。この指輪は人差し指に嵌めるものなんだけど、中に精霊が居るの。その精霊が常に魔力を吸うんだけど、持ち主に危険があるときは助けてくれるという、優れものなのよ。ルイさんの魔力量なら精霊に取られても問題は無いと思う」


 そう言いながら、ルイさんに指輪を渡す。……普通の魔力量だと、ちょっと辛いのよ。


「ノノ、私だとどうなの?」


 それを見ていたエミリーさんが聞いてきた。


「エミリーさんでも大丈夫ですよ。ただ、精霊と相性が良くないので、恐らく、指に嵌まらないと思いますけど」


 エミリーさんが、怪訝な顔をしている。


「それって、どういうこと?」

「水の精霊なんですよ。住んでるのが」


 ああ、という表情をになったのでご理解いただけた模様。


「確かに相性は悪いわね。でも、その精霊って顕現するの?」

「あまりしませんね。余程の時にしか出てきてくれませんが、付けてると魔力の流れを整えてくれるので、体が軽く感じると思います。そして長く嵌めていればですが、それが当たり前のことになるので、指輪を外しても流れが乱れることはなくなりますよ。ルイさんにはちょうど良いかと思います」


 そんな話をしているうちにルイさんが指輪を嵌めたようだ。


「あ、何かビビッと来ました。……確かに指輪をする前とでは体が軽くというか、ちょっと気怠い感じとかが有ったんですが、それが良くなった気がします。いえ、本当に軽くなりました。……ノノ様、呪物、なんですよね?」


 そこまで違うか、という感じのルイさんに聞かれる。いや、そこまで変わる?


「所有者の魔力を吸うので呪物寄りですよ。しかも、簡単には抜けません」


 エミリーさんとルイさん、二人とも驚いている。


「ノノ、それって……」

「ノノ様、どうすれば良いんでしょう?」


 まあ、そうなるよね。でも私が居るので大丈夫。


「私が抜くことが出来るので大丈夫です。嵌めてみないと実際の相性が分からないので、黙ってました。幸いなことに相性が非常に良いみたいなので、そのまま付けておいてください」


 ルイさんを見てるともの凄く相性は良さそう。


「でも、抜けないんですよね?」

「ルイさんがその指輪を気に入らないなら、私なら抜き取れますよ」


 そう言ってから、ルイさんの手を取って指輪を引き抜いてみせる。

 (おや、指輪の精霊がちょっと抵抗して来るぞ。まあ、抜けるけどね)


「このとおりです。どうです?」


 エミリーさんはホッとしているけど、ルイさんは何か微妙?


「ルイさん、どうかしました?」

「気怠さが戻ってきました。これが普通と思ってたんですが……」


 ほう、そこまで違うのか。これは指輪の精霊に気に入られたかな?


「ルイさんが良ければこの指輪に、そうでなければ他のものを考えますが?」


 ルイさん次第でいいかな。


「ノノ、その指輪、魔力の流れを整えるのには理由があるの?」

「綺麗に流れてない魔力は濁りが生じるらしく、おいしくないらしいです。何でも澱んだ魔力は劣化しているので、不味いらしいです。これ、元は魔力過多の子どもの治療具として作られたものらしいですよ」

「え、じゃあ、これって指輪に精霊を封じ込んでいるの?」

「本人は住んでると言ってました。母様によると古い書物に精霊を人工的に作り出して物に定着させたとの記載があるので、失伝した技術じゃないかと言ってましたね」


 エミリーさんの目が点になっている。まあ、分からなくもない。


「ノノん家が想定外過ぎて、言葉が出ないわ」


 私もそこは何とも言えない気持ちではあるけど、生まれたときからそれが日常なので、苦笑いしか出来ない。


「それで、ルイさん、この指輪で良いかな?」

「はい。それでお願いします。何か注意することとかありますか?」


 これで決まり。注意することとか……。


「ん~、注意すること、ですか。何だろう?」


 魔力を吸われること以外、特にないんだよねー。


「魔力を吸われることぐらいしか、無いかな。あとは指輪と相性も良いみたいだから、あなた自身が危険に会わなければ大丈夫だよ」


 そういう意味ではこれが一番危険かも。


「ノノ様、それってどういうことですか?」

「例えば、ルイさんの命が奪われるような事態が発生したときに、その指輪があなたを守ってはくれるんです。問題はそのあと何ですが、守るのに魔力を使うようで、使った魔力を補充しようとして、普段より多くの魔力を吸われるんですよ、それも一気に。致死量までは奪われませんが、人によっては、数日は起き上がれないぐらいは吸われ続けます。魔力が戻れば、元の吸う量に戻るので、それが注意点ですかね」


 まあ、死ぬよりはマシだと思うしかないけどね。


「何というか、死ぬよりはマシだけどって感じね」


 エミリーさんも同じことを思ったようだ。


「ルイさんの場合、前に出て戦うこともないし、余程のことがないと大丈夫だよ」

「ノノさんや、それは……」


 何故か、エミリーさんが苦笑いしながら私を見た。


誤字・脱字は見つけ次第、修正しています。

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