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第74話「弟子認定」

 談話室では、私の真向かいにエミリーさん、その左横にルイさんが座っている。


「どこから話したものかと思うけど、まず、ルイさんだけど、商隊で西方領が落ちたことを話した辺りから、この状態よ。故郷が魔王領になったと言われれば仕方が無いとも思うけどね」


 なるほど、ショックで言葉も出ないと言ったところかな。心の整理が付くまではこの状態なのかも知れない。


「それとタンドラ王国の情報なんだけど、商隊には届いて無かったのよ。それで、ルイさんから西方領が落ちたと聞いたボランさんとゴッザムさんが情報の開示を求めてきたのよ。うちとしては、これから行くところでもあるし、タンドラ王国に入ってしまえば、分かることだから、包み隠さず話すことになったわ。とは言っても、あなたに話した内容と同じことなんだけどね。あと、現在の依頼についても確認したんだけど、王国の王都が落ちたわけでもないし、実際のところ前線からはまだまだ離れているから、このまま継続。乗合馬車の方は、乗客の意向を優先して、タンドラ王国へ向かう人はこのまま、そうでない人は、ここで下車しても良いとなったわ」


 エミリーさんはそう言うが、降りる人なんか居るのかな。


「……降りる人、いるんですかね?」

「さぁ、居ないと思うわよ。何かしらの用事でタンドラ王国へ向かう人たちだもの。それに戦線は王都からはかなり離れているしね」


 やっぱり、居ないよねー。


「さて、本題に入るわよ。今、話したことの繰り返しになるけど、商隊にはノノに見せた地図を見せながら、うちが掴んでいる情報を説明したわ。この地図自体は普通に出回ってるから何の問題も無いし、同じ地図は商隊も持ってる。話としてはすぐに終わったのだけど、その後、ちょっとした打ち合わせもしたのだけど、ルイさんの扱いも話に上がったのよ。王都ポルフェについた後のことなんだけど、魔王領になった地域にルイさんの実家が含まれてるのが、やっぱり問題で、ダンドラ王国の教会では献金の見込めない状況だと扱いが酷くなるらしく、それにノノから提案のあった商隊預かりも商会の利益が見えないと難しいらしいわ」


 まあ、教会から預かるにしても、目に見える利益が必要ということかー。


「なるほどです。教会への献金は兎も角、商会の方は領地貴族でなくなると、その領地との取り引きがなくなりますし、その領地がないと教会側もルイさんを斡旋しにくいということですね」

「ノノ、そのとおりよ。浮世離れしてるかと思ってたけど、そこら辺は理解しているのね」


 エミリーさんが意外そうに言う。


「商隊側としては、ノノの提案を受け入れるつもりだったみたいだけど、この状況だと無理だと言ってたよ」

「……そうですね、商会のメリットがなくなってでは教会も訝しみますもんね」


 メリットもないのに「何で?」ってなるもんね。


「私の故郷の、故郷の領民達はどうなったんでしょうか……」


 青い顔をしたルイさんがようやく喋った。そっかー、領民が気になるのかー。


「それはここじゃ分からないわ。タンドラ王国に入れば、何かしら情報はあると思うけど、まあ、それも多分だけどね」


 エミリーさんが残念そうに言う。


「そ、そうですね……」

「ところでルイさん、言い方が悪く聞こえたらごめんだけど、あなた自身の身の振り方も考えないといけないわよ」


 ルイさんが、ハッとした顔をする。


「うちの領が落ちたことで教会での私の扱いが悪くなるからですね。残念ですが、タンドラ王国の教会は献金次第で扱いが変わりますから、仕方がないと思います」


 まあ、教会もお金がないと運営は出来ないからね。他所はタンドラ王国ほど露骨ではないけど。

 などと思い返している……。


「そこでノノの出番です。ルイさん、あなたの今の師匠はノノよね?」

「私はそう思っています……」


 エミリーさんの問いかけに、ルイさんが控えめに私を見ながらそう言い切った。


 ……何か話が進んでたわ。


 ふむ。教会でも弟子ですと言い切ってたし、ルイさん的にはそうなんだろうし、端から見てもそう見えるんだとは思う。まあ、あとは私がどう思ってるかではあるんよね。


「その師匠はファイネル教の司祭様。……うちに居るレミ絡みでオーガスチンから聞いたことがあるんだけど、ファイネル教の司祭から弟子と認められれば、どの教会に所属していようと、その司祭が所属している教会に移る。オーガスチンみたいに教会から出奔した場合も聞いたんだけど、その弟子共々出奔した場合は弟子も出奔扱いで、身分的には所属教会を持たないファイネル教の司祭と弟子になると。教会に残った場合は、弟子になる前の状態に戻ると言っていたわ。そのついでに師弟関係の終わらせ方も聞いたけど、師匠側から弟子では無くなったと告げるだけだと。レミのこともあるからその場合の弟子の扱いも確認したわけ。まあ、一信徒に戻るだけだと言われたけどね。それを踏まえて、ルイさんとノノに聞きたいのよ。あなた達がこれからどうするのかをね」


 タンドラ王国の西方領が落ちちゃったから、ルイさんの場合、教会での立ち位置がまずくなっちゃってるのよね。これまではタンドラ王国所属であることの方が良かった面があるし、それを踏まえて商隊に話を付けてたんだけど、それも反故になっちゃう。まあ、それもあって、エミリーさんには従軍司祭のまま、タンドラ王国へ向かうと伝えたんだけど、ルイさんがどう思っているかも聞いとかないとダメだったねー。


「ルイさん的には、私の弟子で良いのね?」


 教会でも言い切っていたから、良いはず。


「ノノ様さえ、問題が無ければですが、私はそのつもりです」


 ルイさんは私の目を見てはっきりと言い切った。


「それに今の私だと、魔王軍相手では戦力にはなれません。逆に魔力が多い分、魔王軍に取り込まれでもしたらと考えると……」


 その心配もあるか。このままタンドラ王国に戻っても恐らく前線送り。タンドラ王国の教会がちゃんと機能していれば、そんなことはないのだろうけど、魔力量の把握もして無さそうだから、取り込まれたときのことなんて、考えてもないだろう。

 ……問題があるとすれば、私の目的が勇者一行の魔法使い選抜試験だというところかな。


「ルイさんの考えは分かりました。ただちょっと私の方に問題があるのです。これはエミリーさんは知っているのですが、今回の旅の目的が「勇者一行の魔法使い選抜試験」なのです。以前も話しましたが、私はノーマッドの血を受け継ぎし魔導師。5賢者の一人、ウェヌス・ノーマッドの娘、ノイシュ・ノーマッドです。選抜試験で選ばれれば、司祭としてあなたを導くことが出来ません。それでも、私の弟子になりますか?」


 これまで、それっぽい話はしてきたけど、ちゃんと素性を明かした。


「はい。私はノノ様からこの白の魔導書をいただいたときから、ノノ様の弟子になったと思っています」


 あー、確かにあの時目が輝いていたね。……能力に見合ったものを渡しただけだったんだけどな。


「ルイさんがそれで良いなら、私は何も言わないけど、選抜試験が終われば、一度、ノーマッドの家に帰るから、あとのことはそこで決めましょう」


 問題は先送りにしても良いんじゃないかと思ったんだけどね。


「ノノ、甘いよ。一端戻ることは無理だと思った方が良いよ」


 黙って見ていたエミリーさんが、ニヤリと笑いながらそう言う。


「エミリーさん、その根拠は何です?」

「タンドラ王国王都に着く頃には、各国の魔物の大規模発生も落ち着いてると思う。所詮はオークが主体だからね。そうなると、魔王軍との戦闘が再開されてるハズだから、勇者を使った作戦が再開されると思う。あなたが思ってるほど余裕はないと考えてておいた方が良いと、私は思う」


 そう言いながら、エミリーさんが地図を机の上で開く。


「今ある情報を書き加えて検討してたんだけど、こことここが魔王軍の急所なんだけど、連合軍の動きはこの急所を避けてるのよね。それで軍の再編後はここから攻めるとみてるんだけど、恐らく、私たちが王都に着く頃には再編が終わってるんじゃないかと思うのよ。そうなると動きが慌ただしくなるし、その間で勇者一行の連携強化とかするんじゃないかと。そーなるとノノに暇は無いかな」


 エミリーさんがザックリ説明してくれた。選ばれればそうなるかもだけどねー


「エミリーさん、それって、私が選ばれた場合ですよね?」

「選ばれない自信があるように思うけど、甘いからね。確かに可能性はゼロではないけど、私はあなた以上に魔法を使える人を知らないわよ」


 エミリーさんが呆れたように言う。


「タンドラ王国の魔法協会には、それなりの魔法使いが居るんじゃないですか?」


 そう、タンドラ王国には魔法学校があるんだから、それなりの魔法使いはいると思うんだけどね。


「クズしかいない。いや、それでも確かに居るには居るかも」


 エミリーさんが下顎に手を添えて考えている。


「ルイさん、何か覚えてない?」


 エミリーさんが、ルイさんにも聞いている。


「私の兄たちの教師がいたと思います。他にも宮廷魔導師もいたと思いますが、どこまで魔法が使えるかは知らないです」


 ルイさんのお兄さん達に教えていた魔法使いは兎も角、宮廷魔導師ならそれなりなんじゃないの?


「宮廷魔導師か、どうなんだろうね。私がタンドラ王国の魔法協会に居た頃の宮廷魔導師は老人ばっかりで、勇者一行と行動を共に出来るとは思えない人たちしかいなかったわよ」


 なるほど。宮廷魔導師といえば、強そうだけど、その実、宮廷から動かないもんね。実働部隊は魔法士達だから、その中に強い人が居るかも知れない。


「王宮の魔法士には?」

「そこまでは分からないけど、まあ、ここで話しててもしょうがない。ただ、ノノが実家に戻れない場合なんだけど、ルイさんを「残月」預かりに出来ない?」


 あ、この人、そういえばルイさんを欲しがってたな。


「ルイさん次第だけど、うちの家へ戻るにはミンダスを通るので、ミンダスまではお願いすることになると思います」

「あ、そう言えば、ノノ、あなた変な方向から来たけど、あれってあの方角に家があるの?」


 正確には違うけど、まあ、フォルス王国を避けるとあそこに出る。


「本当はフォルス王国を通る方が安全なんですけど、あの国、エルフ以外は入れてくれないんですよ。私も一応通れるんですが、出来れば通りたくないので、迂回してるんです。ルイさんは人族ですから迂回しないと入れないと思うので、ミンダスを経由することになりますね」

「え、そこはウェヌス様の名前を出せば良いんじゃないの?」


 そーなんだけどねぇ……。


「そーなんですけどね、フォルス王国の門番が糞エルフなんで、この耳にイチャモン付けてくるんですよ。だから私は通らないことにしてるんです」


 あいつらホント、耳だけで判断してるからね。それにしても元々あの森全部がうちのもので、滅ぼされかけたフォルス王国のエルフに貸してるだけなんだってことは忘れてるんだろうね。


「賢者ウェヌス様が迷いの森にあるフォルス王国の、さらに奥に住んでるという噂は本当だったのね」

「その噂は聞いたことがあります。実際は分からないとなってますね」


 別に隠れてるわけでもないのだけどね。


「噂も何も元から隠してもないですよ。フォルス王国から奥に進むのには王族の許可がないと進めないことになってるので、その先が分からないだけで、反対側から迷いの森を抜けることが出来れば、私の家に来ることは出来ますよ」


 エミリーさんが腕を組んで何やら考え事をしている。


「ノノがミンダスの奥の森から出てきたということは、あの森は迷いの森まで続いているということなの?」


 ああ、そういうことか。


「ちょっと距離はありますが、それで間違いないです。とは言え、強い魔物もそれなりにいるので、お勧めはしませんが」


 エミリーさんが目を見張っている。


「それだとルイさんはそのルートをどうやってノノの実家へ行くのよ?」

「そこは道案内に1号、じゃなかった、ライズが来るように手配しますよ。あの子なら問題なく森を抜けて来れますからね。迷いの森はうちの家系には影響がないですから」


 家系というか、魔力なんだろうね。


「どうやって連絡をするのかは聞かないけど、ミンダスに戻るまではルイさんはうちで預かるということで良い?」

「それが一番良い方法でしょうね。ルイさん、それ良いよね」

「ちょっと待ってください。ノノ様、ノノ様のご実家に行く流れですが、それは何故なのです?」


 ん? ああ、そうか、そこの説明もしておく必要があるのか。


「それはね、うちはどこの教会にも所属してないの。それで修行というか、そういったことはうちの家でするしかないのです。私が見てあげられない分はうちの母様か、ライズが居るから。私が勇者一行の魔法使いに選ばれたときはだけどね」


 先のことは分からないけど、どのみち我が家に行くことになるんだけどね。


「私の弟子になるということは、うちに住み込みになるのよ」


 ルイさんもエミリーさんも吃驚しているが、私の出自をちょっとでも考えたら分かると思うんだけどね。

誤字・脱字は見つけ次第、修正しています。

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