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第5話「王都へ向けてレッツゴー、その前に?」

 未だに覚めぬ夢を見るかのごとく、永久の闇の中から出ることは叶わない、魔力が抜ける感じもあまりしないから、まだまだ此処に居るんだろうね……。



 ……勇者一行が来た日から数日経ったある日、私はいよいよタンドラ王国の王都ポルフェへ向かうこととなった。


 出発前日、私は母様からある物を頂くこととなった。


「ノイシュ、此度の旅には、これをお持ちなさい。もしもの時に役立つでしょう」


 そう言って、母様は光の加減によって青と紅に輝く不思議な金属で出来たお守りを渡してきた。

 ……青紅のお守りか。致死性の攻撃を受けた際に身代わりに壊れるという特殊なお守り。それほどに危険なのでしょうか。


「青紅のお守り、ですか。それほどに危険があると母様はお考えなのですか?」


「いずれ渡すつもりだったものです。これまでにも渡したことがあると思いますが、これは今までのものとは違い、魔力を補充することによって、何度でも使用可能な古代の秘術が付された我が家に伝わるオリジナルの青紅のお守りです」


 これまでも旅に出る際に何度か渡されてことがあったけど、オリジナルがあったのか。

 よく似たものはエルフ族にそれなりに伝わってるらしく、これまでの旅でも何度かお目に掛かったことがある。それらも青紅のお守り呼ばれていた。ただ、効果がエルフにしか効かないため、他の種族からはエルフのお守りとも呼ばれていたりするが。


 ……ん? ちょっと待って、オリジナルがここにあると言うことは、ひょっとすると?


「若い頃にオリジナルの再現を目指したのだけど、何故か出来る物は魔力の補充できない、何度か使うと壊れるまがい物ばかりだったのよ。それこそいろいろ試して見たのよ。でも出来る物は皆一緒。仕方が無いから、迷宮で手に入れたと偽って売り払ったり、お世話になった人たちに配ったわ」


「……何故迷宮なのです?」


「迷宮で見つかることにしておかないと、永遠とこれを作らされることになりかねないでしょう。それにこのオリジナルはご先祖様が迷宮で拾った物だしね」


 なるほど、元々は迷宮産か。迷宮なら何でもありって言うのはどうかとも思うけど、あれはそういったものと思うしかない場所だしね。


「それではエルフのみに有効なのは何故なんでしょうか?」


 私は今まで不思議に思っていたことを聞いてみた。作れるのであれば、その部分の書き換えることが可能なはず。


「あなたに渡していた物がエルフの血が入った者にのみ有効なだけよ。このオリジナルはこの部分に記名された者にのみに有効なのよ」


 母様はそう言って、お守り表面の右端に私の名前が書き込まれている部分を示した。


「ということは、このオリジナルであれば、この部分に名前さえ記入してあれば他種族でも効果があると言うことですか?」


 母様は黙って頷いた。


「では何故、こちらの複製のお守りは他種族にも有効なお守りにしなかったのですか?」


「……そのお守りは古代神聖文字で物凄く緻密に計算され刻み込まれているわ。私が複製を作るときも一言一句違わずに、それこそ一心不乱に刻み込んだのよ。でもね、出来上がった瞬間、七色の光を発して刻み込んだ文言が勝手に刻み換わるのよ。『エルフの血を受け継ぎし者のみに有効』と。ね、不思議でしょう。何枚作っても毎回同じ現象が起こるのよ。意地になって大量に作ったんだけど、どれ一つとして、オリジナルと同じ物は出来なかったわ」


 そう言って母様は物凄く疲れた様な笑みをしていた。

 ……一体何枚作ったのだろう。意地になってと言ってたし、あの表情からすると数百枚か千枚超えぐらい作ったのかも知れないわね。……怖っ。


「母様、それって……」


「ええ、分かってるわ。私が作ったから『エルフの血を受け継ぎし者』になるのだと思うわ。でもね、だとするとオリジナルは誰が作ったのよって話よ。……神が作ったとでも言うのかしら」


 もし、そうだとしたら、他種族の人が作った場合はどうなんだろう。


「他の種族の人が作ってみたことはないんですか?」


「他の賢者、大魔導師、高位の聖職者と、まあ、思いつく範囲で術式を公開して試して貰ったのだけど、古代神聖文字が扱えて相応の魔力がある者がそうそう居るわけでもなくてね。まあそれでも何とか出来たのもあったんだけど、結果は私と同じで種族限定。効率も悪いし、殆ど流通することもなく、作った本人が持ってるか、王族とかに献上したりした分ぐらいしか残ってないんじゃないかしらね」


 母様はため息をつきながらそう話してくれた。……エルフ族は結構持ってる人が居るんだけど、母様は一体、何枚作ったんだろうか。


「エルフ族の分は、私がその昔、お世話になった人たちに渡した分と売り払った分だと思うわ。旅するエルフのお守りとも言われてるみたいだけど、エルフ族自体あまり旅をしないから、配った数は少なくても、所持している可能性は高くなるのよね」


 そんな話をしながら、私は母様から貰った青紅のお守りを見つめていた。配った数が少ないわけがないとか思いつつ。


「ところでノイシュ。明日の準備は整っているの?」


…………

……


 ……青紅のお守りが効果無しということは、永久の闇自体は生命を脅かすものではないということが立証されたわけか!

 もっとも、身代わりになりようも無し、当たり前といえば当たり前ね。青紅のお守り自体が物理にのみ有効というわけでもないから、もしやとか思ったけどね。

 ……精神系攻撃には効かないのかなとか、今一瞬、真剣に考えてしまったけど、此処だと試しようがないね。



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