第20話「マジックポーションはマズい」
「あー、ごめん、もう魔力が残ってない」
……そうでしたね、エミリーさんはイフリート召喚で魔力をほぼ使い切ってますね。
「仕方が無いので、はい、これ飲んで頑張りますか!」
私はそう言って、マジックポーションを取りだした。
「ノノさん、何でもすぐ出てくるね。マジックポーションも作れたりする?」
カリンさんがそう聞いて来たので、軽く頷いておく。
「そりゃそうか。ヒールポーションと作り方の差はそんなにないもんね」
そう、混ぜる薬草がちょっと違うだけで、作り方はほぼ同じ。これも初級は教会で教えてくれるけど、恐らく私のやり方と違うことは想像出来る。
「多分、皆さんが思ってるのとはちょっと違いますよ、さぁ、そんなことよりエミリーさん、一気に飲み干しましょうか?」
エミリーさんはポーションを手に持って苦笑いしている。
「マジックポーションって、おいしくないのよね~……」
そう言いながら一気に飲み干した。凄い凄い。
「げぇ~、やっぱり不味い。ノノが作ったのならマシかと思ったけど、変わらず不味かったよ。やっぱり材料のせいなの?」
エミリーさんは苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「まあ、強い効果のものほど、特にマジックポーションは不味くなる傾向にありますね。ヒールポーションは飲む人も多い分、不味いと苦情も多くなりますから、まだマシな感じになってる気がしますね。それに引き換え、飲み手がほぼ魔法使いのマジックポーションは苦情も少ないですから仕方が無いことですよ。ちなみにこっちの私専用のはちょっとだけ、優しい味わいですよ。試してみます?」
そう言って、ちょっとだけ色の違うマジックポーションを出してみる。
「私はいいよ、これ飲んだとこだし。それにそれがあるんなら、何故これを……」
エミリーさんが恨めしそうにこっち見ているが気付かない振りをしておこう。
「ねぇ、ノノ、何で?」
ダメだ、無視したら詰め寄ってきた。
「エミリーさんに渡した方は回復速度に重きを置いているんですよ。こっちはそこまで早くないんですよ」
「本当に?」
「本当ですよ?」
「なぜ疑問形なのか、気になるけど、もう飲んじゃったから良いわ」
何とか納得して貰えたようです。
「話し合いは終わったみたいね、じゃあ、こっちは私が飲んでみるね」
エミリーさんが遠慮したので、カリンさんが飲んでみることになった。
「これなら普通に飲めると思う。というか、味だけなら普通のお茶っぽいから普通の飲み物としても飲めそう。……いつも作ってるのと何か違うの?」
カリンさんは普通のお茶と大差ないという。
まあ、確かに不味くは無いけど、おいしいというわけでもないんだよね。
「香草を入れてるんですよ。ちょっと手間が掛かるのと効果に差があるわけでもないので、無駄にお金が掛かるので自分用に作るとき以外は入れませんが」
「ああ、なるほどね。料理と同じように味を調えてるわけか」
出来ればおいしくしたいけど、味わって飲むようなものではないしね。
「そうなりますね。元々が味わって飲むものではないので、風味付け程度しかしないですけどね」
「でも、不味ければ不味いほど効果がありそうに思えるから不思議よね」
エミリーさんがそう言いながら、空になったマジックポーションの入っていた入れ物を私に返してきた。
「さぁ、それでは遅れた分を取り戻すべく、ヒールポーション作成をしましょう」
カリンさんが音頭を取る。
「でも、どれくらい作る予定なんです?」
お手伝いするのは良いけど、量の確認をしておかないと。作りすぎてもね。
「中級はノノさんが作った樽があるから暫く良いかなと思うので、初級のを夕方までできるだけ作って貰えるとありがたいかな。あと、出来たらうちの魔法使いに作り方を伝授して貰えると嬉しいんだけど、どう?」
なるほど、そう来たか。教えるのは何人居るんだろう?
「元々教えて欲しいと言われてますから良いですが、何人ぐらいですか?」
あまり多くても手が回らないからね。
「とりあえず、エミリーと、今、ポーションを作ってるのが二人だから三人かな」
さっきからチラチラこっちを見てる人達かな。魔法使いなら気になるよね。
それに三人ぐらいなら全然平気だね。
「そこの二人、こっち来て」
エミリーさんが二人を呼んだ。二人とも女の子だ。周りを見ると男は少ない。
「シンシアとジョシュアよ。二人も自己紹介して」
エミリーさんは二人に自己紹介を促している。
「シンシアと言います。得意なのは水魔法です」
「ジョシュアです、風魔法が得意だよ」
シンシアは大人しそうな子で、ジョシュアは活発そうな雰囲気が。
「初めまして、私の名前はノノです。ポーションを作るお手伝いと作り方の伝授に来ました。お二人とは作り方がちょっと違うので、最初は戸惑うかも知れませんが、効率は私のやり方の方が良いので覚えて損は無いと思うよ」
こうして、ポーション作りを伝授することになった。




