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第15話「魔導師?」

「ノノ、あなた魔導師なの?」


 話を聞いてたエミリーさんが私の方を見ながら聞いてきた。


「いえ、違いますよ。ポーション作りが得意なだけです」


 何をもって魔導師というかは決まりがあるわけではないし、本人が違うと思ってるので、違うはず、でも、何故か冷や汗が……。


「これって、中級のヒールポーションじゃない!」


 樽の中を確認していたカリンさんが、吃驚したように言う。


「え、何かおかしいですか?」


「えっ、どういうこと?」


 私とエミリーさんが同時に言う。


「中身が中級のヒールポーションなのよ。ありがたいけど、ノノさん、あなた一体何者なのよ。ポーションの作り方といい、ゴブリンの件といい、普通の巡礼者じゃないよね」


 カリンさんは額に指を当てて、何やら考え事をし出した。


「……行き先はタンドラ王国王都ポルフェ。何か引っかかるのよね、タンドラ王国王都ポルフェってことが。エミリー、何か思い出せない?」


「中級のヒールポーションに問題があるの?」


「エミリー、そっちじゃない。問題があるのはノノさんよ。ポルフェで何か思い出さないかを聞いてるのよ」


 おかしいなポーションを作りに来ただけなのに、雲行きが怪しくなって来ましたよ?

 帰っても良いかな。良いよね?


「エミリーさん、一応、ポーションも作ったので帰っても良いです?」


 私がエミリーさんにそう言った瞬間。


「あ、思い出した! 勇者一行の魔法使い選抜試験だ!」


 どうやら、カリンさんが思い出したようです。あー、ちょっと遅かったか、これは何らかの質問が来るだろうね。


「カリン、何それ?」


 どうやらエミリーさんは知らないようだ。


「エミリーは仕事で出てたから知らないか。魔王討伐の勇者一行が賢者ウェヌスを招きに行ったんだけど、断られたんだって。それでタンドラ王国王都で選抜試験をすることになったとやらで、各国宛てにお触れが出たのよ。うちの団長のとこにも領主から話しが来たけど、うちの団の筆頭魔法使いのといえば、脳筋でしょう。他には適任者はいないから断ってたのを思い出したのよ」


「そうなんだー。……あと、脳筋って何よ。ちょっと攻撃側に寄ってるだけよ!」


 ……脳筋なのは自覚があるんだね、エミリーさん。


「ノノさん、ホントのところはどうなの?」


 やっぱり、こっちに話しが来たよ。さてと。


「ここへはポーションを作りに来ました。二日後のポルフェに向かう商隊の護衛のこともエミリーさんから聞いてたのもあって、実はその商隊には私も同行することになってるんです。それでポーションはちょっと材料を奮発したんです。選抜試験については、エミリーさんと一緒にこの街に来たので知りません。これでいいですか?」


 一気に喋った。ポーション作りの手伝いをしに来ただけなのに。

 余計なことはするもんじゃないね、普通の作り方で手伝えば良かったと後悔だよ。


「カーリーンー、アンタはそれでいいかもけど、ノノに失礼じゃない?」


 良かった、エミリーさんはこういう面では普通の常識人っぽいや。


「あ、ごめん」


「カリン、私にじゃなくて、ノノに謝るんだよ」


「ノノさん、ごめんなさい。気を悪くしたよね。今話したけど、王都から派遣された魔導師の方と同じ作り方だったんで、吃驚して……」


 カリンさんがこっち向いて申し訳なそうに謝ってきた。


「ノノ、ごめんね。せっかく来て貰ったのに気分を悪くするようなことになっちゃって」


 エミリーさんにまで謝られてしまった。なんか、こっちも申し訳なくなってきたよ。


「いえ、大丈夫ですよ。だだ、貰えるお金に色を付けて下さいね」


 まあ、落としどころとしてはお互い気まずくならない程度の迷惑料を貰うぐらいで納めれば良いかな。護衛の時も一緒に行動することになるだろうし。


「ノノ、それで良いの?」


 私はエミリーさんに頷く。


「エミリー、中級のヒールポーションをこの量だから、それなりには出せると思うわよ」


 カリンさんとエミリーさんが相談を始めたので、私は辺りを見渡した。室内の他の人たちはこっちに興味がないようでそれぞれの作業に没頭している。

 ……エミリーさんが来るといつも賑やかなのかも知れないなと思ったのは秘密だ。


 暫くして、エミリーさんから代金について説明を受けた。

 市場に出回ってる量も少ないので、市場価格の三割増しで買い取りとなった。

 市場価格を知らないというと、今の市場価格を教えてくれた。


「ノノ、報酬は帰りに渡すね。それとポーションの作り方を教えて貰う件だけど」


 お、忘れてなかったか。


「はい、覚えてますよ」


「……今やった方法を教えて貰う感じなのかな?」


「いえ、普通のですよ」


 エミリーさんが何故かホッとしている。えーなんで?


「エミリーさん、なんかホッとしてません?」


「そ、そんなことはないわよ」


「ノノさん、エミリーはね、攻撃魔法特化なのよ。ほら、攻撃魔法ってババーンと目に見えるじゃない。そういう魔法は興味があるのかすぐに覚えるのよ。それに引き換え治癒系とか妨害系、防御系は効果が目に見えにくいからか、あまり得意じゃないのよね」


「得意じゃないだけで、使えないわけじゃないんだからね」


 カリンさんに、エミリーさんは何故か言い訳をしている。まあ、基本的な魔法は使えるんだろうね。


「あ、でも、今朝のゴブリンには魔法を使ってませんでしたよね」


 そう、あのときは荷馬車の上で指示出しと防御系魔法を使ってた。攻撃魔法はどうしたんだろう。


「あー、あのときは味方が近かったでしょう。攻撃魔法だと巻き込んじゃいそうだったし、あと、一応、リーダーだったから状況を判断して、指示とか忙しかったのよ」


 言い訳にしか聞こえないけど、筋は通ってるかな。


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