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買い取り屋にあった呪いのアイテム


   ◇ ◇ ◇


「どうもこの大箱が、中身が入っているようですね。未処分物と荷札があります」


 ドアを開き木窓を押し開け、風と光を入れて買い取り屋を家探しした結果、ウィンティアがひとつの箱についた木札を読んでそういった。


 もちろんハルトにはそれが読めない。


「ふーん。とりあえず、罠は…、ない。鍵…も開いてる。開けるぞ」

「ハルトさん泥棒もしてました?

 中も乱雑に放り込んである様子ですね。でもテラの葉でメモ書きが付いているようですよ」


 ウィンティアは中に入ったものを手に取り、その付いたメモを読もうとした。


「あ! 呪いのアイテムならそう不用意に触るんじゃないっ」

「そうでした!  しかもメモ書きが虫に食われて何が書いてあったのか読めないですよ」

 言いながら懐にしまおうとする。


「そこに置きなさい」

「あれ? 戻そうとしたのに。

 持って行っちゃだめですかね?」

 呪われたようだ。


「手に持ったままでいいから、俺に見えるようにしてくれ」

 差し出されると、魔道具鑑定の魔術を発動する。宙に魔法陣が浮かび、詠唱音を発して回転した。


「うむ。呪いのアイテムだ」

「うひゃあっ。どどどうしましょう」

 ウィンティアは慌てている。

「おちつけ。幸いすぐ死ぬような呪いじゃないぞ」

「ほんとですか。どんなのです?」

「てっぺん禿になって胸毛が伸びて、口と足がクサくなるだけだ」

「全人類的国家非常事態宣言ではありませんか! 騎士団の出撃すべき事件ですよ!」

「すぐにどうこうはない。たまに敏感なのが気づく程度だ」

「ううっ… そうですね。じゃあこのままでいいか…」


 呪いほどきの費用にでも頭がいったか、急激に少女は消沈した。


「将来的にはよくないから、外すように努力しよう。ダンジョンの奥に潜れば、解除の魔道具を落とす魔物がいると言ってたよな。今からがんばって狩ってくるわ」

「どうしたんです急に? 惚れました? プロポーズ?」

「惚れてねーよ地味顔少女。寝言行ってると父さん似と呼ぶぞ」

「お父さんは大好きです! でもそれはヒドイと思います!」

「叩くんじゃないっ。今他の魔道具を鑑定しているところなんだから」


 なおウィンティアは同年代女子を集めれば上位22%に入る顔立ちをしている。胸だってちょっとある。


 ハルトはどこからか竹のトングを見つけてきて、素手で触らぬように魔道具を並べ調べていった。


「調べたうちでは、この五つはレベル封じの呪いが掛かるやつだな」

「ふーん。意外とありましたね。こっちの残りはなんて出たんです?」

「いろいろだ。

 敵味方のわからなくなる狂戦士の剣。

 随意に瞼が開かなくなる兜。

 怒ると雷を出せる体質になるネックレス、ただし本人も感電。

 花粉症になる遠眼鏡。

 腰痛ベルト。腰痛になる。

 いやそんなことはいいんだ。

 触るんじゃないぞ。戻して閉めておこう。

 えーっとだな、俺は今からまた潜ってくるから、ウィンティアは宿に戻ってくれ。そのアイテムは手放せないだろうが、あまり人に見せないほうがいい。これらいずれも同時に複数の人間に呪いを掛けられるような機能がある。

 打ち壊して呪いが解ける可能性もゼロじゃないが、よくわからない。

 かえって拗れるかもしれない。

 万一もある。お父上だけには伝えとけ」

 少しハルトの声に動揺が出たようだ。


「わかりました。

 …ほんとに今から行くんですか? もう夕刻ですよ?」

 心配そうにウィンティアの声が湿った。

「なに、問題はない。俺は今ここに来た目的が達成できて浮かれてるんだ。腕試しがしたくて仕方がないのだワハハ」

「 …そういう心で冒険はしないほうがいいと思いますよ。思い直したほうが」

「いや、行ってくる。遅くなるかもしれんが、冷めても構わんから俺の分は残しておいてくれ」


 ハルトはレベル封じの魔道具のうちから小楯を選び、左腕に装備する。


 そして呪われた。


 呪いの仕込まれたアイテムでも、本来の用途には使えるので、防具としては使える。


 残りはトングで挟んで、もと在った箱に戻す。


(まるで実感はないな。あ、でもウィンティアのレベルの高さがわからなくなったような)


 


「では行ってくる」

「お気をつけて。いってらっしゃいませ」


 空き家を出ると気づかれぬよう徐々に足を速めていった。

 少女には大した呪いではないかのように思わせたが真実は違う。

 ウィンティアが手にしたのは眠るたびに高熱を発する病型だ。

 ハルトの経験はまだまだ浅い。呪いの効果の程度が分からぬ。

 子供の体が今夜を乗り越えられるのかわからなかった。



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