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漆黒令嬢は聖女に寝顔を見られる

 眠い。

 ぼんやりと意識が覚醒してきて初めに思ったことがそれだった。あったかくてまだ寝ていたい。すごく安心する。

 体の周りが、ぽかぽかしてあったかい。熱いわけでもなくて安心する温かさで。

 眠気にあらがうこともできずに、また眠ろうとした。頭の位置が悪くて、ちょうどいい位置にするために頭を動かした。枕が柔らかくて顔を両側から包まれてる感じで心地よくてすぐに眠りについた。


 目が覚めた。一度目が覚めた気もしたけどあまり覚えてない。今日もまた馬車に乗って貴族院に向かうことを思い出しベットから起きようとした。

 でも、なにかに体が押さえつけられていて動かなかった。それどころかぼやけていたと思っていた視界は正常だったみたいで真っ暗だった。


 私は昨日、貴族院に向かう道中にあるアクトという町にルーナと止まることになって。病人だからとルーナと一緒の部屋になって。

 あたりも暗くなってきたから寝ようとしたら、ルーナが一緒に寝ようとしてきて。どうにかルーナをベットに入ってこないように説得して窓に近いベットに寝たはず。


 なのにどうして私は動けなくて、視界は黒いんだろう。少し息苦しいような、どもいい匂いもする気がするし。

 どうにか動けないかと、足や腕を動かそうとするも動かない。足は何かが絡まってるみたいで動かないし、腕も押さえつけられてるみたいに動かない。手だけは動かせるけど、それだけ。横に寝かされているみたいだけど私はどうなっているんだろう。

 声を出そうかとも思ったけど状況が分からなくて辞めた。もしかして護衛に私のことが見つかって、私は縛られてるとも思ったけど。そんなことされたらさすがに気づくはずだし。

 この状況をどうにかしようと、もがいてみても何も変わらず。私はある結論に達した。

 これは夢なんだと。動けないのは夢で金縛りにでもあっているから。いいに香りがするのも、温かいのも夢だから。夢だということで納得した私は、寝ることにした。だってなんだか安心してまた眠くなってきたから。


「ノッテ朝よ」

「ルーナお早う」


 目が覚めたら目の前にはルーナがいて、動けないこともなかった。やっぱりあれは夢だったらしい。

 あれ、どうしてルーナは目の前にいるの。まだ布団から起き上がってもいないのに目の前にルーナがいるのはおかしい。何より顔が近くてまるで隣に寝てるみたいに。

 私はルーナから離れるように起きて布団をめくった。案の定、ルーナは私の隣に寝ていた。


「ルーナ、私の布団に入らないでって約束したのに!」


 寝る時も油断ならないことを私は学んだ。そして明日は別の部屋にしてもらおうと心に決めた。


「ノッテよく見てよ。ここは私の布団よ、布団に入ってきたのはノッテの方」

「え?」


 言われてよく見ると、寝ていたベットは部屋の扉に近いベットで。私の寝ていた窓に近いベットではなかった。私が寝ていたのはルーナのベットだった。どうして? なんで? と言葉が私の頭の中を駆け巡る。私は確かに自分のベットで寝たはず。なのにどうしてルーナのベットに寝ているんだろう。おかしい。


「でも、窓際のベットに寝たはずなのに」

「ノッテが夜に私ベットに入ってきたのよ。寂しいって」

「嘘っ」


 そんなまさか。そんなことがあるわけない。と思いたかったけどその記憶がない以上否定もできなくて。でもそんな子供みたいなことを私がするはずがない。いつも一人で寝ていた私にとって一人で寝ることは当たり前のはずだし。ルーナと一緒になったからって、寂しくてルーナのベットに入りに行くなんて。

 と思って、私は思ったことがあった。ルーナに初めてキスされたときに、心の奥に何かがはまったことを。何がはまったのかわからないけど、それがルーナなのはなんとなくわかって。あの時私は確かに幸せで満たされていた。もし無意識にルーナのことを求めて夜な夜なルーナのベットに入ったのだとしたら。

 ありえないことじゃないって、思った。それほどまでに、あの時ルーナに触れられて私は満たされていた。

 だんだん私がルーナのベットに入ってきたことが現実味を帯びてきて、その恥ずかしさに顔を手で覆った。

 あんなにルーナにベットに入らないでって、自分で言ったのに。私からベットに入っていくなんて笑われちゃう。


「ルーナの寝顔、可愛かったよ。ついキスしちゃった」

「えぇ……」


 すごくあっさりと聞き捨てならない言葉が聞こえてきた。ルーナが寝ている私にキスをした。私の知らないところで、キス。起きてるときにしてほしかった、という考えがよぎって頭を振った。

 これじゃまるで、私がルーナとキスしたいみたいなことになっちゃう。そんなんことはない、別にルーナにキスされたいわけじゃない……

 そう思ったけど、ルーナのキスは嫌じゃないことを私は知ってるし。キスされたときの幸せで満たされる感覚も味わっているわけで。

 これ以上は、考えてはいけないと私は考えるのをやめた。


「おはようのキスする?」

「う……」


 反射的に「うん」と言いそうになった。


「顔洗ってくる」


 とにかくこの場から逃げるために、何より顔を冷やすために私は逃げた。


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