漆黒令嬢は今まで貰った幸せを返す
シリアスです。でも最後は救いになってるはず。
ルーナが帰ってこなくなった。
チェロが王族だってわかってあれやこれやとあったあの日から。もう二週間たった。忙しいと言ってたルーナは、その日のうちには帰ってこなくて。数日すれば帰ってくるかなって待ってたけど帰ってこなかった。誰もいない部屋に一人、正確にはシェイが居るけど。チェロも家に帰っちゃったし。
チェロが帰ってひとりぼっちの部屋が、こんなに寂しくなるなんて。思わなかった。入学して、それからルーナに会って。教会で助けられて、キスして。
それからずっと一緒だった。ずっとずっと一緒にいた、一緒に寝た、一緒に食べた、一緒に笑った。
ルーナがいないだけでこんなにも、つまらなくて退屈でさみしいなんて。昔は一人でもさみしくなかったのに、ルーナと一緒にいるようになってから、さみしがり屋になっちゃったよ。
まだ、帰ってこないのかな。さみしい、さみしいよルーナ。ルーナが民に行ってたノッテが足りないって言葉、今ならわかる、ルーナが足りないよ。
膝を抱えてうずくまってるとはやがノックされた。もう夜なのに誰が渡河そんなことは気にせずに部屋の扉を開けた。だってそこにはルーナがいるはずだから。
「ルーナっ!」
「すみませんノッテ様。ミシェルでございます」
「ミシェルさん。ルーナは」
扉を開けたらそこにいたのはミシェルさんだった。ルーナじゃなかったけど、でもいつもルーナと遺書にいるミシェルさんがいる鵜ならルーナもいるよね。
「ルーナ様なのですが、今はお部屋におられます。ただ……ノッテ様夜遅くではありますがお部屋まで来ていただけますでしょうか」
「いく、行きます」
でも今、ミシェルさんはなにを言いよどんだんだろう。それになんだか胸騒ぎがする、なんでだろう嫌な予感がする。
「ルー……ナ?」
部屋の中にルーナはいた。大好きなルーナがいた。いたんだけど、なんだか様子が変だった。椅子に座ってるんだけど、私が入ってきたのに動かなくて。私がルーナにすごく会いたかったみたいに、ルーナも私に会いたかったと思うのに。それなのに動かない。私が声をかけても立ち上がらない。すごく疲れてて、椅子に座ったまま寝ちゃってるのかとも思ったけど、起きてるし。
「ミシェルさん、ルーナどうしちゃったんですか」
「ノッテ様は、新しい聖女が誕生したことをご存じでしょうか」
「新しい聖女、ですか。知りません」
どこかでそんな話を……
そうだパラディー様とシェイが話してた。白い精霊様が現れたら聖女が変わるかもしれないって。
「そうでしたか。精霊様を連れた少女が現れ、ルーナ様は聖女ではなくなりました。その代わり高位司祭となられたルーナ様ですが、教皇様とお話しされた夜からおかしくなられました。私以外の誰とも話をすることがなくなったのです。それどころか食事もとられなくなってしまい。お願いします、ノッテ様。私ではどうしようもないのです。どうかっ」
「ルーナっ!」
ルーナに近寄って手を握った。だって、その状況がいつかの私みたいだったから。
「ルーナ……そう。そう、呼んでくれるのね」
「当り前じゃない。だってルーナだもん。大好きなルーナだから、ルーナの名前を呼ぶんだよ」
「そう、そうね。私はルーナよ。もう聖女じゃない。聖女じゃない私に価値はない。意味はない」
ルーナどうしちゃったの。なに言ってるかわからないよ。意味ないなんてそんなことないのになんでそんなこと言うの。
「意味ないなんてことはないよ。ルーナは聖女じゃなくてもいいんだよ。だって私が好きなのはルーナだから。聖女様が好きなんじゃない」
「聖女じゃない私は必要とされない。私の価値はこの白い髪と目だけ。ただのルーナに価値なんてないのよ。だから聖女じゃない私は必要じゃない。誰も聖女じゃない私を見ようとはしない」
「違う」
「違わない。聖女じゃなければ誰も私のことを見ない」
「違うっ」
「違わない。みんなみんな、この白い髪と目が大事だった。髪が白ければ、目が白ければ、誰でもよかった。私じゃなくてもよかった。髪と目しか見られなかった。誰も私のことなんて見てなかった。必要とされたのは、目と髪だった」
「そんなことないっ!!」
「もの心ついたころからずっと、ずっと。必要とされてたのは白い髪と目だけ」
「違う、違うよ……」
違うって言ってるのに、聞いてくれない。私の言葉はルーナに届いてない。どうしたらいいの。言葉じゃ伝わらない。伝わらないから。
考えた。どうやって私の気持ちを伝えられたらいいのか。言葉じゃ伝わらない。ならキスすればいいよね。いつもルーナにキスされてた。キスされて幸せになってた。だから今度は私がキスしてルーナを幸せで満たせばいいんだ。これなら私にもできる
「今までたくさんルーナからもらった幸せ。今度は私がルーナにあげる番」
ちゃんと見たルーナの目には光がなくて。白いはずの目が黒ずんで見えた。今ルーナの目に光を戻してあげるから。
「んっ」
何度もルーナからしてもらったキス。何度か私からしたキス。今までしてきた覚えてないキスもあるかもしれないけど。このキスはどんなキスより、幸せの味がした。
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もう少しで終わります。
小話的に言えば、ルーナは昔から教会で聖女候補として扱われ、ルーナという一人の少女としてはみられることがほとんどありませんでした。家族も熱心な教徒でしたから家でもです。だから猫を被ることで、自分を守りました。これが聖女モードですね。素はノッテといるときのですよ。
そして、いつしか聖女だけが自分の価値だと思うようになります。まあ軽く洗脳的な感じなんですけど。
それで心の支え的な、正気でいられた要因の聖女がなくなって。字が喪失して今に至ると。そんな感じです。
これだけだとだいぶシリアスですね。すみません




