漆黒令嬢は精霊のことを知る
次からルーナのパートに入るので終盤です。そしてシリアスが始まります次から。
シェイのことばれてるっ!!
「なに、咎めようというわけではない。精霊祭の三日目に見かけたものでの」
あの時、シェイのこと見てたんだ。
「何やら懐かしい気配もしたんじゃよ。黒いのおるんじゃろ、はようでてこい」
観念したのか呼ばれたからなのか、シェイが私の影からぬぅって出てきた。
「黒いのじゃない、チェロにシェイという名前をもらった。青いの」
「我じゃッてパラディーという名をつけてもったんじゃ」
なんかよくわからないけど、二人ともにらみ合ってるよ。どうしよう、私には二人の間に入る勇気も度胸もないよ。誰か何とかしてー!!
「ときにシェイ、昔のことは覚えておるのか?」
「昔のことなんて知らない。そもそも昔て何のこと」
「昔は昔なんじゃがな。さすがに白いのに封印されて記憶を失たっか。いや、白いのなら記憶を失うように仕組みそうじゃな。仕方ないのう、ほれ」
「うぐっ」
「え?」
パラディー様が何かしたのかシェイが苦しみだして。体も形を保てなくなってグニャグニャした黒い塊になっちゃった。うごめいててなんかちょっと怖い。
「パ、パラディー様。シェイは大丈夫なんですか」
「ん? 大丈夫じゃ心配いらん。記憶を植え付けた影響じゃろ」
「記憶を植え付けたっていったい」
「ノッテは知っておいたほうが良いじゃろうな。選ばれたものじゃし」
「選ばれた?」
「元に戻るまで時間もかかるじゃろうし。簡単に言うとじゃな祝福が最も強い人の元には、我らのような精霊が現れる場合がある。我は建国したときの王妃の元に現れたんじゃ。そしてこやつはシェイという名前ではなかったが、その時もおったんじゃ。ここまではよいか?」
「えっとはい」
つまり、色の祝福が強い人のところには精霊が現れるってことでいいのかな。たぶん。
「その時には白い精霊もおったんじゃが、こ奴がやらかしての。シェイとずっといたいがために封印したんじゃ。自分ごとじゃぞ。我以外にも精霊がおったんじゃが、気づいた時にはどうしようもなくての。幸いにも白も黒も両方っ封印されて、世界に影響はなかったんじゃが」
えっと一緒にいたいからって、シェイを白の精霊様が自分ごとふういんしちゃったの?
白の精霊様ってなんか何だろう。すごく変なのかな、危ない人ってそういうことするって聞くけど。あれだよね、あなたを殺して私も死ぬって本の中で見たことがあるけど。白い精霊様もそういう人、人? 精霊なのかな。
「精霊がいないとどうなるんですか」
「簡単じゃ、祝福が弱くなって世界のバランスが変わる。我がいないとそうじゃの、災害が多くなったり雨が降らなくなったりじゃな。白いのとシェイは封印じゃから影響も少なくて済んだんじゃ。まあ、能力が使えなくなったりはしたんじゃが」
雨が降らないってすごく大変!! パラディー様がいてよかった。
でも黒の祝福がなかったのってそれが理由だったんだ。でも、ルーナは祝福使えてたよね。白の精霊様も封印されてたなら。祝福使えなくなっててもおかしくないのに。
「じゃあなぜ、ルーナは祝福が使えるんですか?」
「白いのが封印したからの、同じ祝福は封印されなかったんじゃろう」
「そうなんですか」
「メディ……」
「シェイっ大丈夫?」
「大丈夫、パラディーありがとう」
元に戻ったシェイはなんか変わってない気もするし変わったような気もするしで。不思議な感じだった。
「記憶が戻ったようじゃの」
「面倒ごとも思い出したけど。メディの封印が解けてる。私の封印が解けると一緒に封印が解けるようになってたから。場所も今の名前もわからないけど」
「封印が解けただけじろ、さほど面倒でもあるまい。大方聖女のルーナの元に現れるじゃろ」
「私の封印が解けたのは数か月前、すでにルーナの前に現れててもおかしくない。つまり他の誰かの場所に現れてるってこと。聖女の条件は二つ、白の祝福が強いことと精霊がいること。パラディーわかる? そのうち聖女が変わる」
「ぬぅ、それはちと面倒じゃの」
「白いのも来る。すごく面倒」
聖女が変わることより、もっと面倒くさいって顔してシェイがどんよりしてる。ルーナが聖女じゃなくなるほうが問題度と思うんだけど。
「ルーナが聖女じゃなくなるんですか?」
「精霊を伴い白の祝福も強いとなるとのう、ルーナは祝福が強いから聖女になったんじゃ。そこに精霊も祝福も併せ持つものが現れれば、教皇といえど反対はできまい」
「じゃあルーナはどうなるんですか」
「聖女ではなくなるが高位司祭の地位になるんじゃないかのう。聖女として今までなしてきたことは結果として残っておるからのう」
「よかった」
「ま、あれじゃ。辺鄙な場所でひっそりとしておるやもしれんからのう。新しい聖女が名乗り出ん可能性もある。白いのは来そうじゃがな」
「面倒」
「とりあえず、チェロのほうが終わるまでは帰れんじゃろうし、話でもするか?」
「じゃあチェロの愛らしさについて」
「おお、聞いてみたいのう。チェロは孫のようなものじゃからのう」
また私がついてけない話になりそう。チェロの愛らしさって、チェロはかわいいと思うんだけど。
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ちなみに精霊は名前を貰って初めて姿をとることができます。それまでは思念的な感じです。ノッテの場合は特殊。
そして、教皇の座を狙ったとある司祭は辺鄙な村に送られ復権を狙っているのでありました。
その村には白い髪の白い目の、そして数カ月前から現れたよくらからない変な白いのがいたのでした。




