漆黒令嬢の二度目のデートは食べ歩き
目標は年内完結ということで。頑張ります。そして誤字報告ありがとうございました。
次の日、ルーナと約束してた精霊祭三日目のデートの日。
一日目はパラディー様が王都でお顔を見せる日で、大通には屋台が立ち並んでる。二日目が貴族が楽しむ日なら、三日目は王都に住む平民が楽しむ日になる。ちなみに一日目は地方の平民が楽しむ日になっている。
そんな背景もあってか、今日はあまり貴族が歩くということは無い。あくまでも趣旨が平民のためだから。
だから今日は貴族って分からないように変装しないといけない。テーマは裕福な商人の娘。それなりに質のいい布の服を着てお出かけする。
「こんな感じかな」
「昨日大人しくしてたんだから、屋台の食べ物が食べたい」
「それはいいけど、シェイはそのままじゃ無理でしょ?」
シェイは私と同じ見た目をしてるけど、影で体を作ってるから肌の色が黒で昼間だと人には見えない。
「心配ない。影に不可能はない」
シェイの肌の部分が色付いてきて、暗い肌色になっていった。
「どうなってるの」
「影は黒だけじゃない。肌の上にできた影は暗い肌色になる。だからその再現も出来る」
「すごいそれならバレないね」
「ふふん」
シェイが胸を張って自慢してくる。胸を張ってる自分を見てるみたいでなんか、虚しくなってくる。凹凸が……
「気にしない気にしない。ちゃんと帽子被った?」
「当然」
「じゃあ行こう」
帽子をかぶって二人で歩いてると姉妹に見えたりするのかな。なんてそんなことを考えながらルーナと約束してる場所に歩いてく。肉を焼く匂いにタレの匂い、果実や魚介の匂いもする。
食べ物の匂いだけでお腹がすいてくるし、急がなきゃ。
先に約束の場所に着いたのは私みたいで周りにルーナの姿は見えない。
「ルーナいないみたい」
「早く食べたいのに。何してるの」
シェイは来る途中の屋台の匂いですっかりお腹がすいちゃったみたいで。ルーナが来てないことにちょっと怒ってるみたい。
「人が沢山いて道が混んでるかもしれないから待と?」
「串焼きが」
「大丈夫だよ。すぐ無くならないから」
「はぁ」
今度は落ち込んじゃった。そもそもお金払うの私なんだけどな。
「ノッテー!」
「ルーナ!」
ルーナが両手を広げて走ってきたから、ギュッて抱きしめた。
「待たせてごめんなさい。会いたかったわ、ノッテ」
「私達もさっき来た所だから。私も会いたかったよ」
ムスッとしたシェイとミシェルさんが顔をお見合せてやれやれと言った感じにため息をついてるのが横目に見えた。
「早速屋台を見て回りましょう。楽しみだわ!」
「そんなにはしゃがなくても」
「だって食べ歩きするの初めてなんだもの」
「そうなの?」
「はしたないからって、ダメだったのよ」
爵位が高いからって、いい事ばかりじゃ無いんだね。周りの目を気にしないといけないから。したいことがあっても出来ないなんて。
「ノッテあれ食べたい」
シェイが指さしたのは来る途中に見てた串焼き屋さん。今も人が並んでて、美味しそうな匂いもしてくる。
「じゃあ一緒に行こうか」
「私も行くわ」
「じゃあ三人で。ミシェルさんは」
「私は大丈夫です」
串焼きと、それから汁物も買ったからどこかに座って食べることにした。
「新鮮だわ、手に持って食べるのは」
「パンも手に持って食べるけど、これはまた別だからね」
シェイは両手に肉の串焼きを持って美味しそうに食べてる。ミシェルさんもルーナに買ってもらったパンにお肉を挟んだのを食べてる。
「次は甘いものを食べようかしら」
「食べすぎると歩けなくなるから程々にね」
それにしても、シェイが食べたのってどうなってるのか本当に謎。
「甘いのなら果実水が売ってたけど」
「それもいいけど、飲み物じゃなくて食べ物がいいわね」
「じゃあ、もう一回見に行こ」
もう一度、屋台のある通りに戻って甘いものを売ってるお店を探すことにした。
「そういえば、そろそろパラディー様が通りを歩く時間ね」
「歩くの?」
「ええ、パレード用の馬車は使わないのよ。民の近くにって歩いてここを通ることになってるはずよ」
そして、甘いものを探してる最中に、パラディー様が通りにおいでになった。
そばに従者のような人をしたがえて、王城の方から歩いてくる。時折立ち止まっては、屋台の食べ物を従者に買わせて食べる。
歩いては止まって歩いては止まって。私たちが食べた串焼きも立ち止まって食べてた。
そして、食べながら私たちのいる方を見てきた。もちろん私たちの周りは、パラディー様が見てくださったと大騒ぎ。
でも、パラディー様は食べながらある一点を見つめていた。また串焼きを買ってきて食べてたシェイのことを。
シェイもパラディー様のことを見てて、パラディ様もシェイも串焼きを食べ終わた。パラディ様は歩き始めてシェイは次に食べるものを探し始めて。
見つめあってた二人の間に何あったのかな。
「あの串焼きやっぱり美味しいのね」
「え。あ、うんそうみたいだね。甘いの探そっか」
「そうね、美味しいのがあるといいけど。こういうのが食べ歩きの楽しいところなのね」
ルーナと手を繋いで色んな屋台を見て歩いて。とっても楽しかった。
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3章第1部終了です。次からは2部に入りますよー。
3章は第4部までありますからね




