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漆黒令嬢は晩餐会に参加する

仕事で大怪我しかけて、二日ほど様子を見ておりました。大事は無いので書き続けてゆきます。

 一夜明けて、さらに夜。

 まだ晩餐会まで時間はあるけれど準備は終わっているような時間帯。そんな時間帯に私はまだ準備が終わっていなかった。

 ルーナに貰った黒のドレスを着ることができてなかった。大きさがとかではなく、単純に1人で着ることが出来なくて。

 昨日はミシェルさんが手伝ってくれたけれど、今此処には私とシェイしかいない。シェイはドレスの着せ方なんて分からないし。どうすればいいか悩んでいた。

 男性用の礼服はその、一人でも着られるからチェロは着いてきていないし。でもルーナから貰ったドレスは着たいし。どうすれば……


「ノッテ、チェロいれば着れる?」

「チェロがいれば。うん、着れると思う」

「じゃあ待ってて」

「待っててって……」


 もうシェイは居なくなって居て。でも、シェイはどうするつもりなんだろう。王都とチェロの居る貴族院は一日かかる距離なのに。シェイなら直ぐに行けるんだろうけど、チェロまでは来れないし。


「チェロまでは連れてきた」

「えっ!」


 後ろからシェイの声が聞こえてきて。振り返るとシェイとチェロが居た。居たんだけど。チェロも黒い影になってた。

「え、え? チェロが影になって」

「チェロが動けば影も動く。チェロの所にノッテの影がある。チェロがノッテの影にドレス着せれば、影がノッテにドレス着せる」

「それはつまり、チェロの陰がドレスを着せてくれるってことでいいの?」

「そういうこと。チェロがそのまま立っててって言ってる」

「わかった」


 チェロの影が、何時ものように服をぬがせてくれる。影だけど、動きはチェロそのもので安心する。

 チェロのおかげで、何とかドレスを着ることが出来て。髪も編み込んだりしてくれた。部屋の鏡を見ると、いつもの私じゃない私がいた。女の子だった私が、一人の女性になっていた。それに見覚えのない髪飾りもある。


「この髪飾りは何処から?」

「チェロの持ち物を影で作った」


 黒い宝石が着いたバレッタ。まるで本物みたいに見える影の装飾品。


「チェロにありがとうって伝えてちょうだい」

「勿体ないお言葉ですって」

「それじゃあ、晩餐会に行きましょう。シェイは影の中で大人しくしていてね」

「わかった」


 晩餐会の時間、王宮の大広間。

 名のある貴族は名を呼ばれて大扉から入場する。爵位の低い私は他の扉から入場する。既に多くの貴族たちが中で談笑をしていた。

 私が中に入ると同時に大扉の前にいる兵士が、名のある貴族の入場を告げた。


「トリムエル・ガナード様、トリムエル・ミネルバ様、トリムエル・ルーナ様、並びにトリムエルミシェル様入場です」


 ルーナとミシェルさん。あと多分ルーナの両親。だれもが大扉に注目していて私には気づいてなかった。あまり目立たないように大広間の隅の方に移動する。テラスに近い人のあまりいない壁際。ここからじゃルーナの姿は見えないけれど。


 ルーナの後にも、何回もの名前が呼ばれた。そして……


「マリアペレート・セイブル王、クエイン王妃、グラストン第一王子、ベル第二王子、マリ王女。ご入場」


 王家の方々が入場されてこられた。王、王妃。第一王子、第二王子。第一王女。この大広間にいる貴族の全てが頭を垂れる。王家の証たる輝かんばかりの青の髪と透き通った瞳。髪もしくは瞳、そのどちらかに証を宿した王家の皆々様。

 大空と海を思わせるその色こそが、王に連なるちであることを色濃く示している。そして、精霊祭の主役たる御方……


「精霊パラディー様、ご入場」


 精霊パラディ様。昨日は大都市を周りそのお姿を民にみせたと聞いています。私はまだそのお姿を知りませんが、見ることができる。


「皆の者、頭を上げよ。今宵は晩餐会への参加、そして日頃国に尽くしてくれていること深く感謝している。今日はその感謝としてこの晩餐会を開いた、心ゆくまで楽しんで欲しい」


 頭を上げ、王の言葉に耳を澄ます。そのお姿と声を聞くのは、爵位を頂いて以来で久しい。左右に立つ王妃そして王子王女は、初めてそのご尊顔を拝見した。

 そして何より、精霊パラディー様。青く透き通った空と海をその身に宿していた。そう、体そのものが水の女性だった。まるでシェイのように……



良ければブクマとかポイントとかポチッと気分でお願いします。


感想欲しいです。


だいたい10万時目処に終わる予定でして。1話二千と考えると。だいたい二十話ほど。これを含め四つ程予定している今後のもの、だいたい5話づつになるのかなと。


約四万字ほど、残り恐らく二十話程ではありますが。お付き合いのほど宜しくお願い申し上げて候う

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